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第45話「君はカイの弱さだ」

――バァン!!!


「カイッ!?」


細くて白い煙が上がる。


ミオは反射で目を閉ざし、震えながらカイを呼ぶ。


アルノルドがカイに銃弾を放っていた。


「! ミオ!?」


恐怖に耐えられなくなり、ジュリアから拳銃を奪い取ると、制止を無視して走り出した。


潮風に乗ると、ミオの足はどんどん速くなる。


銃弾を受けた太ももから染み出した血が、砂浜さえも赤く固めていく。


苦痛に歪むカイを見て、アルノルドが舌なめずりをした。



「その力を王が欲しています」


「お前らにオレを制御できると思うか?」


「この縄を見て同じことが問えますか?」


アルノルドの腰に下がった“黄金の縄”を見て、カイは目を鋭くして一笑した。


一方的な支配に、ミオは悔しくなって握ったこともない拳銃を手にアルノルドに向けた。



「やめて! じゃないと撃つんだから!」


「おや、ずいぶん流暢にしゃべるように……」


――バンッ!!




アルノルドの美しい顔の横を銃弾が通過する。


ピッと真っ直ぐに亀裂が入り、頬で鳴くように血が滴った。


ミオはひどく興奮した様子でふたたびアルノルドに銃口を向ける。



「脅しじゃないからっ……べーっだ!」


「……銃の扱いも知らぬ小娘が」


「あっ――!?」


とっさに引き金を引いたが、弾は出なかった。


アルノルドに手首を掴まれ、銃を手放してしまう。


「君はカイの弱さだ」


「そんなことっ……」



――ドンッ! パァン!!


攻撃を受けたのは、カイの両サイドを抑えていた軍兵だった。


狙撃されてうめきながら砂浜に倒れ込む。


森の木々に隠れてリーノが息をつき、鉄砲を下ろした。



「助かった、リーノ」


にやりと口角を上げ、カイはアルノルドに流れる動きで回し蹴りを食らわせる。


だがアルノルドは軍を率いる実力者。


やられてばかりではないと、剣を拾ってカイの二の腕を斬りつけた。


岩肌のような色をした鱗模様の腕が露わになる。


「そう簡単に逃がすと思いますか?」


高速で切っ先がカイに襲いかかり、カイは腕をかばいながら砂を蹴って避けていく。



「うっ!?」


しかしこの場はカイだけの戦場ではない。


背後から激しい剣のぶつかる音の後がして、うめき声とともに止んだ。


非現実的な戦闘にミオが腰を抜かしていると、後ろでは顔面蒼白のリーノが攻撃のタイミングを計っている。


風が血の匂いを運んできて、吐き気がした。


(カイもリーノも怪我してる。他のみんなもボロボロ……)


命がけの争いは血の匂いが混ざり、思考を鈍らせる。


強さを誇るエルダでさえ傷だらけだ。


ドクは怪我を負いながらも常に隙を狙っており、腰に隠し持つ短剣に触れていた。


見覚えのある短刀に背筋が震える。


――キアーラがミオに渡そうとした短刀だ。




(あの短刀って……。ううん、それよりアルノルドさんを何とかしなきゃ!)


カイとアルノルドは切っ先を向け合ったまま、睨み合う。


ミオは震える手を伸ばし、アルノルドの軍服の裾を掴む。


汚物を見るような目でアルノルドがミオを見下ろした。



「おねがい……。もうやめて」


「ミオ、やめろ!」


カイが止めにかかるも、ミオは懇願をやめなかった。


「戦いたくない。争いなんてやだよ」


「甘ったれてますね」


「うあッ!?」


容赦なくアルノルドがミオの腹を蹴り飛ばす。


あまりの衝撃に腹を抑え、小さく丸まった。


痛みと血の匂いに、ミオは生理的に大粒の涙をこぼしてしまう。


それを直視したカイが鋭い瞳孔をしてアルノルドに牙をむいた。



「ミオに手を出すんじゃねぇ!」


「カイ……?」


森がざわついて、波が止まる。


晴れていた空に雲がかかり、世界が暗さに侵食されていく。


カイの腕が服を突き破り、固い鱗で覆われた身体がむき出しになった。

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