084-パラノラス攻略作戦
次の目標はパラノラスとなった。
攻略手段に関しては、正面突破以外の路は無い。
リュドミラからの情報を信じるならば、あの都市は流通の拠点だ。
魔王軍本拠地に集められたあらゆる物資が、あの都市を経由して前線に届く。
何が言いたいかというと、防備が硬くて街道を通ってすぐに救援が来ることだ。
「次に来る追加の兵は、パラノラス攻略に備えて周辺の砦に移動させろ」
気付いたことだが、「堕落」させた人間を再度「堕落」させる事は出来ない。
だから、教団員を最後の「俺」の兵隊にする事は出来ない。
新たな人員が必要だ。
「分かりました、教祖様」
デインが頷く。
ここの権限を握るのはあくまでデインだ。
俺ではない。
「それから.....七海。今回は都市に残れ」
「えっ!? なんで!?」
「ここを守れ、既にサバンとイビロンにはハイブの主力が来ている。ここを守るために指揮官が必要だ」
魔王が急に天啓を得て、アジラスを失ったことに気付くかもしれない。
そうなれば、俺のいない都市が危なくなる。
教団員が負けるとも思わないが、少なくとも――――魔王たちはあの国の連中を追い詰めた存在だ。
何か備えがあるのかもしれない。
「小林を連れて行く」
「浮気!? 私で満足できなくなった?」
「......そういう意味じゃない」
関係は続いているが、今は関係ないだろ。
「ハイブの戦力の運搬には、小林が必要不可欠だ。黒田はここで屍兵の生産に努めて貰う。一時的にここに駐留させて、その後にパラノラスに回す」
屍兵は大型のものが多い。
人間サイズの多い俺の戦力の中では、射線を塞いだり雑に突っ込ませる事が出来る特殊な存在だ、戦車と似たようなものかもしれないな。
「はあ....いいよ、もう。お土産待ってるね」
「ああ」
俺がベノムドミネーターとして活動していないときは、表層の人格が強く出る。
だから、俺がベノムドミネーターとして活動するときは、リュドミラやデインも本来の性格で話ができるかもしれないな。
「毎回会議をしているけれど、意味はあるの?」
その時、小林が発言する。
それを聞いて、俺もそうだなと頭をかく。
「俺があまり賢くないからだな」
「冗談が過ぎるわ。あなたが賢くないのなら、私たちは何だというの?」
ハイブの記憶に影響されているな。
......少し、嫌な事を思った。
こいつらは結局、「俺」の配下で俺の配下ではない。
狡猾で非人間的な怪物のベノムドミネーター、神秘的で賢者として生きるドゥームロード。
その姿を俺に重ねて見ているだけなのだ。
それを虚しいとは思わない、俺は悪魔に魂を売った。
悪魔が俺自身だという事を除けば、当然の結末なのだ。
「賢い事と、馬鹿でない事は違う。そんな事も忘れたのか?」
「....そうね、私達の言葉が下等すぎて、理解に努力が要るだけよね」
小林は納得したらしい。
俺は誤魔化せたことに安堵して、席を立つ。
「教祖様、どこへ?」
「聖堂だ、神と話してくる」
いつもの言い訳.....これは「俺」が教えてくれたものだ。
「神」もまあ.....巨大な魔法コンピューターのようなもので、話をするというのはあながち間違っていないのかもしれないな?
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