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第39話「エルフの花が咲く洞窟」

翌日、エルフの花の場所へダフネが案内してくれた。


ミオたちを連れて森の奥へ進み出す。


険しい道に慣れないミオの足はダフネを追うだけで精一杯だ。


田舎暮らしだったとは言え、整備された道路を歩いて生きてきた身。


自然と共存するこの世界で生きていくためには、もう少し足腰を鍛えなくてはと脳内で奮い起こした。


「ダフネ。どこまで行くんだ?」


エルフの花が咲く場所へ近寄ってもいいのは、エルフか代償覚悟で花を求める当事者のみ。


今回、花を必要としているのはミオであり、その縁が繋がるカイが同行した。


「花、地中に咲いてる」


「地中に?」


うなずいてダフネは前方を指す。


空に届きそうな岩壁があり、人が入れるほどの穴が開いている。


どうやらその穴をくぐって先へ進むらしい。


洞窟の中から風が吹き、ミオの耳を冷気がかすめていった。


気味の悪い空気にミオは背筋を震わせ、立ち止まる。


(なに、ここ……)


落ち着こうと腕をさすり、ミオは唾を飲み込んで中を覗き込む。


「ずいぶんと空気が冷たいみたいだが」


「自然が生み出した守り」


カイの疑問に答えると、ダフネが大きな目で見透かすようにミオを見た。


「中、寒い。暗いからランタンいる」


カイが荷物をおろし、中から外套とランタンを取りだす。


中に入るために必要なのだと判断し、ミオもまたしっかりと装備を整えた。



「行こう」



先にカイが中に入り、振り返ってミオに手を差しのべてくれた。


どこからくるのかわからない恐れに、ミオはカイの存在が支えとなってくれる喜びをかみしめた。



(進む。私、言葉がほしい!)


足元を確認しながらデコボコした道を進む。


いや、大地そのものであり道とも呼べないだろう。


多少は歩きやすいようにと、ダフネがロープを引いてくれるがそれも心もとない。


例えるならば鍾乳洞だろうか。


肌寒さと不安定さでミオは何度もくしゃみをした。



(一人じゃ無理だった。ランタンがないと先が見えない)


不安はそれだけではない。


カイの支えがあるのに段々と恐怖が強くなっていった。


やけに呼吸が乱れ、寒いのに背中を大量の汗が伝っていた。



肌がゾワゾワして、風が触れるたびに敏感に泣きそうになる。


そのたびにカイが足を止め、ミオの様子を伺ってくれたが微笑み返す余裕はなかった。



「これは氷柱か? こんなの他の大陸でしか見たことがない」


カイがランタンを上にかざし、洞窟の全貌を観察する。



「昔、ここは海だった」


「海?」


「たくさん、水たまりがある」


洞窟の内部は湿っぽく、肌が震え上がる。


光も差さないような場所に、エルフの花などが咲いているのだろうかと疑念を抱いた。



――バサバサバサッ!!!


「キャッ!?」


「ミオ!?」

 


不安感を追い立てるように、突然羽音がミオを脅かすように横切った。



とっさに耳をふさいでその場にしゃがみこむ。


涙目にランタンに照らされたコウモリを見て、過剰に唾を飲み込んだ。


鍾乳洞の奥からは水が滴る音が響く。


斜めになった壁は板状に薄く、まるで布が幾重にも重なっている光景が続いた。


神秘的な絶景が広がっているのだろうが、ミオにそれを眺める余裕はない。


すっかり暗闇に怯えていた。



(暗いの、こわい。やだな……。暗いと誰も……)


「大丈夫。オレがついてるから」



ミオの不安をカイがこまめに上書きしてくれる。



カイの手がなければミオは逃げ出していたかもしれない。



恐怖をぐっと堪え、身を固くしたまま進むことを貫いた。



(なんで……こんなにキモチワルイのかなぁ?)


胃がキリキリと痛んで、吐いてしまいそうだ。


頭が割れそうなくらい痛くて、視界が涙に揺れる。


ダフネがどんどん遠くなり、ミオは今にも足が止まってしまいそうだった。



「ダフネ。少し休もう。ミオが疲れている」


カイの言葉にダフネが振り返り、首を傾げながらうなずく。


適当な平たい岩場に腰かけると、ダフネが何度も瞬きをしてミオを凝視した。



「ごめんなさい。早かった?」


ミオの目的のためにダフネを付き合わせていると、罪悪感にのまれて首を横に振る。


「だいぶ早かった。オレは夜目が効くから割と大丈夫だが、ミオはそうじゃない」


「そっか。わかった。次はゆっくり進むね」


膝を抱え、地面に落ちる丸っこい石を指で転がす。


白くて艶々したそれはまるでダフネの心みたいだ。



「人魚は繊細。だから人を助ける魔法なのかも」


「禁じられた魔法はいったい……」


「泡が魔法になった」


「泡?」


「くわしく知らない。長老、口を滑らせた。……内緒」


「そっか。ありがとう、ダフネ」


カイのお礼を聞いてダフネはニコッと微笑む。


どことなくリーノに似ていると、ミオは乱れそうな心の中に小さな癒しを知る。



髪も瞳も同じ色。


透き通るような肌の白さもダフネが原点なのだと知り、心が軽くなった。


気さくでハツラツとしたラウロはレンツの笑った顔とよく似ている。


血のつながりは案外関係ないのかもしれないと引っ掛かりが取れた。



――ドクン、ドクン……。


休憩を終え、奥深くまで進んでいく。


まさに暗闇に隠れた秘境だろう。


――ズキン、ズキン……と、進めば進むほどにミオの頭痛は酷くなった。


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