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いざ人里へ!(1)

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旅に出て数日が経った。

今の所、魔界からの連絡はない。

些か気がかりではあったけれど、よかった。と思っている自分がいた。



「…ドラゴニカ様?」




「ん?あぁ、うん。大丈夫だ。考え事をしていた。すまないな。

で?なんだった?」



アガルスの声で我に帰る。そうだ、今は旅の途中。自分の事にも気を配らなければならなかった。



「いえ、地図によればもう直ぐ人里に着くはずなのですが…」



アガルスはそこで言葉を切る。そしてまるで獲物を狩る獣のような鋭い目付きで後方を睨んだ。

あぁ、気づいたのだな。と感心。



「…付けられている。数はそう多くないが…おそらく野盗の類いだろうな。」



コソリ、目線を合わさず小さな声で呟くとアガルスは一度こちらに目を向けた。

私だからわかったのかもしれないが、その瞳は少し驚いた様子だった。




「…流石は我が主人あるじ

どうされますか。殺しますか。」




うむ。できれば無駄な殺生は避けたいところだ。

人里も近いし、そこに立ち寄った時に変に目立つのも避けたい。



「目立ちたくはないが…うむ。峰打ち…ぐらいで済ませてやるのが無難か。」



「何と慈悲深い。人間にそのような情け必要ないと思いますが…貴女様がそう望まれるのでしたらそのように取り計らいましょう。」



そう言ってアガルスは一礼すると勢いよく振り返る。

そして、外套がいとうの隙間から短剣を取り出すと、気配のする方向へと投げ放つ。

それは器用に木々の間を通り抜け、気配のする方向へと吸い込まれるように飛んで行く。



「…5人…うめき声が聞こえます。確認されますか?」




「うむ。そうだな…

…良いか。確認するだけだ。殺すな。」




「承知いたしました。」



気配の方へ向かうと、うずくまる人影がちらほら。うん。アガルスの言う通り、5人いるな。

そこで我に返る。


ちょっと待って。これってもしかして、この姿になって初の人との会話では…?

え、ちょっとどうしよう!なんて話せばいい??御機嫌よう?いやいや、腕とか足とかにナイフ刺さってるんだから御機嫌ようはないか!


緊張と焦りで黙ってしまった私をどう解釈したのか、アガルスはうずくまる人達に言い放つ。



「愚かな人間どもが!貴様らのあまりの愚かさに我が主人がお怒りであるぞ!

この尊きお方を狙うなど、万死に値する!!」



ええー。えー、アガルスさん??

え、なんでそんなこと言っちゃった?

と言うか、なんで得意げにこっち見てるの??

え、あなたの言いたいこと代弁しましたよ!みたいな感じなの?

えー全然代弁できてないよー


アガルスの期待のこもったような目線が痛い。

そして私も何をとち狂ったのか…



「くっくっく。貴様らのような脆弱な愚民がこの私に手を出そうとするなど…片腹痛いわ!

愚民共め!どうなろうと、文句は言えぬよなぁ?」



決して大きくない。しかしドスの効いたその声は山賊達を震え上がらせるには充分であった。

彼らはドラゴニカの浮かべた邪悪な笑みに恐怖し、青ざめてしまった。



嗚呼。もう駄目だ。アガルスはキラキラとした目でこちらを見てくるし、目の前の5人の人間達は恐ろしいものを見るような目でこっちを見ている。

これ人間とのファーストコンタクト失敗してますよね?


目の前の人間達の反応を見て、大きな失敗を犯したと確信したドラゴニカは軽くへこんでいた。

そんなドラゴニカを余所目に、アガルスは人間たちに言い放つ。




「しかし、だ。我が主人は愚かな貴様らをお許しになると申している。

命が惜しくば、立ち去れ!そして伝えよ!このお方に手を出そうものなら、次は死を覚悟せよと!!」



山賊達は蛇に睨まれた蛙のようにそこから動かなかった。

しかし、アガルスが指をパチンと鳴らすと、急に背を向け「ひぃっ」と引きつったような悲鳴をあげながら去っていった。

よかった。みんな走って去って行ったってことは、そんなに重傷でもなかったってことだ。

ナイフは刺さっていたが、そんなに深くはなかったのか?



「彼らは何故、逃げれるのに逃げなかったのだろうな?」



素朴な疑問を口にする。

すると


「逃げたくても逃げれなかったのですよ。

先ほど投げたナイフに術を施しておりましたので。

刺さった瞬間に金縛りというか…そういった効果が出るようなものを掛けさせていただきました。

なので、私が解術しなければ動くに動けなかったのです。

ちなみに、呻いてはいましたけど、声を発しておりませんでしたでしょう?あれも同様でございます。

まぁ、人間など脆弱な存在、これくらいの脅しをしておけばそう接触しようとも思いますまい。」


ニッコリと話すアガルスに少しの恐怖を覚えた。




「そ、そうか。うむ。まぁ、殺しはしなかっただけ良いか。

しかし効果覿面のようだな。人の気配がしない。これなら何にも疑われず、人里に行けそうだ。」



私達はやっと、人里に足を踏み入れることができるのであった。

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