076-深淵教団の脅威
こうして、独断で街に入り込んだ勇者たちの八面六臂の大活躍によって魔族は敗走。
サバンは無事取り戻されたのであった.....
「という訳だな」
俺は七海に説明する。
スローマへの居残り組は居残ったわけではなく、戦功欲しさに前線に突撃し、魔族に占拠されていた都市を奪還した訳だ。
真実を確かめようにも、王家に確認を取るのに二週間はかかるだろう。
「魔族は敗走。死刑だけは嫌なのでどんな懲罰も受ける覚悟で帰国、そうだな? リュドミラ」
「はいっ」
俺は目の前の相手を見る。
驚くべきことに、サバンには魔王軍の幹部が駐在していた。
ベルメリア・アンディス.....兵站、つまり兵士の衣食住をカバーする役職の女幹部の一人娘、リュドミラ・アンディスが。
もれなく〈洗礼聖域〉と〈教化堕落〉の極悪コンボに引っかかって、今は生まれた頃から親と共に信仰に身を投じて来た宗教者となったが。
今では深淵教団の教えを捨てた(彼女の中ではそういう事になっている)親すら嫌っている筈だ。
まあ、魔族なんて人間じゃない奴らに同情はしない。
そもそもこいつらのせいで俺は糞みたいな目に遭ったのだからな。
精々使い潰す。
「都市長、これからの事で不明な点はあるか?」
「いいえ、全てお導きのままに」
俺の前で跪く太った男。
こいつが都市長...マット・セランらしい。
深淵教団の弱点で、俺の立場は一般人だから畏まるな、と言っても聞かないのだ。
まあ、そうかもしれないな。
明確にハイブの一部で、全員俺を親とする家族みたいなアボミネーション・ハイブとは単純に異なる。
人間社会に食い込んだ歪な構造が、深淵教団だからだ。
「勇者ども...いえ、武神様たちは四人でこの都市を奪還し、魔族を撃退したと表明すればよいのですね?」
「そうだ。中央からの干渉は出来るだけ時間を稼げ」
「はっ、仰せのままに」
これはまあ、「俺」の詭弁だが....
こいつらは俺を見ていない、正確には俺の背後で、俺が代弁している「神」であるアロースを見ているのだ。
「唯一なるもの」を指すという単語で呼ばれる、「俺」が作り出した魔法生物、人工の神。
非物質世界に設置されて魔法を展開するだの、よく分からない知識が頭に浮かぶが無視する。
恐ろしいのは、こいつらにアロースが偽物で俺が神だと言ってもハイハイ従う所だろう。
どんな教育をしてたんだ? 「俺」は.....
「潜伏した集団には連絡を取るな、配下が監視を続けている」
「はい」
教団員と化した駐留軍の中に、捕虜に偽装したハイブ兵が紛れている。
ネットワークを通して、七海たちには情報が伝わっているので、わざわざ目に見える形での連絡を取る必要はない。
俺は都市長の屋敷を出て、リュドミラと共に街を歩く。
この国にも神教があるはずだが、今では全員が同じ時間に礼拝をし、そして深淵教団が提供する哲学で自分を律している。
まあでも、献金しろだとか言わないだけましだと思うよ、俺は。
たまに協力して頂くだけで、基本は夜の礼拝一回だけだしな。
考えた奴の気心がよくわかる戒律だ。
「さて、家に戻るか」
俺は再び用意させた「家」へと戻るのだった。
グレードは段違いだけどな。
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