085-『薄明』の目覚め
四日後。
俺はパラノラスの中に侵入していた。
捕らえられた人間のフリをして、既に堕落させた500人の兵士と共に街へ。
そして――――
「〈堕落〉」
牢の中で、俺は姿を変える。
断熱マントと防弾コートに身を包み、全身を高度に機械化した最後の「俺」――――すなわち、マイティ・ジェネラルへと。
傭兵集団「グレイラインPMC」を率い、世界の武力と富を支配した俺。
「ふんっ」
魔法で強化された牢を、俺はこじ開ける。
あの未来の俺は、魔法的な要素を一切持っていない。
単純な技術で、地球の人々が思い描く戦争の未来を体現した。
「な、何だお前!」
「.....」
俺は腰から銃を引き抜く。
とても手慣れたような感覚だ、俺はこれの扱い方を知っている。
抜いた瞬間に、緑色の「SAFE」と表示していた側面のインジケーターが黄色の「READY」に変わる。
容赦なく引き金を引く。
腕が自動で射線を補正し、弾丸が眼前の魔族の頭蓋を貫通する。
「成程」
俺は抜いたばかりの銃を見る。
対魔法弾というのはそういう事か、あの魔族は咄嗟に結界を張ったようだが、貫通した。
面白い。
『総員に告ぐ。これよりB作戦に移行する、全員装備を展開し、市街地に混乱を引き起こせ』
俺は牢屋の建物を強引に突破する。
ハンドガンでは制圧力が足りないが、ライフルがあった。
魔法の防壁を貫通する小銃というのは、魔族に覿面だな。
「ぐッ.....!?」
「どうした、もう終わりか? ならば――――こちらから行くぞ!」
俺は腰に吊った黒いナイフを引き抜く。
それはバターを切るように、俺に掴みかかった牛の魔族の腹を切り裂いた。
そのまま上へ向けて、唇まで斬り上げる。
間違って足に落としたら怖い切れ味だな。
「ぐぞぉ....だが! アデラ!」
「死ね、人間がぁ!」
視界に覆い被さる視覚インプラントのHUD。
そこに、背後に出現した何者かと、自動追尾のインジケーターが出る。
俺は迷いなく肘を背後に向けた。
こっちからは見えないが、肘の部分が展開され、そこからビーム砲が出てくる。
「ぎゃああっ!?」
卑怯なやり方だ。
だけど、一撃必殺なら便利だよな、これ。
「貴様......」
「どけ」
俺は牛の魔族を踏みつけ、外へと出る。
そして、両肩の装置を起動する。
赤色の強い光が俺の頭上に生成され、空に向けて飛んでいく。
これで、ハイブへの合図は終わった。
俺は光を緑に変え、上空に三回放つ。
こっちは都市の周囲に紛れているハイブ魔族への信号だ。
最大出力で自爆するように仕向けた。
直後に、光が見え、爆音が響いてくる。
これで周辺のすぐに向かえる距離にある砦は全滅だ。
「行くか」
攪乱はハイブとPMC社員に任せる。
目指すは地下の防衛術式だ。
「楽で助かるな」
この身体は強い。
人間の弱点をすべてカバーする事が出来る。
敵意や気配といった言い表す事の出来ない感覚を、視覚インプラントが表示してくれる。
攻撃されれば敵意が「見える」。
どこにいるのか、どうやって俺を狙うのか、予測射線となって全て見えた。
「そこか!」
俺はブレイカー・ランチャーを展開する。
何の事は無い、ロケットランチャーだ。
地下へと続く堅牢な扉を、たった一発で粉微塵にした俺は、地下へと侵入する。
道中、同じような扉が複数あったが....無意味だ。
「へえ.....まあ、概ね想像通りか」
そして俺は、最奥に辿り着く。
そこには、金属製の防護ドームと....守護者らしい魔族の女が一人立っていた。
だがここは他に入り口の無い場所だ、どういう存在だろうか?
話しかけようと思った時、彼女の口が開いた。
「――――ようこそ、侵略者」
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