↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
箱館・怪談散歩  作者: オブチアスマ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
91/96

第90歩 沼

 Fさんが小学四年生の時、親友のH君やクラスメイト数人で

近所の沼にフナ釣りに行くのが流行った。


その沼は笹薮に囲まれている直径三十メートル程の沼で

小川から水が流れ込んでいて溢れないように水は下流の小川に流れ、

その先に、もう一つ沼がある造りになっていて

下の沼の水は農業用水にも使用されることがあった。


 ある土曜日FさんはH君やほかのクラスメイトと午後から上の沼に

釣りに行く約束をしていて釣り道具を持って出かけた。


 沼に到着すると周囲に数台のパトカーと救急車が見えた、

ざわざわと近所のやじ馬もたくさん集まっていた。


「うわ、なに?」


待ち合わせしていた友人のH君がいたので一体何の騒ぎか聞いてみたが

H君の表情は暗く何も言わない。


やがて、ほかの友達も集まって来た時H君は

「帰る」と言って帰宅してしまった。


「けいさつ、どうしたの?」


Fさんは周囲の大人に何があったのか聞いてみたが邪険に扱われ

誰も何も教えてくれなかった。


やがてパトカーも救急車もいなくなって、みんなで釣りを始めた。


 ふと見やると、いつも腰掛ける更地の部分に誰が置いたか

線香とロウソクが立ててあった。


沼を挟んだ向かい側にはお地蔵さんの安置された小さな祠(ほこら)もあったので、お地蔵さんの何かじゃないかと友人たちと話した。


 当時みんなにはキャッチ&リリースという概念はなくバケツに釣ったフナが放り込まれていった。


釣りの成績は上々で普段より、たくさん釣れた。


時刻が夕方近くなると門限のあった3人の仲間が帰ってしまった。


Fさんは帰ったところで家には誰もいない。


釣りを続け付き合いの良い友人と二人で沼を見ていると

『錦鯉』が悠然と沼の反対側に泳いで行くのを発見した。


「鯉だっ!」


Fさんは夢中になった。


友人に

「引っ掛けてもいいから鯉を釣ってやろう」言うが早いか慌てて道具を持って沼の反対側へ走って移動した。


時折、濁った沼の水に


『ゆらり』


錦鯉の泳いでいるのが見える。


なんども竿を振って何とかならないかと夢中になって

『ハッ』気が付くと辺りは、すっかり暗くなっていた。


友人が

「そろそろ帰ろうよ」と言う。

Fさんは

「帰りたかったら帰ったら」突っ張った事を言っていると

真向かいに置かれていたロウソクに『ふわっ』と火が灯った。


続いて線香にも火が点き小さな赤い火が見えて線香の匂いが漂ってきた。


「おい、誰もいないのに向かいのロウソク火ついてるぞ」


ついで目前の水面がボコボコと音を立てて泡立ってきた。

何かと思い見ると、どんどんボコボコが激しくなり


――ザアーーー


噴水のように水柱が立った。

高さは大人の人ほどもあった。

隣にいる友人が声を上げた


「うわぁーばあさんだ!」

 

だがFさんにはボコボコと噴水のように立つ水柱しか見えない。


「おい見えないのか、びしょぬれのばあさんだよーっ!」友人は腰を抜かしている。


やがて水柱を包むようにモクモクと煙が集まってきて柱になり

なんと電信柱ほどの高さまでになると


――ぐおぉーーー

こちらに向かって倒れてきた。


「うわあー」Fさんは怖くて声を上げたが足が動かない。


煙の柱がFさん目掛けて倒れてきた。


―バサリ・・・

煙が沼の表面を覆い尽くした。


―サーッ


動けるようになったFさんは煙に覆われている沼の真ん中あたりに咄嗟(とっさ)に拾った石を投げ込んだ。


―ジャボン

すると煙が見る見る引いていき向かい側で灯っていたロウソクの火が消えるのが見えた。


「おい!大丈夫か起きろ!」へたり込む友人を助け起こし

釣り道具とバケツ一杯のフナを持ってガクガクした足で逃げ出した。


 その時釣ったフナは近所のおじさんに全部あげた。

 

 月曜日、学校に行くと最初に帰ってしまったH君に土曜日の怖い出来事を話した、すると事実が判明した。

 

 土曜日の午後、誰よりも先に到着したH君は沼に到着すると沼に浮かぶ人を発見し、あわてて近くの商店に駆け込んだ。

「たいへんです、たいへんです!!」

話を聞いた商店主が警察に通報し騒ぎになった。


亡くなっていたのは近隣に住む、おばあさんだった。


 本当は一言、H君がFさんら仲間に事実を告げてさえいれば

誰も好き好んで事故のあった沼で釣りなどしなかった。

Fさんは怒りがこみあげて大きな声を出した。

「なんだよそれ早く言えやぁー!」


H君は余程気味の悪い光景を見てしまったらしく

ショックで話がうまく出来なかったのだと弁解した。


「絶交だ!おまえなんか!」


 Fさんは、あの時おばあさんに、

もう少しで、あの世に連れて行かれるところだったのではないかと思っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。