086-パラノラス陥落
「随分な物言いだな」
俺は溜息を吐く。
分析結果が出た、奴は魔族でも人間でもなく、ましてや生物でもない。
ゴーレムみたいなものか?
まあ、いい。
「それなら――――〈堕落〉」
魔法で動くのならば、こっちの方が的確だろう。
俺は法衣を纏い、彼女の前に対面する。
「ゴーレムか、量産型だな?」
それぞれの姿になる事で、俺は「俺」の知識と知見により深く浸ることになる。
今の俺ならば、彼女が何で動く何の兵器なのかも理解できていた。
「排除します」
「出来るモノならな――――〈神雷〉」
天井に遮られていても、雷は一撃で目の前の人形を貫いた。
だが、耐えやがった。
そのまま、一瞬で俺の元へと突進して来た。
「〈神土〉!」
光り輝く岩を使い、ゴーレムの動きを止める。
その上で、ゴーレムにかけられた魔力干渉に対する防壁を解除しようと試みる。
「俺」なら一瞬で出来るんだが、俺は....常識が邪魔をする。
四つある防壁を二つまで解除した所で、ゴーレムが岩を吹き飛ばした。
「仕方ない! 〈神蝕堕落〉!」
「ギ......」
あとで解析して、それから量産すればいい事だ。
今は無傷で鹵獲する!
〈神蝕堕落〉は効果を発揮し、ゴーレムは紫色の光を放って停止した。
ダメだったか、術式は堕落したのが直感でわかるが.....強引に防壁を突破したので中身が壊れた。
「〈神焔〉! 〈神蝕堕落〉!」
俺は即座に視線をドームに移す。
炎でドームを切断し、防衛術式を汚染する。
「〈洗礼聖域〉」
ここからは見えないが、すぐに空に魔法陣が展開される筈だ。
防衛術式が反転している以上、ここの魔族に抵抗する手段は皆無だ。
「天は既に上にあり。何物もそれを望む事を阻めず――――〈神天転移〉」
俺は転移する。
ちなみにこいつは役に立たず、上の座標にしか転移できない。
『悪いが、俺の理論ではここまでしか実現できない。興味があれば、お前なりに調べてみろ、俺』
「俺」は俺にそう言った。
結局は、化け物も、魔術師も、傭兵隊長すらも。
俺が本来できる努力を突き詰めた結果に過ぎず、素質と努力が組み合わさった本物の天才には勝てないという訳だな....
「〈還魂〉」
俺は魔法を行使する。
その瞬間、俺の周囲に二十人ほどの魔族が現れた。
ただしその髪も肌も、全て白い。
瞳は全員が金色に光っている。
こいつらは全員、捨て駒の人間爆弾だ。
ハイブ状態で死んでも、この魔法の対象内らしいな。
「使徒たちよ、都市から逃げた者を追え」
「「「「「はい、教祖様」」」」」
死んだ奴の魂を回収して、「使徒」として復活させる。
そういう魔法だ。
試しに一人殺して蘇生させてみたが、完璧だ。
「死体」を経由すると「堕落」の状態はリセットされるようだ。
ハイブ化した奴が死に、その魂を俺が回収すると「使徒」として肉体を構成して蘇生させられる。
流石に使徒から魂を回収する事は出来ないようだが。
「これでこの都市も陥落だな」
円を描いて散っていく使徒二十体を見つつ、俺は下を俯瞰する。
「洗礼」の効果は行き渡り、ハイブは都市の攻略ではなく散った獲物の収穫に務めている。
沢山食べて大きくなりたい彼等にとっては、魔力を含んだ魔族はいいエサだろう。
「さて、俺は人気のアイドルだからな.....」
俺は都市を見下ろす。
「洗礼」の効果を受けた魔族たちが、「堕落」を求めて俺を探しているころだ。
人気には応えないとな。
俺は飛行の魔法を使い、下へと降りて行った。
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