090-アノラス陥落戦
アノラスの攻略は、恙なく始まった。
大型の蟲がアノラスの東部から侵攻し、すぐさま反応したアノラス側から迎撃が始まった。
「通信の阻害はいいんですか?」
「既に終わっている」
俺はマイティジェネラルの姿で、そこに立つ。
魔力通信ジャマーを設置した後だ。
これで、四時間は首都への通信網は機能しない。
「行くぞ」
俺はブレイカー・ランチャーを構える。
反動がデカすぎるらしいが、このボディなら大丈夫だ。
「ドローン展開」
俺の背中から、複数のドローンが飛び出す。
ドローンといっても、六角形の板のような謎の形状の浮遊物体だ。
こいつら自体は攻撃をしない。
俺の「目」になるものだ。
「測的、照準よし――――発射」
放たれた飛翔体は、都市側からの迎撃を弾きながら城壁へと飛んでいく。
そして壁に突き刺さり、とんでもない規模の爆発を引き起こした。
爆発は二回発生して、城壁に完全な突破口を開く。
「行け」
俺は肩の装置を起動して、空に赤色の信号弾を打ち上げる。
その途端、城壁付近に動きがある。
一斉に現れたハイブ兵が、壁を登って次々と穴の中へと入っていく。
「――――〈堕落〉」
俺もベノムドミネーターへと姿を変え、城壁まで一気に駆け抜ける。
身体能力ではベノムドミネーターに勝る姿はないからな。
「ヨッ、ト」
触手を使って壁をよじ登り、俺は自分で開けた穴の中へと入り込む。
街の中ではすでに混乱が始まっているようだな。
ハイブ兵どもは、中で人間を食い荒らすか、生き餌とするために四肢を奪ったり脳を喰ったりと様々だな。
俺は街を優雅に歩く。
湖という取水地が近くにあるからか、街のいたるところに水路がある。
その水路もいずれ血に染まる事になるだろうが、今はいい。
「サテ.....」
この街は間もなく陥落する。
であれば、俺が目指すのは中心部。
この都市を管轄する魔族のいる場所だ。
「目立ツハ目立ツガ、本当ニアレカ?」
街の中央部の目立つ尖塔。
そこかとも思ったが、別に高い場所が執政の場所であるという訳じゃないしな....
『ハイブ兵士ニ告グ。管理者ラシキ身分ノ人間ヲ見ツケタ場合スグニ報告セヨ』
『発見済ミデス、南門付近ニテ、強力ナ個体ヲ発見セリ』
『スグニ向カウ』
俺は地面を蹴って屋根に飛び上がる。
屋根瓦を踏み砕きながら、南門を目指す。
見えたな。
「御嬢様、いけません! こちらに!」
「いいえ、こいつらを全員――――」
「ゴ苦労ナ事ダ」
俺は屋根上から飛び降り、ハイブに包囲された二人の前に降り立つ。
変な奴だな、武装した男が背後で叫び、軽装の女が宝石で飾られた剣を構えている。
「誰ですか!?」
「名乗ルト思ウカ?」
俺は躊躇なく触手を突き出した。
「〈侵蝕堕落〉」
「い――――いゃああああ!?」
「御嬢様! 貴様!」
「黙レ」
俺は向かって来た男の首を掴み取った。
驚くほどあっさりと首が無くなった胴体は、勢いを失って崩れ落ち、首から噴き出した血が予告通りに水路を汚染していく。
「立テ」
俺は堕落させた女を立ち上がらせる。
周囲では、悲鳴と断末魔が響いているが、今さら俺の心に波風を立てるほどではない。
「名ヲ名乗レ」
「フィレーヌ・シオン・サントレスです、ベノムドミネーター様」
「ソウカ。デハ暫クココデ待機シロ」
「はい」
俺は城壁に背中を預け、暫く待つ。
ここで兵士を得る必要はもうない、奴らが狩りを終えればネットワークを通じて俺に伝えられるはずだ。
この姿なら、血の臭いも気にならない。
「やめてえええ!」
「がああああ!!」
「痛い、いたああ――――」
楽しい。
とても楽しい、無力だった俺が、生殺与奪の権を握っている。
そして目の前で、殺してはいけないと教育されて来た人間が、潰されている。
とても....愉しい。
↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。




