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箱館・怪談散歩  作者: オブチアスマ


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第91歩 父が怖い

 Fさんが小学五年生の時お母さんは体調を崩し入院していて幼い妹二人は親類の家に預けられていた。


 その頃からFさんは新聞配達のアルバイトを始めて

稼いだ、お金は全部家に入れていた。


父がどういう人だったのか、いつも家に居ないので

Fさんが知っているのは酒ばかり飲んでいる父の姿だった。


三月の大雪が降る夜に父は

「具合が悪い」とFさんに言って

タクシーに乗り病院に行き次の日に亡くなってしまった。


急な出来事だった。

Fさん曰く

父親の遺体を見ても、それが自分にとってどういうことなのか

理解できていなかった。

それが証拠に学校は仕方なく休んだが新聞配達は休まなかった。

「とにかく貧乏だったから働かなくちゃと思っていました」


入院していた母は無理をして戻ってきた。

お葬式が済んで、お母さんはふたたび入院した。


近所の親類がFさんの、ご飯支度をしてくれて

幼い妹二人と留守番をしてる間にFさんは新聞配達に出かけていた。


 まだ父の四十九日が来ない、ある日、学校が終わったFさんは

家の前まで来ると玄関のドアの上部にある明り取りの窓から

外を見ている『父』を発見した。


明り取りの窓の位置は高いところに有り

『死んだはずの父』はスパイダーマンみたいに

天井と壁に手足を突っ張って外を見ている。


「なんで、なんでいるの?」


お葬式に参加したFさんは父が、お骨になってしまったのを見知っていた。


 目の前の異様な光景に、おろおろして家には入れずに周辺で、

うろうろしていると

下校してきた友人N君に話し掛けられた。


「F、なにやってんだ」


「家の玄関の窓にオヤジいて怖くて中に入れない」


「お前の親父さん死んだのにいるわけねえべ」


「それが居るんだって、ほらあ」

玄関の明り取り窓を指差す、だがN君には全然見えてない。


「おめぇ新聞あんだべ、どらぁ鍵かせ」


仲の良いN君が鍵を開け中に入っていくと父の姿が消えて居なくなった。

二人で家の中を見て回ったが誰もいなかった。

 

 その日の夜Fさんは夢を見た。


Fさんが夢の中で居間にいると天井から正座した状態の父が降りてきた。

父は何も喋らないがFさんに手を合わせ、しきりに謝ってきた。

ごめん、ごめんと謝る父の姿にFさんは病気の母や幼い妹たちを思って、これからどうすればいいんだと腹立たしく思った。


父は『ごめん、ごめん』謝りながら天井を抜け消えていった所で


Fさんは目が覚めた。


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