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小説作家の冒険者生活  作者: 才練人
〜魔術師は何故か俺を選んだ〜 第2章 冒険者として生き続ける道

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16/50

第16話 初めての読者

「……どや?」


 今、サイレンはペラペラと、

 真剣に、

 そして、丁寧に俺が書いた小説を読んでくれている。


「……よく書けていて面白いな」

「お、おおっ」

「……このグラットンベアの描写ーー

 食欲と残虐性のバランスが、

 生々しく書かれている。

 魔獣図鑑を借りて読んだとはいえ、

 熟練の冒険者も納得するだろう」

「よ、良かったわ」

「……戦闘の描写も具体的だし、

 キャラクターの性格も立っている。

 特にメリッサとティーナの対比もいい。

 ……ただ、気になったことがある」

「ん?」

「……この小説の語り手ーー

 アルベルト達の視点だけで進んでいるな。

 それ自体は構成としては間違っていないが……

 読者はこの四人だけの世界しか知らない。

 グラットンベアや、

 食われた男の事情が一切わからない。

 それは少しもったいないなと思った」

「ああ、それか。

 別にアルベルト達は主役ではあらへんし、

 まだ導入や。

 サイレンが読んどる小説はむしろ、

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 何せ今書いている小説はファンタジー小説だけど、

 同時にミステリーでもある。

 言うなれば、

 ()()()()()()()()()()()

 サイレンの眉がぴくりと動いた。


「……ほぅ」


 サイレンの中で興味深いものとして認めたらしい。


「……つまり、被害男性は、

 ()()()()()()()()()()

 ……物語の根幹か……

 読者に()()()()()を突きつける仕掛けか」

「せや、せや。

 被害男性が誰なんか、

 何故、グラットンベアに食い殺されなあかんのか……

 読者に考えさせるんや」

「……いいな、練人のアイディア」


 サイレンの声に僅かな熱が混じっていた。

 腕を組み感心したように何度も頷く。


「……普通の冒険譚なら、

 敵を倒して仲間が死んで終わりだ。

 だが、この話はーー

 読み終えた後に被害男性のことが残る。

 ……続きあるのか?」

「まだ書き始めたばっかやからな。

 すぐに書けるが、

 今はサイレンが読んどるもんだけやねん」

「……そうか。

 ……練人の小説、最後まで書くつもりか?」

「え?

 十六話構想やからな。

 続くかわからん」

「……十六話か……

 趣味で書いているものか?」

「……本気や」

「……なら、練人の話は完成させろ。

 途中でやめるな」

「ああ、今書いとる物語は終わりまで練ってあるから」

「……ならばいい。

 練人、アルベルト達のようなパーティーが理想の仲間なのか?」

「いや、あいつらはあくまで導入で、

 グラットンベアを倒せても不思議やないキャラなだけや」

 ところどころ重要な役割を担ってはいるけどな。

「……なるほど。

 ……そろそろご飯にしよう。

 腹が減っては戦はできない。

 ……練人の小説を読んで私は得した気分だ」

「良かったわ。

 まあ、俺に隠し事は結構あると思うけど、

 小説やから勘弁してや。

 小説の内容を話してもうたらおもろないやろ」

「……そうだな」


 そして、俺達は宿の食堂に向かった。

 食堂の席に座った俺達は、

 メニューを確認して注文をした。


「いただきます」

「……いただきます」


 注文した料理が出てきたため、

 俺達は食事を取る。


 俺もサイレンも食事中に喋るタイプではないため、

 食べ終えるまで互いに黙々と食べていた。


「ご馳走さん」

「……ご馳走様。

 どうする?」

「うーん、すぐに次の話を書きたいんやけどな」

「……そうか。

 なら、先に入っておこう」

「おう」


 俺だけ部屋に戻って行った。


「……はぁ。

 せやけど、音楽なしやと気分がな~」


 小説にあった音楽は持ってきた筈なのに、

 今はなくしている。


「ハァ〜……

 せめて、オルゴールが代わりになってくれたらな~」


 青いオルゴールに触れた。

 すると、オルゴールが光り始めた。


「な、何や!?」


 いきなりのことで驚いたが、

 オルゴールから音が鳴り始めた。


「……ま、まさか!

 今流れとる曲は!?」


 オルゴールから聞き慣れた歌が流れ始めた。

 その曲は謎に関する歌。


「……まさか、オルゴールの中に、

 今まで集めた音楽が入っとるんか!?

 四百四十八曲が!?」


 推測通りじゃないと、

 流れる理由にはならない。

 ならば話は変わる。


「……い、今や!」


 俺は急いで座り、紙を出す。


「《ライト》!」


 ライトを使って文字を書き出す。

 音楽が鳴ると気分が乗る。

 書きたいものに合っているのなら尚更だ。


「今の勢いのまま!」


 次の話は頭の中に入っとる。

 合っている音楽も流れている。

 他の音楽もあるだろう。

 なら、止まる理由はない。


「書いとる話で……

 伏線を入れて……!

 二話目完成!」


 二話目を完成し、机の上に置く。

 オルゴールは次の曲を鳴り始める。


「次や、次!」


 勢いに乗ったまま、

 俺は次の話を書き始める。


「……話は長いけど!」


 けど、今書いている話も大事な話になる。

 何せ、読者に本格的な謎を提出するからだ。

 主人公はまだ出てこないが、

 今のタイミングで出す方が不自然だ。


「できるだけ被害者の情報をカットし、

 なおかつ同情を誘うようにして!」


 被害男性に対する同情は必ず響いてくる。

 【小説作家の冒険者生活】には詳しく書かない。

 詳しく書くくらいなら、

 直接読んで欲しいからだ。


「【カナイチ・ホームズの好奇心ー冒険者ギルドの小さな名探偵ー】

 題名は【熊に喰われた男】!

 十六話と短い話かも知れんが構わん!」


 有名な江戸川乱歩の最初の小説も意外と短かった。

 他の作家も有名な話は長いが、

 短い話もたくさん書いている。


「大事なんは書き続けること、

 そして提出し続けることや!」


 冒険者の依頼もやるから、

 書ける時間は短くなるだろうが、

 時間を引き換えに俺は体験を得る。

 等価交換としては破格だろう。

 何だったら他の冒険者に取材をしたいくらいだ。

 今の俺のテンションは上がっている。


「三話目終わったで!」


 テンションが上がることは、

 素晴らしいことかな。

 あっさりと書き終えた。


「……もう三話目か」

「……え?

 ……あっ」


 書くのに夢中になった。

 小説作家だもの、しょうがない。

 サイレンに見られてしまった。


「……順調のようだな。

 ……今の流れている曲はなんだ?

 ……歌のようだが」

「も、持ってきた音楽や」


 オルゴールは次の曲を流れ始めた。


「……いい音だな」


 サイレンは興味深そうに、

 今流れている曲を聞く。


「……音楽が好きなのか?」

「……好きやな」

「……さよか」


 何か気恥ずかしくなってきた。


「……もう一度聞くことはできるか?」

「え?

 ちょ、ちょいと待って」


 俺も初めてオルゴールから、

 曲が流れ始めることを知った。

 でも、リピート再生ならできるはず。


「……リピート」


 呟く。

 曲が鳴り終えたが、

 すぐに同じ曲が流れ始める。


「おおっ」


 多分、解除と呟くだけで終わるだろう。


「……続きの話を読ませてくれ」

「お、おう。

 やったら俺は風呂に入っておくわ」

「ああ、練人が入っている間に読んでおく」

「ほんじゃあな」


 そして、俺は急いで部屋を出た。


「……驚いたわ。

 まさか、オルゴールから曲が流れるとはな」


 思ってもみなかったから驚いた。

 だが、嬉しいの気持ちの方が強い。

 だって、俺が持ってきた曲は、

 推理小説に使える音楽だけではない。

 今の生活を書くのにも使える曲も、

 たくさん入っている。


「……曲がないから頭を抱えて、

 必死に脳内再生しなくて良くなる」


 他にも小説の案があるが、

 曲があるかないかで、

 テンションはだいぶ違ってくる。


「……ほんで、オルゴールも動くんやったら、

 もしかすれば銀の箱もーー」


 今までオルゴールは鳴ることはなかった。

 少なくとも登録した日に触っても鳴ることはなかった。

 何で急に使えるようになったのか、

 俺にもよくわからない。

 だが、使えるのなら使わないともったいない。


「よし!

 銀の箱を調べるんは後や。

 明日から忙しくなるで!」


 何せ、テンションが上がる方法を得たから、

 勢いのまま少しでも書き進まないといけない。


「何が忙しくなるんだ?」

「わっ!

 か、カールイか。

 びっくりさせんなよ」

「何、言ってんだ?

 勝手に驚いただけだろ?」

「……風呂か?」

「ああ。

 そうだ、

 練人も一緒に入ろうぜ」

「せやな。

 そういう時間も悪くないわ」

「よし、行こうぜ!」


 俺にとっては冒険者の知り合いが増える方が、

 大事な気がするしな。

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