059-凍て付く大地
翌日。
ハルキは行動を開始する事にした。
迷宮に出ていた冒険者が大体戻ってきたのを確認したのもある。
「デハ、白石。頼ム」
「おっけー、〈氷河圏〉」
ハルキは薄寒さを感じる。
既にベノムドミネーターに堕落しているというのに、薄寒さを感じるというのだから、外に出ている人間にとっては相当の物だろう。
一瞬で外の空気は冷え切り、霜が降り始める。
「千葉、仕掛ケロ」
『ハイ』
千葉彩乃はハイブ化により〈胞子姫〉というスキルへと変化している。
彼女が息を吸い、吐けば大量の胞子が噴き出す。
〈氷河圏〉の効果により、生物は活動が低下させられているが、そんなものを全て無視して胞子はあらゆる場所へと入り込んで行く。
それもそのはずだ、彼女の胞子は普通の胞子とは違う。
極小の生体ドローンのような存在であり、微弱な判断能力をもってして、生物を探してあらゆる隙間に入り込む。
あっという間に街は、寒冷化と胞子がもたらす病に沈むことになる。
鼻腔や気道に張り付いた胞子が、粘膜へ向けて毒を放出する菌類を急速に繁殖させていくからだ。
「効いてないのもいるねー?」
「魔力ガナセル技カ」
体内に魔力を多く保有できるものは、寒さや病に対して強くなる。
それはハルキも織り込み済みのこと。
勇者チームも同様だ。
だが今回の場合、街を素早く制圧する事が目的である。
強者であろうと、〈堕落〉を前にすれば沈む。
少し強気の策であった。
「先ニ勇者ヲ抑エルゾ」
「うん、範囲を狭めるね」
範囲を狭めれば、威力はより強くなる。
『私ハ休眠ニ入リマス。コノ寒サデハ活動デキマセン』
「アア。ヨクヤッタ」
その寒さは、建物などもはや無意味である。
もし東京で発動すれば、地下深くにいようと暖房を効かせた完全断熱の部屋にいようと外にいるのと変わらない体感温度となる。
外は猛吹雪となり、晴天はあっという間に雲に覆われる。
「イタゾ、広場ダ」
「どうする? 援護が要る?」
「不要ダ」
広場で周囲を警戒するのは、残っていた杉浦だった。
ハルキは右腕を変形させる。
そこから露出した射出機を、彼は冷酷に彼へと向けて構えた。
「死ネ」
「...そこか!」
放たれた毒の弾。
しかし、それは杉浦へと着弾する前に、空中で爆散した。
「え、何?」
「奴ノスキルノ効果ダ、退ケ」
「わ、わかった! だけど、その前に...ごにょごにょ、〈氷人形〉、時間を稼ぐ!」
飛び出した複数の氷の人形が、一体ずつ砕かれていく。
「一体ズツノ破壊カ...続ケロ」
「え? あ、おっけー」
氷人形と共に、ハルキは屋根から直接杉浦の元へと跳躍する。
それと同時に、彼らが立っていた屋根が吹き飛んだ。
「頑張って!」
落ちていく白石に振り向きもせず、ハルキは広場へと飛び出した。
着地を狙うようにして足元が崩壊するが、そこに凝固毒を打ち込んで着地。
毒すら直ぐに氷が張り付いていく。
「お前...誰だ、魔王軍か?」
「マア、ソノヨウナモノダ」
杉浦が叫ぶ。
だがハルキ...いや、この場においてはベノムドミネーターである彼は不敵に笑う。
「留守を狙って仕掛けてくるなんて...絶対に許さねえ!」
「許サナイ? 誰ガ、誰ヲダ?」
直後、杉浦が手を翳し、問答は打ち切られた。
ベノムドミネーターは跳躍し、距離を詰めるべく杉浦へと肉薄する。
↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。




