063-迷宮攻略RTA
圧倒的じゃないか、我が軍は。
何かのアニメの台詞だったか、そんな事を口走りたくなるほどに、ハイブ軍団は快進撃だった。
まず物量が違う。
訓練されたのでもなければ、基本的に魔物は違う種族で協力し合ったりはしないようだ。
人間への敵意だけが共通点で、人間がいると競い合いつつ襲うが、殺した後はどちらが人間の死体を辱めるかで殺し合う事もあるようだ。
ここまでの敵意は何なんだろうな。
「しかし、最低限だな...」
「前と違って数も少ないし、突破優先なんだと思う」
「だな」
まさに露払いといった感じで、前みたいな鏖殺ではなく進路の魔物だけを狩って進んでいる形跡があった。
その証拠に、広大な内部には多くの魔物が生き残っている。
今回もハイブ所属の魔物を増やすため、戦闘不能にしてから一箇所に集めて堕落させている。
流石にクラスの中でも優秀寄りの集まりだけはあるな、戦闘に無駄がない。
魔物の尾を踏まないように進み、どうしても倒さないと進めない場合に限って倒している。
おそらく迷宮の崩壊で一網打尽を狙っているのだろう。
アボミネーション・ハイブの拠点たる迷宮も、攻略されたので崩壊する運命にあった。
今は別の構造材で補強されているので崩れることは無い。
だが、詰めが甘いと俺は感じる。
「迷宮が崩壊するのはとてもゆっくりだ。その間に処理能力を超えた量が溢れ出すぞ」
「元を断てばそれでいい...学生らしい発想だよね」
「考えが足りないのは俺たちも同じだ、行くぞ」
俺たちにだって同じ事が言える。
ただ、俺には迷惑を被る誰かの個人的感情を目的より優先する価値を感じていないだけだ。
あいつらは誰かが迷惑を被った事を知ったら後悔する。
それだけの良心は持っているだろう。
「侵蝕堕落」
ベノムドミネーターへと姿を変えた俺は、集められた魔物の群れに向かって根を伸ばす。
魔物どもの悲鳴はしっかりと聞く、それが最低限俺が払える犠牲者への敬意だ。
ここの魔物は小型が多いな、前の迷宮と違って定期的な大型の間引きがあったからだろう。
小さい事はハイブ軍団においてはなんらディスアドバンテージになり得ない。
無論、大きな事もだ。
「アイツラハ、ドコマデ進ンデル?」
『現在五層ニテ戦闘中。意図的ニ疲労ヲ蓄積サセテイマス』
「ワカッタ。白石、今ハ四層ダナ?」
「うん、誰か偵察に出す?」
「アア。坂本」
坂本たちは迷宮攻略班だったが、冒険者を伴って途中で脱退している。
そして冒険者を殺して今まで潜伏し、二層で合流した。
「...う、うん。分かった、行キマス....ッウ、ギィ!」
坂本がスウェーバックの姿勢を取る。
そして、俺の目の前で腹を突き破って血に塗れた何かが飛び出してきた。
それは血を振り払いもせずに、すぐに飛び上がって先へと飛んでいく。
「行け」
「痛クハ無イノカ?」
「ハイ」
坂本のスキルは変質し、魔物や植物の製造に、自分の体も使えるようになった。
子宮を使うのは、一番面積が大きく体積の大きい魔物や肉体部品の製造に適しているからだそうだ。
ドン引きだが、化け物共の論理にしては酷く効率が悪い。
無から創り出す事も出来るが、ようするに人体を都合のいい即席工場にしてるんだろう。
無から創るより、性能はいいらしいしな。
「偵察ニ出シテイイモノナノカ?」
「飛行タイプデ、全体ノ四割マデナラ失ッテモ活動デキマス。魔力隠蔽ヲ行ウ事ガ出来マスノデ、偵察トネットワークニヨル情報共有ガ円滑ニ行エルカト思イマシタ」
「ソウカ、任セル」
あの坂本が、淡々と報告しているのを見ると新鮮だな。
どうしてハイブ声帯に切り替えたのかと思ったが、情報共有を経由するのに集中しているらしい。
ネットワークを通して、先の光景が俺にも分かる。
結構速いな、アイツ。
「次カラハ死骸ヲ素体ニシロ」
「ハイ」
俺だってまだ人間だ。
パニックホラーみたいな絵面は今回で充分だ。
「捕捉シマシタ。戦闘中ノ様デス」
「敵ノ数ハ?」
「ボス級ト思ワレマス」
「最終層ダッタカ、急グゾ」
俺は足に力を込めた。
あいつらになるべく早く追いつくぞ。
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