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ニート狐たちのフォックストロット  作者: ポテンティア=T.C
30/66

1-29 はなふぶき?5

そして、テレサ様方の家主様が帰宅なされた後。


……心の中の声になりますが、一つだけ言わせてください。

……テレサ様。

私たちが付き合う食事って、その……夕食前の『間食』までですよね?

『夕食』本体は含まないんですよね?!


だったら…………どうして、目の前に、山盛りのご飯(2杯目)と豚骨スープがあるのでしょうか……?


「ん?どうしたのじゃ、ユリア。主の箸が進んでおらぬようじゃが……」


「い、いえいえ。美味しく味わって食べていますよ?」


「なら良いんじゃが……」


うっぷ……。

もうお腹いっぱいです……。


っていうか、皆様、何でそんな美味しそうにご飯を頂いてるんですか?

……もしかして、アレですか?

胃袋が異空間に通じてたり、空間制御魔法で拡張されてる類の大食いチート的なやつ……。

まずあり得ないことだとは思うのですが……どう考えても、そうとしか思えません。


……そんなことを考えていても、食事は一向に進まないので、とりあえず、ご飯をスープで流し込もうと思います。


パクっ……


ズズズズ……


……う、うっぷ……

な、中々に大変な食事です……。

しかし、これは無理にでも流し込むしか無いでしょう。

リバースや残すなどという選択肢は、私には無いのですから……。

あぁ……これでまたポッコリお腹に悩まされる日々が始まるんですね……うぅ……。




そして、しばらく経って……


……や、やりきりました。

誰か褒めてください……私のこの努力!

一体、何に対して努力してるのか、自分でも分からなくなってきていますが、とにかく私はやり切ったんです!


「おかわりしよっかなぁ〜」


……ちょっと待ってください、ルシアちゃん!

おかず(塩をかけた油揚げ)があるから食が進むというのは……まぁ、この際、無理やり理解しますが、さっきも山盛りのご飯を食べて、そして今も食べて……いったいどれだけ食べる気ですか?!


と、私が内心で脂汗を掻いていると、みなさまから少し離れた場所で、例の辛い調味料をご飯にかけて食べていたシリウス様がお茶碗……ではなく、(どんぶり)を片手に、おっしゃられます……。


「えっと……すみません、テレサ様。私もおかわりを頂いてもよろしいでしょうか?」


……分かりました。

つまり、私の感覚がおかしいのですね。

……そう思わないと、頭の中がおかしくなってしまいそうです……。


「うむ。構わぬぞ?ユリアも食べるのじゃろ?」


「いりません!」


あー、ついつい言ってしまいました……。

いや、でも、これ以上無理です。

というか、テレサ様は、どうして私が食べると思ったのでしょうか?


「そうか……。普通そうじゃよな……。てっきり妾の感覚がおかしくなったのかと思ったのじゃ……。うっぷ……妾もお腹がキツイのじゃ……」


いやいや、分かってたなら、夕ごはんを無理やりに食べるの止めましょうよ?!


……まぁ、でも。

皆さんが食べるというのに、自分だけ食べないというのは、きっと気が引けたんでしょうね……。

私だって、似たようなものですから……。


と、思っていると……


「テレサよ!おかわりじゃ!」


「…………」ひょいっ


茶碗を持ち上げて、おかわりを表現するアメ様と家主様。


……あ、あれ?

やっぱり、私たちの感覚がおかしいのでしょうか……。

このままだと私とテレサ様が少数派(マイノリティー)ということになりそうです。


というか、私が思うに……よっぽど、炭水化物(とうぶん)の塊であるお米でお腹を膨らせるくらいなら、バランスの良い食生活を送ったほうが、結果として食べる量を少なくできるので、逆に食費が減ると思うのですが……。

これ、言うべきでしょうか、それとも言わないでおくべきでしょうか……。

……うん。

言わないでおきます。


え?上司の間違いを正すのは部下の仕事?

知りません。




そんなこんなで、テレサ様方のお宅で昼、間食、夕の3食(?)を頂いた私たち……。

もう夜も遅いので、そろそろお(いとま)しようと思います。

……ただ、食事に対して、何もお返し出来ていない気がするのが唯一気がかりです。

後ほど何かの機会で、お返しすることにしましょう。


「シリウス様。そろそろ……」


「そうですね。……ですが良いのですか?ユリア。花粉症の方は?」


「はい。すっかりと調子は戻りました。……多分、戻ったらぶり返すでしょうけど……その際はまた来てもいいですよね?テレサ様……と、家主様」


「うむ。もちろんなのじゃ。その時は、新しい料理を教えてほしいのじゃ!」


「…………」こくり


「はい。ではこちらでも、何か教えられる料理を考えておきますね」


どうやら、お返しについては、難しく考える必要は無さそうですね。

問題は……テレサ様方が、恐らく、材料を使わなくても作れる料理を所望されていることですが……まぁ、どうにか考えることにしましょう。


そして、私とシリウス様が、玄関へとたった時のことでした。


「…………!」はっ


家主様が、何かを思い出されたかのように、手を合わされました。

すると、ルシアちゃんが、その家主様の表情が何を言っているのかを翻訳してくれます。


「えっ……雨降ってきてるんだって……」


「あー、そうだったんですか……」


……ルシアちゃんは一体どうやって、家主様の考えを読み取っているのでしょうか。

どこにも、雨の成分はなかったように思うのですが……。


ともあれ、雨が降っているということは、空中に飛散している花粉の量が劇的に減っているということなので、私にとっては朗報ですね。

これなら今晩はぐっすりと眠れそうです。


すると、雨と同じ音の名前をもつアメ様が、口を開かれました。


「ん?おかしいのう……降らす予定では無かったのじゃが……」


『えっ?』


「いや……気にするでない。てれびの予報を見ておって、ちょっと口が滑っただけじゃ。そうじゃのう……テレサの言葉を借りるなら……気にするでないかもだしなのじゃ?」


「それ、妾の言葉ではないのじゃ……」


そうですね……それ多分、(うち)にいるイブちゃん(?)のことでしょうね……。

あれ?

ということは、アメ様はイブちゃんに会ったことがあるということでしょうか?

イブちゃんからは、アメ様の話は何も聞いていないのですが、2人はいつの間にか顔を合わせていたようです。


私がそんなことを考えていると……


「さ、ユリア。傘を借りるほどの距離でもないので、家まで走りましょうか?」


シリウス様がそう申されました。

もちろん部下に否やはありません。


「分かりました!お任せください!……では、みなさま、お世話になりました」


「では、おばんでした」(ボレアス弁で夜に使う挨拶の意)


そして私たちは外へと出ようとしたんです。


ガチャッ……

ドゴォォォォ!!

ガチャッ……


「あれ?おかしいですね?雨が降っていると思ったのですが……」


「そうですね……。何か形容に困るような勢いで、水が空から落ちてきていたような気がしますね……」


きっとアレを滝のように降る……滝って言うんでしょうね……。

……雨なんかじゃない気がするくらい、猛烈な勢いで雨が降っていました……。


「うむ……おかしいのう……」


と、口にしたのはアメ様です。

どういうわけか、先程からアメ様は、しきりに首をかしげておられますが……何か予想と違うことでもあったのでしょうか?


「うむ……困ったのう。さっき見た感じじゃと、外に出た瞬間、ずぶ濡れになるじゃろうのう……」チラッ


テレサ様はそう仰られると、ルシアちゃんに視線だけを送りました。

恐らく、重力制御魔法か風魔法で、土砂降りの雨をどうにかして欲しい、という意味を含んでいるのでしょう……。


「え?送ってこいって?」


「うむ。ここままじゃと、ユリアやユキ殿がずぶ濡れのサキュバスと雪女になってしまうからのう」


「んー、そうだね。まぁ、仕方ないっか」


外で降っている雨の勢いを考えると、相当大規模な魔法を使わなくては、降ってくる雨を凌ぐことはできないはずです。

恐らく、ルシアちゃん的には、人目に付くようなあまり大きな魔法は使いたくないんでしょうね……。


すると……


「いえいえ。ルシアちゃんが手を煩わせるようなことはありません。家は近いのですし、そのくらいなら私が魔法を使えばいいだけの話ですから。お食事まで頂いたのに、そこまでしていただくというのは、図々しいような気がしますので……」


シリウス様が、顔の前で手を振りながら、そんなことを仰られました。


「そう?んー……でもユキちゃんの魔法、そんなに強かったっけ?」


「…………えっと、どうにか頑張れば……」


おっと……これは、びしょ濡れ決定ですね……。

いや、濡れても家に帰って、すぐに着替えればいいだけなので問題は無いんですけどね……。


「仕方ないなー。……じゃぁ、今から魔法を使うから、3分以内に家に帰ってね?」


シリウス様の返答に苦笑を浮かべたルシアちゃんは、そんなことを言いながら……家の中で、天井に向かって手を伸ばしました。


「……はい、今から!」


「えっ、あ、はい!おじゃましました!」


「えっと、おばんでした!」


そう、別れの言葉を口にしてから、急いで外へと出る私とシリウス様。


ガチャッ……


そして、外に出て、見えてきた光景は……


『……は?』


……どこかの長いトンネルを超えた先に見えてくるような……そんな雪景色でした……。

風魔法や重力制御魔法だと、ルシアちゃんが直接、私たちについて来なくてはならないので、最悪の場合、魔法を使っている姿を誰かに見られる可能性がありますが、超大規模な氷魔法で街全体の雨を凍らせて雪に変えてしまえば、ついてくる必要が無いのでどうにかなる、と思ったようです。


「ほら!あと2分49秒!早くしないと、雨に変わるよ!」


「は、はい!ほら、シリウス様、早く!」


「……もう、私……雪女としてダメかもしれませんね……」


ルシアちゃんの圧倒的な氷魔法を前に、あまり魔法の強くないシリウス様は、心が折れてしまったようです……。

……仕方ありません。

手を引っ張って無理矢理に連れて行くしか無さそうです。


「では、お手を拝借……」


「…………はぁ……」


……これは重症ですね。

後で、辛いものを食べていただかないと、元に戻らなそうです。


というわけで。

私たちは残り2分45秒で、斜め向かいの家に戻ることになりました……。

む、難しいです。

というか、全話から随分と時間が開いてしまい、申し訳ありません!


物語のプロットは大体決まりましたが……本話の方で展開済みのネタを使わなくてならないという縛りがあるので、能力的な制限に矛盾を生じさせずに話を進めるというのは、なかなか大変なんです。

新しい能力や話を勝手に決めて書いていけるなら、ずっと楽に書けると思うのですが……仕方ありませんよね……。


というわけで、もう一話で終わる予定です。

どう考えても2分45秒の話ではないかもしれませんが、頑張って書いていこうと思います!

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