終わりの始まり(2)
魔界にしては天気の良いその日。
私はついに念願の人里へと向かうこととなった。
「…よし。」
人に化け、服装も冒険者の様な動きやすいものへと変わっている。
…出発の準備で王族だからという理由で何やら装飾品をつけられそうになったが断固拒否した。
流石にただの冒険者が宝石つけて現れたら、どこかの貴族の廃嫡子ではないかと目立ってしまう。できるだけ目立たないことに越したことはない。
「…それにしても見事な赤だなぁ。」
視界の端に映るそれは業火のごとき赤である。
初めて人になった時、赤い髪よりも自分が女であることに驚き意識はしなかった。
前世は日本生まれの日本育ち。髪も瞳も黒かった。そのため、自分の今のこの髪や、瞳の色に違和感を覚える。
…まだ上手く同調できていない…というか。
「この髪色が人里で目立たなければ良いが。」
偵察部隊の話によると、人の髪の色は様々らしい。それならば、悪目立ちはしないと信じたいところである。
「…失礼します。ドラゴニカ様。準備は整いましたでしょうか?」
扉を叩く音とともに現れたのはアガルス。
彼もまたいつもの服装とは打って変わって冒険者の様な出で立ちである。
…そう。結局あの時の会議で私はアガルスを連れて行く事を選んだのだ。
あの時のアガルスはすごかった。喜びを全身で表していた。魔王である私だが、恐怖を覚えるほどに。
「ドラゴニカ様?」
いかんいかん。考え込んでしまった。気を引き締めなければ。
「すまない。考えごとをしていた。
待たせたな。向かおうか。」
城の扉まで向かうと、そこにはヒューゲルとヴィアベルがいた。
「2人とも、来ていたのか…」
2人は私の姿を見るや否や、目を見開き驚いた表情を浮かべていた。
「…まさか、ドラゴニカ様…?」
「嘘だろ。王よ…まさか、あんた、女だったのか…?」
「む?…あぁ、そうか。そういえばこの姿を見るのは2人とも初めてであったな。
私もはじめ驚いたのだが、どうやら女だったらしい。
だが心配は無用だ。男として生きてきたからな、これからもその様に思ってくれて構わん。
変な気遣いは無用だ。」
「そうです。ドラゴニカ様は性別を超越した存在…嗚呼、尊い。」
やはりアガルスは盲目的だな。と思いつつ2人にまた、視線を移す。
「まぁ、私たちは今からここを離れるのだが…
会議で言ったように、何かあったらすぐに知らせよ。
それと私が居らぬ間、ここのことは任せたぞ。」
「そう言われちゃあ、頑張るしかねぇな!」
「もちろん。最善を尽くします。」
「「王よ、ご武運を!」」
こうして出来のいい部下に見送られ、私は魔界を後にしたのであった。




