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ニート狐たちのフォックストロット  作者: ポテンティア=T.C
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1-28 はなふぶき?4

圧力鍋から、シューって出てくるあの湯気。

不思議ですよね……。

どうして中身が吹き出さずに、湯気だけが出てくるんでしょうか。

……この世界に来てから、私も前に、そんな疑問を思ったことがありました。


ですけどね……


『じーっ……』


……4時間。

4時間ですよ?

昼食(?)を中断して猪の骨を煮込み始めてから4時間もの間、テレサ様とルシアちゃん、それにアメ様が、ずっと圧力鍋の圧力弁を凝視し続けていたんです。

正直、私にはあの集中力が理解できません……。

あの圧力弁からは、狐の獣人の注意を引き付ける、何かフェロモンのようなものが出ているのでしょうか……?


あ、でも、途中からシリウス様も参加されていたので、それはないですかね。

まぁ、シリウス様の場合は、熱いものに反応しただけかもしれませんが……。


かくいう私も……圧力弁ではないですが、実はそれを見ていた皆様の姿を、後ろからゆっくりと拝見させていただいていました。

圧力弁から出る湯気の量が増えたり減ったりした時に、みなさまの獣耳や尻尾が、同じようにして反応するのが……なんとも微笑ましくて……。


……おっと。

それはさておきです。


「……というわけで、出来たこの液体……まさに見違えるようなのじゃ」


4時間煮込み続けた大きな圧力鍋を、水で冷やして、内部の圧力を下げて……。

そして安全弁が下がって蓋を開けたテレサ様が、嬉しそうな笑みと共に、その中身をこちらに向かって見せてきました。


「うむ。白いスープじゃ」

「でも、なんか、ちょっと臭くない?」

「こんなものだと思いますよ?」


そしてそれぞれに、見た目に対する感想を口にする皆様。

でも、どんなに語るより、そして観察するよりも……百()は一()にしかず、だと思うんですよね。


「……テレサ様。早速、お味見の方を……」


「う、うむ。そうじゃのう……」


すると、キッチンから持ってきた小皿に、おたまを使って少しだけスープをすくって……そして恐る恐る味見をするテレサ様。


「…………」


「どうです?」


「……うむ。ちょっと塩が足りんかったかも知れぬの」


テレサ様はそう言うと、追加で塩を投入されます。

そして満遍なくかき混ぜて……再度試食です。


「…………うむ。今度は良いみたいなのじゃ!」


「私も味見してみたい!」

「わ、ワシもじゃ!」


と、欠食児童のように、スープへと群がるルシアちゃんとアメ様……。

その際、シリウス様は口を閉ざされていたようですが……そわそわとしているところを見ると、恐らく2人に混じって、スープの味見をしてみたかったんでしょうね。


そんなシリウス様の様子に気づいたのか……


「ほれ、ユキ殿。主の分もあるのじゃぞ?」


ルシアちゃんとアメ様にスープの入った小皿を渡された後、テレサ様は4枚目の皿をシリウス様に渡されます。


その後で何故か5枚目のお皿を手にとって……そこへとスープを注がれるテレサ様。

それからテレサ様は、そのお皿を私に向けつつ言いました。


「で、これがユリアの分なのじゃ」


「え、私にもいただけるのですか?」


「それはそうじゃろ。ここにおる者たちが皆が口にしておるというのに、主だけに渡さぬ、などとという意地悪を、どうして妾がせねばならぬのじゃ?それに、この料理を教えてくれたのは主なのじゃからのう?」


「えっと……ありがとうございます」


本当はいらn…………いえ、せっかくなので、いただくことにしましょう。


ズズズズ……


という音は上げませんが、私は小皿に注がれたスープを、口の中へと流し込みました。


「……あ」


……思いの外、美味しいですね……。

一度ローストされた骨だったので、内部にあるコラーゲンなどを主成分とするダシは、すでに炭化してしまっているかと思ったのですが、まだ十分に残っていたようで、絶妙な塩加減と共に、私の胃を刺激してきました。

……この味だとご飯が欲しくなりますね。

結局、お昼ごはん、食べれてませんし……。


「さーて、ならば昼食といこうかのう?」


「あの……もう5時なんですけど……」


「ぬ?おや、もうそんな時間じゃったか……。では夕食前の間食じゃのう」


えっと……夕食は別に摂られるのですか?

しかも、その間食って、例の山盛りご飯と、このスープのことですよね?

それ、間食って言いませんよね……。

確かテレサ様、体重を気にされて……いえ、何でもありません。

そんな余計なことを言うと、今後の査定に響くので、口には出さずに心に閉まっておきます。


……しかし、今回に限っては、それが逆に悪手だったようです。


「もちろん、主たちも夕食を食べていくんじゃろ?」


「えっ……」


「あ、はい。あのスパイスを食べられるなら是非!」


「し、シリウス様?!」


「うむ。ならば追加でご飯を炊こうかのう」


……完全にシリウス様とテレサ様のスイッチが入ってしまいました。

もうこうなってしまったら、お断りして、お家でご飯をいただく、という選択肢は採れそうに無さそうです。


ということはシリウス様が、またあの怪しげなスパイスを使って食事をされる、ということになると思うのですが……。

あのガスマスク……また貸していただけるんでしょうか?

キリが良かったので、短いですがここで一旦投稿させていただきます。

……テレサ様の『ユリア書けーなのじゃー』コールが私の心を締め付けてきますが……自業自得なのでしかたありませんね。


ちなみに、『はなふぶき』の話は次回で終わる予定です。

ホント、食事展開からどうやって桜へと持っていくのか悩ましいところでしたが……まぁ、どうにかするしかないですよね。

見せるような腕はありませんが、頑張って書いていこうと思います。


あ、そういえばなんですけど、一つだけ補足があります。

私の喋り方についてです。

テレサ様やシリウス様に対して、『様』付けなのに、半端な謙譲語(丁寧語?)を使っている……。

これについては、あまり気にしないでください。

……そうですね、厳密な主従関係は無い、といえばその理由が分かってもらえるでしょうか?

まぁ、ワルツ様と出会った頃から、ずっとこんな感じの喋り方ですからねー。

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