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第31話「罪の正体」

「だって、殺さないと危ない……。海を守らないと」


「あきらめろ、キアーラ。ミオはずいぶんと頑固のようだ」


「ふぇ~ん」


こらえきれずに泣く姿はずいぶんと幼い。


それでもミオの姉だと言い張って、ぐずつきながら鼻をこすり、カイを睨みつけた。


「これは妹のためだからね! 決してあんたのためじゃないから!」


「ん。ありがとう。お姉さん」


「あ、あんたのお姉ちゃんじゃない!」


再びわぁっと泣き出し、マルティーナの後ろに逃げ込むキアーラ。


泣き虫でよく暴走するキアーラの扱いに慣れているマルティーナが、キアーラの頭を撫でてなだめていた。


《人魚の王に会えばなにかわかるかもしれない》


《王様……》


それは顔も知らぬミオの父だ。


どんな人なのだろうと浅く息を吐く。


《あなたがその男に使った魔法は命を繋ぐ魔法よ。ただ代償がある。……それでミオが流された。異世界への追放が最上位の罰》



ミオにとって罰のはじまりは、田舎町の海で泣いていた時からだ。


言葉も通じず、気味悪がられて孤独に生きるしかなかった時間。


キアーラが語る魔法と罰に正体だった。


もしかするとミオの異質さを周りは感じ取っていたのかもしれない。


目に見えない気味の悪さに怯え、人々はミオを遠ざけた。


孤独そのものが罰だった。


「ミオが孤独のままはイヤだった。ミオが罰を受け続けるのは嫌だった。だから誰の手を汚すか天秤にかけた。……殺されることだけを考えていた」


カイが遠くを見て呟いた。


難しい言葉のはずなのに、なぜかその意味がすんなりと理解できた。


憂えた表情にミオはすぐさまカイの手を包み込む。


ゾッとするほど冷たかった。


「どうして……」


「会いたかったんだ。……ミオに会いたかった」



それは世界で一番深い愛の告白。


大きく、深く、味わうように呼吸する。


「死んでもいいと思った。それくらい、ミオにもう一度会いたかった」


「カイ……!」


いとおしい。


この人が好きだと強く心が訴えた。


呼応するように心臓が締め付けられ、ゆっくりと花開くように笑みが生まれた。


たまらずカイに抱きついて、青い髪をかき寄せる。


膝をついて、腕の中に好きな人がいると想うと恋い焦がれた。


(絶対助ける! 死なせたりしない!)


「人魚の王に会いたい。会わせてくれ」


ミオを抱きしめたまま、カイが人魚たちに頭をさげる。


あれほど嫌悪していたキアーラも、二人の思いあう姿にいじけながらも泣いていた。


口をとがらせ、目を背けたままキアーラがカイに手を伸ばす。


キアーラなりの和解だと、カイは握手を返した。


その手はミオやキアーラ、船の仲間たちとなにも変わらない手だった。


「ドワーフの森にある浜まで来なさい。お父様には話をつけておくから」


なんだかんだミオたちに力を貸してくれることになったが、相応の要求はあった。


「どうせ行くつもりだったんでしょ? だったらミオの言葉を取り戻してからにして」


カイはなぜ知っている、と眉をひそめる。


ストーカー気質に追いかけてきたことを思えば、知られていてもおかしくないだろう。


「ミオが喋れないのはおかしいのよ」


キアーラいわく、ミオが喋れないのはミオが喉に蓋をしているかららしい。


ミオの罰はあくまで流された先で適用される。


生まれたこの世界で喋れないのはおかしいことだと断言した。


(私、ちゃんと喋れる可能性があるってこと……? どうすれば――)


姉たちに問おうとしたが、それだけ言い放ってキアーラとマルティーナは海へと潜ってしまった。


カイはミオの言葉を取り戻すつもりだったようで、予定通りドワーフの森へ向かうと宣言する。


ミオとカイは手を繋いで仲間のもとへ戻ることにした。


洞窟を抜けた先でウロウロしていたエルダと出くわす。



「エルダ……」


「ミオちゃん!!」


「わっ!」


ミオを押し倒す勢いでエルダが抱きついてくる。


ミオはカイと手を離してエルダを受け止め、また涙を浮かべた。


エルダに背中を押されてここまで来たと、ミオは泣き笑って感謝を伝えた。


「大好き、エルダ」


「……オレはまだ大好きとは言われてない」


和気あいあいとエルダとじゃれていると、カイがむっつりとして不満げな音を出す。


めずらしいカイの姿にエルダと目を合わせ、吹き出すように腹を抱えて笑った。


今まで感じたことのない幸福感にミオは光をまとっていた。

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