065-憎悪の具現
さて、落ち着いて堕とせる環境づくりはどうやら成功したらしい。
俺の周囲には動けないクラスメイト達....小林、西村、中島、上野、木下。
まずは小林からだ。
俺は小林の襟首を掴んで、そのついでに触手を皮膚を突き破る形で突き刺し、根を張った。
「き...っ.....」
こいつには因縁がある。
相談に乗ってくれる筈だったのに、あいつらがいる前で聞いてきやがった。
何も無かったと答えるしかなかった。
それ以上深入りもしてこなかった。
善人の顔をしたクズだ。
偽善者ぶった綺麗綺麗ちゃん。
反吐が出る。
「オ前ニ相応シイ末路ヲ与エテヤル」
こいつのスキルは、便利だ。
だからこそ。
「〈侵蝕堕落〉」
「ッ、ッ、ッ、ッ!!」
その苦しみは、俺には計り知れない。
少なくとも失禁し、涙を流すほどではあるようだ。
当たり前だ、俺は意図して堕落の方向性を変えた。
繁殖母胎のハイブとして作り替えたも同然だ。
触手を切り離せば、そこに立つのは虚ろな目の小林だ。
「次ダ」
だが小林に興味はなくなった。
次だ。
俺は西村に目を向ける。
いつもの余裕そうな表情はどこへやら、目が血走っている。
俺はその顔を踏みつけ、足から伸ばした触手で全身を突き刺した。
「〈侵蝕堕落〉」
「ッ、ぎぃ、おぉ、ッ、あぁ、ッ!!」
面白いくらいのうめき声が漏れる。
カエルが潰れた感じか?
こいつも見た目はたいして変わらない。
スキルがどうなっただろうか。
「次」
「ヒュッ!」
嗚咽のような音が、上野の口から漏れる。
そして同時に、俺は不思議な虚無感に襲われていた。
本来なら圧倒的な征服感を感じていたはずだ、一人の女性を俺の手でどうとでもできる状況。
いかに口では否定しても、本能は理性を凌駕する。
「〈侵蝕堕落〉」
「ッヒィ! ッィ!」
興ざめだ。
俺は適当に根を伸ばし、彼女を堕落させる。
次に、こちらを睨め付ける木下。
「〈侵蝕堕落〉」
「ッ、ぎゃああああああああああああーー! あーー! あー!」
毒の効果が切れかかっていたのか。
その口から、はっきりと耳障りな悲鳴が吐き出された。
数秒もしない内に彼女の声は止む。
当然だ、訓練された昔からのハイブ兵が俺の前で命令にない事をするはずが無い。
「忠義ヲ示セ」
『ハイ』
『ハイ』
『ハイ』
『ハイ』
四人がそこへ並ぶ。
壮観だ、かつて見下ろすようにしか俺を見なかった人間が、今度は俺を見上げている。
だが、達成感や征服感は無い。
あるのはただの虚無だけ。
「...ン? 一人足リナイナ」
白石が持って来た鑑定石で全員のスキルを確認していた俺は、中島がいない事に気付く。
「さっき這って逃げてったよ? 特に言及がないから、皆何も言わなかったけど...」
しまった、どうでもいいから見逃していた。
手間だな。
「追跡シロ! 絶対ニ逃スナ! 最悪ノ場合殺害シテモ構ワナイ」
何かあった事を明白にするため、一人くらい死んでても構わないしな。
リアリティは必要だ。
「サテ...」
俺は全員のスキルを確認する。
うん、よしよし。
小林は狙い通りになった、あいつの〈無限収納〉は変異し、〈無限巣窟〉へ。
これでどこでもハイブ生物を量産できるようになった。
他は後でもいいだろう。
「オ前達ハ外ニ戻リ、中島ヲ捕縛シロ。俺ハ奥ヲ目指ス」
白石を含め全員に撤退指示を出す。
ボスを倒したなら、この奥に脅威はいないだろう。
お宝に興味はないが、迷宮を維持しているモノに興味はあるな。
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