006-圧倒的な実力差
一週間が経った。
俺たちは色々な事を知らされ、そして今後の方針についても聞かされた。
なんでもテレンはもうすぐ去り、騎士団長がやってくるというのだ。
ここは王都....つまり首都から大きく離れた、魔物の立ち入れない森だという。
魔物が何なのかは教えてもらえなかったが、今日初めて知る事の運びとなった。
「では、しっかりと付いてきてください」
「はい、皆、分かってるな?」
全員を仕切るのは、森下悠斗。
小林凛と並んで、クラスの秩序を守らんとする二人組だ。
〈無詠唱〉を持っていて、魔法をいきなり発動できたそうだ。
さて、今日はどういう理由があって森を抜けるかと言えば......
いきなり魔物を討伐するという宣告があったためだ。
テレンが魔法で守ってくれるそうだが、クラス内ではあまり歓迎! といった雰囲気ではなさそうだ。
俺たちは魔物を見たことも無いのだから、当然だ。
「鞄置いてきちゃったんだよね...」
「あー化粧水? 貸そっか?」
「風呂も入れないし、フケツじゃね?」
女子は大体後ろの方になりがちなので、俺は女子の会話を聞きながら進む。
陽キャ軍団と絡む勇気も無ければ、別に仲いいと思ってる奴もこっちが一方的にそう思っているだけの可能性もある。
「.....」
森を抜ける道は狭く細い。
早くも足が痛くなって来た。
学校用の革靴だからだ、足に合っていない。
「てかさー、佐藤ってキモくね?」
「!」
「やめなって、後ろにいるんだけど」
人の気持ちも知らずに、勝手に話題転換に俺を使う女。
名前も知らないが、嘲笑されているのは感じる。
こいつらの中には、俺をSNSに盗撮してアップロードし、問題になった生徒もいる。
元からリテラシーといったものが抜け落ちてるんだ。
「ここから先は魔物の領域です。私の魔法で保護いたしますので、暫し動かずに」
テレンは何かぶつぶつと呟き始める。
最後に手を掲げ、叫ぶ。
「――――〈マジックシールドオーラ〉」
直後、テレンを中心に光が広がって、光に当たった人間は泡のように光に包まれた。
俺もそうだったが、外はしっかりと見えている。
外から中が見えないだけのようだ。
「では、魔物をこれより誘き寄せます、対処を。出来なければ私が行います」
テレンが上に光を放つ。
数秒後、茂みの揺れる音が聞こえ、俺たちの前にそれは現れた。
何だろう、クマ?
いや、狼?
分からない、だけど、速い!?
『ゴアアアアアッ!!』
「ひ!」
「うっ!?」
普段余裕そうにしている奴らが息を呑んだり、悲鳴をあげたりするのは珍しかったが、俺もそんなことを楽しむ余裕はなかった。
殺される。
死ぬ、助けて、誰か。
そんな思いしか脳裏には浮かばなかった。
「俺が抑える! 今のうちにやれ!」
その時、化け物が空に浮き上がった。
悠真のスキルのようだ。
暴れる化け物に対して、
「雷よ、迸れ!」
稲妻が槍みたいに突き刺さる。
化け物は暴れ、苦しんでいるかのような声を上げた。
「〈雷帝〉」のスキルを持つ海翔が、スキルで雷を放ったようだ。
俺もあんなふうに分かりやすく強かったらな...
俺の〈堕落〉は全部が全部ちょっとだけ強くなるだけの能力のようで、俺自身の鍛錬の限界がスキルのおかげで少し上がるだけだという。
割に合わない。
「炎よ、焼き尽くせ!」
暴れる化け物を中心に火球が生まれて、その身体を焼いて行く。
火球が消える頃には、化け物は丸焦げになっていた。
死んだのか...?
「よっしゃ、俺たちの勝ちだな!」
「陽向! 俺がとどめ刺そうと思って!」
「わりわり」
喜ぶ彼等を前にして、俺はただ脱力して蹲っていた。
勝てない。
あんなの相手に、普通の兵士より弱い俺がどうやって勝つんだ?
最悪の想像だけが、脳内で回り続ける。
役に立たない俺が、優秀なあいつらと同じ待遇でいられ続けるわけもない。
また、突きつけられるのか。
......結局は、馬鹿馬鹿しく見えても輝いている人間こそが成功している人間で、日陰の人間が成功するという幻想は自分には当てはまらないという現実を。
↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。




