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小説作家の冒険者生活  作者: 才練人
〜魔術師は何故か俺を選んだ〜 第2章 冒険者として生き続ける道

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第15話 知られた秘密

「報酬金、合計二千八百デラルになります。

 お疲れ様でした」


 受付嬢から渡されたのは銀貨二枚と、

 大きい銅貨一枚、

 小さい銅貨三枚だった。

 そして、思った通り銀貨は千デラルのようだった。


(サイレン、二十体倒したもんな……

 百かける二十で二千)

「……練人は八百でいいな」

「頼むわ」


 サイレンはすんなりと銀貨を受け取る。

 ただ、初期費用と同等の額だから、

 しばらく宿生活も問題はない。


「……Hランクでも結構稼げるもんやな」


 稼げるから、

 冒険者になろうと思う人がいてもおかしくない。


「……稼げるからこそ……

 危険な魔獣と戦う機会が多いと言うことだ」

「……確かにな」


 サイレンが強過ぎて勘違いしがちだが、

 普通はカエルスライムの群れと遭遇したらヤバいことだろう。

 二十四体の群れを相手に、

 一人だと二十四体全てと戦う羽目になる。

 二人でも普通は十二体、

 四人なら六体。

 人数が多ければ安定して倒せるけど、

 儲けは少なくなる。

 かといって強欲に走って一人だけで戦えば命はない。

 下手すれば、

 何もなせずにただ喰われて魔獣の栄養になるだけ。


「……練人、怖くなったか?」

「まさか……

 リスクに怯えて生きとったら、

 いつまで経っても儲けはあらへんし、

 願いも叶わんわ」


 幸せに生きたいのなら、

 多少のリスクを背負わないといけない。

 生きる方法が限られているのなら、

 尚更リスクに怯えてられない。

 俺が叶えたい夢はそもそもハイリスクだ。

 戦うのが怖い程度で退いていたら、

 叶うなど不可能だ。


「……なるほど」

「サイレンはデラルの使い道どないすんねん?」

「……千デラルは宿代などの生活費に回す。

 残りの千デラルは……

 パーティーの共有資金に、

 回してもいいかも知れないな」

「パーティーって……

 まだ二人やで?」

「……だが、いずれ増える。

 増えた時に資金が足らずに、

 困る事態は回避しておきたい」

「へぇ、しっかりしとるわ」

「……練人はどうする?」

「俺?

 せやな……

 紙などを買う資金と宿代に回すわ。

 で、二百デラルくらいパーティーの共有資金に回す」


 ペンやインクを買うのも必要だと思っていたが、

 それはライトのおかげで買わなくても良くなった。

 ペンやインクの分のお金を紙など他のものに使える。


「……私はただ使い道がないだけで、

 練人も無理に付き合う必要はないぞ?」

「ええねん。

 自分のためだけに使うくらいやったら、

 仲間のためにと思って貯めた方が俺としてもええし」

「……そうか」


 サイレンと会話をしながら俺達はギルドを出る。

 既に日は落ちかけており、

 空が暗くなっていた。


「……なあ、サイレン。

 シャイニング・バーニングを、

 手慣れているように思ったんやけど、

 結構練習したん?」

「ああ……

 シャイニング・バーニングに関しては、

 制御は完璧だ。

 同じ魔法でも種類分けできるくらいにはな」

「せやろうな。

 遠距離で撃つもんもあれば、

 超至近距離もあったし、

 ブンブンとハンマー投げみたいに回って、

 カエルスライムにぶつけるやつもあったわ」


 今までのが同じシャイニング・バーニングなのは驚きだが、

 応用に気付いたサイレンは本当に凄い。


「……まだまだ他にもある。

 いずれ、見せよう」

「おおきに。

 属性攻撃の時は属性の呼び方変わるん?

 光属性の原初魔法は、

 シャインやが、

 シャイニング・バーニングって変わっとったし」

「……その通りだ」

「他の属性も同じなん?」

「……同じだ。

 火属性の《ファイア》は《フレイム》に、

 水属性の《ウォーター》は《フロッド》に、

 闇属性の《ダーク》は《ダークネス》に、

 光属性の《シャイン》は《シャイニング》に、

 風属性の《ウィンド》は《ブラスト》に、

 地属性の《ストーン》は《グランド》に変化する」

「へぇ、教えてくれてありがとうな」


 やはり、

 聞かないまま読ませなくてよかった。

 ちょっと修正が必要になった。


「……何をふんふんと頷いている」

「ん?

 ちょいとな」

「……練人は隠し事が好きだな。

 私も練人に文句は言えないくらいに、

 隠し事をしているがな」

「そりゃ、

 人に言えんことくらい普通にあるやろ。

 俺の場合は隠した方がええんやが」

「……小説を書いているからか?

 確かに隠し事は多いだろうな」

「せやせや……

 え?」


 何かサラッとサイレンが、

 俺の秘密を言い当てたように思えたのは、

 気のせいだろうか。

「……やはり、小説を書こうとしているのか」

「ちょ、ちょい待て!

 なんでわかったん!?」

「……簡単な推理だ。

 練人は何故か原初魔法を、

 ようやく使えるようになった時に、

 ライトのやり方を必死にお願いした。

 今も紙を追加で買う宣言もした。

 つまり、練人は何かを書きたいと思い続けた」

「せやけど、

 物を書くんやったら他にもいっぱいあるやろ?」

「……いっぱいあると言う割に中々発表しない。

 何かの予定を考えていたのなら、

 私に相談した方がためになる。

 設計図というわけでもなかった。

 書いているものを隠したいと思うのは、

 読まれるのが恥ずかしい、

 あるいは自信がないものに限られる。

 ……そして、お前は色々知りたがろうとしている。

 全部、練人にはまだ早いと言わざるを得ないものばかり、

 グラットンベア、

 属性攻撃の名称変更、

 練人の隠しているものと合わせるのなら、

 練人は小説を書いていることが想像できる」


 何かスラスラと言っているけど、

 普段から観察して推測していたのだろう。

 探偵か何かか。

「……正解や。

 探偵か、何かかいな」


 本当は最後まで隠そうと思っていたが、

 あっさりとバレてしまった。

 違うと言っても、

 書いているものを読んでみようかと言われたら、

 俺は降参するしかない。

「……やはりか。

 ……何の小説だ?」


 読書好きって前に言っていたから、

 気になってはいるだろうな。


「……今は二つを書こうと思っとる」

「……二つ」

「……一つ目は明日読ませてやるわ」

「……楽しみだな。

 ……二つ目は?」

「……俺達の今までのギルドでの、

 活躍などを書くつもり」

「……ふっ」

「ん?」

「……少し楽しみだなと思えてな」

「……嫌いじゃないんやわ」


 多くの有名な作家も同じやり方をしていた。

 作家自体が体験し、

 体験を記録、

 体験した記録を小説にするのは。


「……なら、私も少しは動きを意識するべきかな?」

「サイレンは既に意識しなくても凄いやんか」

「……褒め言葉として受け取っておく」


 ただ、小説家を目指しているのがバレて、

 少しくらいは肩の荷は降りた気がする。


「まあ、先に言っておくわ」

「……ん?」

「まず、登場人物は限定させてもらうわ。

 過剰な人数は登場人物の印象を薄くするし、

 読者も誰が誰なのかわからんようになる。

 せやから、

 同じキャラが登場してもモブとして扱うこともある」

「……確かに、

 キャラが多すぎる小説はごちゃごちゃしているし、

 読みにくいな」

「もう一つは他の冒険者や、

 これから仲間になる人には、

 二つ目の小説については内緒にして欲しい」

「……一応、何故?」

「書かれると思われて行動を意識し、

 致命傷になるかも知れん。

 人は見られとると意識すると、

 集中できひん人もおるし、

 単純に危険なんやわ」

「……なるほど。

 確かに普段通りの動きができなくなるのは危険だな。

 わかった。

 二つ目に関しては秘密にしよう」

「……おおきに」

「……楽しみだ。

 練人がどんな話を書いてくれるか」

「ほんなら楽しみにしといてくれ」

「ああ……

 仲間が書いてくれるのなら、

 楽しみに待っているさ。

 練人の小説の最初の読者だしな」

「せやな。

 あっ、偶にサイレンに質問するけどええか?」

「……構わない。

 私としても、

 自分の知っていることを教えるのは自分のためにもなる」


 確かに魔法の時もそうだが、

 サイレンは教えることに慣れているように思えた。


「人に教えた経験あるん?」

「……ああ。

 仲間に教えることもあると思ってな。

 魔法に苦戦する同級生に魔法を教えたこともある」

「……サイレンは優しいわ」

「……そうか」


 そして、サイレンは鼻歌混じりに宿に帰ろうとした。

 俺の書いた小説を楽しみにしているのだろう。


「……よっしゃ!」


 俺も仲間の期待に応え続けるだけだ。

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