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箱館・怪談散歩  作者: オブチアスマ


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第76歩 Tちゃん

 2020年6月、Fさんは遠方のため、しばらくご無沙汰な

男友達でTちゃんと呼んでいた友人のアパートを訪ねてみた。


アパートは、そのままだったが友人の居ると思った部屋には表札がなく

郵便受けやドアの隙間にガムテープが貼られており、どう見ても

人が住んでいるようには思えない。


 FさんはTちゃんの実家に電話して聞くと

「居ないよ」という、よくよく聞くと2017年1月に亡くなったのだと聞かされた。


「え?いつですって」


Fさんが確認すると、おかしな疑問が沸いてきた。


さかのぼって2018年・19年は、確かに会っていない。

毎年6月頃は仕事に少し空きができて余裕があるのだが19年18年は色々と忙しく最後にTちゃんに会ったのは

『2017年6月』だった。


しかしTちゃんは2017年1月に亡くなったと云う。


Fさんは最後にTちゃんに会った時、実は何だか様子がおかしいなと、

ずっと思っていた。


 2017年6月、午後二時頃

FさんはTちゃんのアパートを訪れた。


ドアをノックすると中からTちゃんが顔をだした。


「おう、元気だった?」

Tちゃんは下をむいて返事をしない。


Fさんは元気のないTちゃんを見て、また鬱病でも再発したかなと

心配になった。


「めしでも、おごるからさ天気いいし、どっか行こうよ」


だがTちゃんは下をむいて首を左右に振り【行かない】と返事をした。

ふと足元の玄関に靴がない。

部屋の奥に目をやると部屋が真っ暗で何も見えない。


普通どんなに暗くたって奥の家具や襖などが見えるはずだが

空間そのものが真っ黒で闇の中にTちゃんが立っているように見えた。


Fさんが将棋をしようかとか食べたいものはないかと質問しても

首を振るだけで何も言わない。


Fさんは、ご飯など、おごるつもりでいたので、お金を少し置いていこうとも思ったがTちゃんは、とにかく

『うん』と言わない。

そして真っ暗な闇に引っ込んでしまい出てこなかった。


「おーい・・・じゃあ、また来るね」と言い残し帰路についたのだが

一体どうすれば、あそこまで部屋を暗くできるのかと変に思っていたのだ。

 

 話を聞いた私とFさんで勘違いじゃないかと、あれこれ話したが

間違いないのだという。

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