第92歩 おかあさん
Fさんは親類のおばさんたちに、お世話になって小学6年生になった。
あいかわらず新聞配達も続けていたが、お母さんも入院したままだった。
下の妹は低学年で一番下の妹はまだ保育園生だった。
兄妹で、お母さんのお見舞いに行くと、お母さんはいつも喜んでくれて
兄妹で、お母さんが早く良くなるように祈っていた。
やがて夏が来て、秋になり、寒くなってきた十一月末
Fさんが新聞配達を終えて家に帰ると、いつもの時間より
1時間も早く家に着いた。
『ん?こんなに早く帰って来れるわけないはずだけどなあ』
本当に不思議に思った。
すると家の外にバイクの止まる音がして
「こんにちはFさーん電報です」
Fさんが玄関に行き電報を受け取って中身を見ると病院からで
お母さんが亡くなった知らせだった。
頭の中が真っ白になって
胸がギュッと苦しくなった。
「おかあさん」
まだ小学生のFさんが形ばかりの喪主を務め葬儀が終わった。
何が何だかわからなくなって大人たちのいいなりで数日過ごしたので
お母さんのお葬式は記憶にあまり残っていない・・・
親戚のおばさん一家には随分とお世話になった。
葬儀から一週間ほどたった頃、Fさんの従姉妹にあたる
親戚の娘さんが朝、学校に行く前に鏡を見ていて悲鳴をあげた。
先日、亡くなったFさんのお母さんが鏡の中に映し出されていた。
「お母さん、早く来て!」
何事かと呼ばれたFさんのおばさんも
鏡に映るFさんのお母さんの姿を見て驚いていると
―スッと消えて見えなくなった。
その翌日からFさんの従姉妹の様子がおかしくなり始めた。




