078-次なる一手
さて、今後の方針を決めようと思う。
魔王国の領土は広大で、攻めるにしても都市の関係性を理解しないと難しい。
......これはリュドミラからの情報だが。
「という訳で、これが地図だ」
俺は地図を広げた。
飛行可能なハイブ生物を使い、ほとんど誤差なしで小林が作り上げたもので、俺には凄さがよく分からないが用兵上は便利な代物だという。
「やっぱり、最初はアジラスになるか?」
「はい、教祖様。サバンは正確には魔王国領土ではありませんので」
奪還したことは敵味方に伝わっている。
重要なのは、ここに勇者と人間の軍がいて、実質的にここが最前線である事だ。
人間はここから先に入れないので、魔王国で何か起きていても知る事が出来ない。
魔族はここから先に攻め入れないので、勇者が最高戦力と考える。
存在を公開している勇者は黒田と七海だけにしている、今回使える勇者の手駒は小林だけという訳だな。
いや、まあ......充分だが。
小林の〈無限巣窟〉の中ではすでに蟲の王国が誕生している。
階級まであり、当然俺....ベノムドミネーターが一番上だが、高い知能を持った独自の種が内部の秩序を保っている。
飯はどっかから湧いて来るらしい、羨ましい限りだが、多分人間が食えるものではないんだろうな。
「アジラスか.....どんなものだ?」
「教祖様が力をお示しになれば、一夜と持ちません」
「そういうものか」
いや、そういうものだな。
生物である以上は決して及ばないベノムドミネーターと同じく、ドゥームロードは魔法使いである以上は決して及ばない存在と呼べるはずだ。
魔法に関してドシロートの俺が七海らに魔法を教えられる程の魔法適正。
それをもってすれば、一人で都市を落とす事も可能なのかもしれない。
だが、それでは意味がない。
魔族には、人間との戦争を続けてもらう。
そのためには魔族に死んでもらっては困る、「俺」の力は強過ぎて、逆に殺し過ぎてしまう故に、蟲と教団員共に任せることにする。
あとは、俺は一人しかいない。
これは偽装なのだから、「堕落」を使える俺がわざわざ動く必要はない。
「アジラスの後は、パラノラスか...ここは俺が落とすから、お前たちはケラスを目指せ」
「はい」
アジラスを落としたら、勇者(に見せかけた教団軍)は真っ直ぐケラスへと向かう。
魔王の目はケラスに向けられて、俺たちは他の都市を落とす余裕ができる。
何せ勇者ってのは、真っ直ぐ飛んでくる核ミサイルと変わらないような扱いらしいからな。
番外勇者の俺には目もくれないはずだ。
「アルーン湖を経由すれば、グロス・ザクラスに直接侵入できます。パラノラスを落としたあと、我々がアノラスを陥落させれば、魔王城への道が確保できるかと。沿岸の村もこちらの地図にはあります、確保すれば湖へ入りやすくなるかと」
嬉々として魔王を殺す計画を口にするリュドミラ。
前を知らないので、こっちも気が楽だな。
まあ、王様なんて信仰してる奴らがまともなわけは無いか。
「確かに、「俺」を含めたハイブなら可能だな」
ベノムドミネーターは水中で長時間活動可能だし、ハイブ生物はそもそも呼吸の必要性がない。
体内の炉心でエネルギーを生成するから、呼吸のプロセス自体が不要なんだよな。
対する教団員は、神の魔法とやらで結界を張りつつ水中を移動すること自体は可能らしい。
信仰心に応じて使える魔法が増えるそうだが、「堕落」を受けた時点で信仰心は最大値だから関係ないな。
逆に〈洗礼聖域〉で信仰を得ただけの人間では神の魔法はまだ使えないというわけか。
俺? 俺は関係ないよ、何故なら深淵教団の神は「俺」が作ったものだ。
管理者にルールは適用されない、実に普通のことだな。
「よし、まずはアジラスからだ。そこからの情勢で考えて行こう。解散」
「はい」
「うん!」
俺は席を立つ。
もう復興が始まっているサバンを、少し歩いてみるのもいいだろう。
今のところは全て順調だ。
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