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クラスごと異世界転移した俺のハズレスキル『堕落』、実は最強の能力だった。すべてを奪われた俺は、ありえた自分となって復讐する  作者: 黴男
第二章:ハイブ拡大編

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087-困窮する魔王軍

これはハルキも忘れていたことだが、サバンに展開していたハイブ軍は秘かにケラスへと侵攻していた。

特に作戦の伝達がなかったため、ハイブ軍は堂々とケラスへと襲撃を行い、壊滅させた。

魔法による広範囲殲滅も、大波のように襲い掛かるハイブ軍に対しては機能せず、都市は蟲の波に飲み込まれた。

都市の住民はベノムドミネーターがいなかった事で、本来の被害者...ハイブ生物の生きた巣、苗床、小型の蟲の餌場と成り果てた。

ケラスの陥落はハイブの寄生した魔族兵士によって魔王城へと伝わり、そして...


「それでは、御前会議を開始しよう」


魔王軍の幹部が、一つの卓に集うこととなった。

この中にはパラノラスの管理者であるソラム・カーネインも参加していた。

前線の物資集積所でもあるパラノラスから招集を受け、グロス・ザクラスへと来たのだ。

「勇者軍」はケラスの侵攻に動いており、パラノラスも防備を固める必要があると。

ケラスが陥落したということは、必然的にアジラスは陥落したと見做され、使者の派遣は行われなかった。


「動かないと思われていた勇者軍がアジラスを足掛かりにしていた事実は驚異的なものだ、それに、アジラスに集められていた兵士が帰ってこない事を見るに、全て全滅したというのが私の見解だが...」


参謀役であるノレア・ベルククがそう言う。

だがすぐにランべが声を荒げて叫ぶ。


「あり得ん!」

「待て、ランべよ。あり得ない事が起きていないのであれば、この状況は何だ」

「奴等はアジラスを無視したか、アジラスは壊滅したが人間軍と未だ戦闘していると私は推測しています、魔王様」


魔王直々に諫められたというのに、ランべは平静を保てないでいた。

何せ、魔王軍の主力の五割弱がアジラスに投入されていたのである。

魔王の命令であるからして、魔王を糾弾したいがそんな事は出来ない。

それ故に歯噛みする他にないのだ。


「その推測の根拠は?」

「.......奴等の兵力では、あの規模の魔族をたった数日で殺すことなど出来ない筈。いくら勇者が強力だろうと、たった一兵たりとも逃さないなど、そんな事が可能でしょうか」


ノレアに詰められつつ、ランベは憶測に塗れた予測を口にする。

事実、有り得ない筈だった。


「魔王様、あなたも仰られたではありませんか。アジラスに兵を集め、要塞へと改築し勇者を押し留めよ、と。勇者軍は恐れをなし、アジラスを避けてケラスを攻め、我々の喉元に剣を突き付けたつもりになっているのでは?」

「ランベ殿」


その時、ベルメリアが発言を求めるように手を天に伸ばす。

ランベは渋々と言った様子で頷く。


「私の知る限り、アジラスを避けてケラスへと攻め込むルートはどれも行軍には向かないはずです、貧弱な人間の軍隊に耐えることができるとは思えませんが」

「だが、事実やつらはケラスへと到達した! 瞬間移動でもしたように!」

「瞬間移動か。勇者がそのようなスキルを持つと聞いたことがある」


ノレアが顎に手を当ててそんな事を言い始め、事態はさらに複雑になっていく。

だが、その時。

魔王の傍に控えていた側近のハルバ・サントレスが手を叩いた。


「憶測を重ね、過去を省みても今は仕方がない。ノレア殿、ランベ殿、ベルメリア殿。現状で連絡が取れる部隊だけでどうにかする手段を立案したまえ」

「.....はっ」

「承知いたしました」

「努力はしますが....」


それぞれの反応はバラバラだった。

当然である、全体の五割強しか残っていない魔王軍を、各都市の防備にあたらせ、それぞれの都市の侵攻の度合いを見て戦力を動かす。

書類上の処理はノレアが、実際に命令するのはランベであり、兵站を整えるのはベルメリアの職務だ。


「優秀な者を防備に回し、戦いに支障のある者を中央の防備に回すのはどうか」

「悪くはあるまい、しかしそれでは首都決戦時の問題が....」

「首都決戦時には都市から戻せば....」

「全体の一割程度は輜重兵ですよ、分かっているのでしょうね?」


たとえ御前であっても、会議は踊り、されど進まず。

私利私欲のためではなく、忠誠の為であってもそれは変わらない。

陽が落ちるまで、話し合いは続いていた。

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