表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/57

第37話「嫉妬。罪悪感。子ども」

「お頭……!」


「レンツを疑うな」


「……お頭になにがわかる」


「わからない。が、レンツの気持ちは知っている」


カイはリーノの前に立つと、唐突に袖をめくって腕をさらす。


ランタンの灯りでもわかるくらい、カイの腕は青黒く染まっていた。


まるで岩肌のようだ。


触れれば人の肌を簡単に切りつけてしまう。


どこに触れても鋭いばかりの腕だ。


「レンツはオレが海獣だと知っても受け入れてくれた。何も変わらねぇって」


「別に、俺は……」


「ドワーフの森に行くと決まった時、リーノがすぐに名乗りをあげてレンツは考えてたよ。もっと早く母親に会わせるべきだったかと。……決めるのはラウロとリーノだからと、レンツは船に残った。母親のもとにいたいならそうするだろうって」


「だからそれがムカつくんだよ!!」


カイが伝えるレンツの想いを、リーノは素直に受け取ることができない。


カイの腕をなぎ払うと、リーノの指先から血が垂れだした。


興奮してカイを睨むリーノに、ミオはあわてて止血しようと手を伸ばすが、カイが制止する。


右往左往するしかない出来事にカイを見ると、その瞳がいつもと違うことに気づいた。


(カイ……瞳孔が変。これじゃあ本当に獣……)


「さっさと言えばよかったんだよ! 自分は本当の父親じゃないって! 母親は生きてるんだって! ちくしょう、腫れ物扱いしやがって! 別に血が繋がってなくても俺は!!」



リーノの叫びは胸を引き裂くほどに痛かった。


時々、学校で親のことを語る生徒が似たような表情をしていた。


ミオはその痛みを味わうことはなかったが、疎外感という意味では気持ちが似ているかもしれない。


共感と呼ぶにはおこがましい気持ちに息を潜め、リーノを見つめた。



「ラウロはなんで平気なんだよ……」


ラウロの名前が出てくる。


おそらくリーノはラウロへのコンプレックスでいっぱいだ。


エルフの母親と対面しても、ラウロはあっさりとそれを受け入れて、自分だけはモヤモヤを抱えたまま。


まわりに当たり散らすように苛立ちを募らせた。


「自分がエルフじゃないかっていうのは気づいていた。傷の治りが早いから」


そう言ってリーノは手を前に出し、指先を見せてくる。


あれほど血が流れていたのに、今は傷口が塞がってかさぶたになっていた。


頬の腫れもすっかり引いている。


デイジーイエローの瞳にはいっぱいの憂いが溜まっていた。


「でもラウロは違った。めちゃくちゃ繊細で、すぐに風邪を引いちまう」


「レンツがよく言ってた。それでリーノにさみしい思いをさせたとも」


幼いころはレンツがラウロに付きっきりだった。


リーノは手のかからないよう、本を読んだりするうちに寡黙になった。


「ダフネになぜ捨てたのか聞いた。……純粋なエルフじゃないから育てられなかったって」


リーノはかさぶたで塞がった傷口をさすりながら、鬱憤を晴らすように呟く。


「なんだよ、それ。だったら産むなよって」


「だって、産みたかった」


葛藤を埋めるように風に揺れる風鈴のような声がリーノの言葉を上書きした。


リーノが顔を上げると、同じデイジーイエローの瞳がリーノの表情を読もうと目を見開いていた。


率直な回答にリーノはカッとなり、ダフネの肩を押して威嚇する。


「あんた本当に無責任だな! 産みたいから産んだって! それで育てず他人に渡すか!?」


「ごめんなさい」


「ごめんで済む問題かよ」


「外の世界、エルフ狩られる。村では育てられない。だからレンツが引き取った」


ダフネの言葉にリーノはすんなりと納得が出来ない。


一向に解決しそうになく、会話下手な二人を前にカイが頭を悩ませて岩肌を袖に隠した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ