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クラスごと異世界転移した俺のハズレスキル『堕落』、実は最強の能力だった。すべてを奪われた俺は、ありえた自分となって復讐する  作者: 黴男
第二章:ハイブ拡大編

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095-メタラス侵攻

三日後。

アルバトロス王国の国旗を掲げ、行進する兵が居た。

半分以上が屍兵で構成され、後の半分も三割がハイブ、二割が教団員という異様なその軍は、メタラスを目指していた。

首都グロス・ザクラスの目と鼻の先にある都市であるメタラスは、領土を大幅に奪われた魔王軍にとって最後の砦ともいうべき場所であり、魔王軍幕僚は全員この都市を拠点とし軍を動かしていた。


「やはり、本当なのか」

「ああ、信じられぬだろうが...」


円卓を囲んだ幕僚たちは、入った速報に眉を寄せて話し合う。

人間が勇者を召喚したというだけで、たった一ヶ月程度で首都直前にまで迫られたのだ。

無理もない。

そしてその速報とは、メタラス南部50km程度の地点にて王国軍の軍旗が翻るのを観測したという事と、魔力隠蔽を施しているはずの偵察魔法が迎撃された事実である。


「王国は我々の魔法技術を凌駕しているという事なの?」

「まだわからぬ、偵察兵に油断があったのやもしれぬ」

「王国の魔法兵など、ファイアボールを飛ばすのが関の山であろう」

「事実、ヤツらは精強なる我が軍を突破してここまで来たのだ、憶測を積み上げるより先を見据えねば」


その場に集うのは、アンタレス、リンパルド、ケルヒス、ボリスの幕僚四人全員だ。

全員、軍団長ランべの配下かつ騎士団長ウォード・サバイクの上司に当たる人物であり、先代より続く戦いを見守ってきた者たちだ。

よって人間を侮らず、正しく恐れ、起きた事実を冷静に整理して強さを測っていた。


「サスマ平野で一万が殺された戦いは、強力な氷魔法によるものだったと分析が出ている」

「ならば敵は氷魔法の勇者だと?」


ボリスが資料を読み上げ、アンタレスがそれに刃を差し込むように疑念を挟むが、


「いえ、それは分かりません。大量の蟲の姿も観測されています」

「大規模な魔法攻撃の痕跡もある、魔法陣の魔法痕跡もだ」

「勇者は複数いるということか? そんな事が人間の魔法水準で可能なのか...?」

「一体何万人生贄にしたのか?」


勇者召喚。

それは、魔族側も過去に試みた事だ。

魔族を百人捧げても成功せず、成功の可否は生贄の質や魔法陣のレベルではないのだと判明してはいたが、幕僚たちはあまりの事態に信じられず妄言を吐く。


「勇者が複数人いるとするならば、これまでの事態にも説明が付く。その上で考えよう、勝てるか?」

「難しいだろう...」

「伝承の通りであれば、我々がいかに手を尽くしても無駄だ」

「そうね...歩く攻城兵器のようなものですもの」

「もっと酷い。魔王様が複数居るようなものだぞ」

「不敬よ、ケルヒス」


会話は続く。

しかしながら、中々結論がつかない。

その時、追加の速報を兵士が持ってくる。


「グロス・ザクラスから伝令! アノラスから、フィレーヌ様が入城されたとの事です! アノラスも同様に侵攻を受けており、都市内部に敵が潜伏している模様!」

「何という事だ」

「待て、あの街は魔物の防波堤だ、魔物の侵攻では? アルーン湖を挟んでいるゆえ、人間の軍は船がないと渡れん」


議論は加速する。

「複数の勇者をどうやって倒すか」という無理難題ではなく、「アノラスの侵攻をどうやって押し留めるか」という普遍的な難題にシフトしていく。

無理難題どころではない、不可能を可能にすることを論じるぐらいなら、難しい事を議論した方が有意義だと、暗黙のうちに合意したのであった。


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