054-スローマ到着
道中の二つの村を支配したり、そこで周辺の村を聞いたりして、六日間の日程は矢の如く過ぎ去っていった。
少し、自分も羽目を外し過ぎたと思っている。
急ぎの用事があるから、小さな集落の支配などあとにすればよかった。
もしくは白石のスキルを使えば、もっとスムーズだっただろう。
「しかし、前回に比べると随分と楽だ」
「行商人と一緒に入って来たんだよね?」
「そうだ。今回も同じようなもんだけどな」
馬車の車列は、順番にスローマへと入っていく。
疑われる事は無い、何故ならこれは正式なもので、都市長が先に書状を発行している。
迷宮が近くにあり、何かと物入りなこの街への物資搬入と売却、魔物の素材を購入し復興に使う。
そういう目的なんだからな。
「こちらの都市長としても、この機会を逃す手はないはずだ」
ちょっと勉強したからわかる、産業の無い街にとって外から吹き抜ける風は重要な貿易風だ。
スローマの迷宮はそこまで大規模なものではないので、外との交流は意外と少ないのだ。
たまに魔物の素材を買い付けに商人が来る程度で。
「そっか、この中のものも....」
「ああ、娯楽の品が多いんじゃないか?」
この辺はこの世界を見てて思った事だ。
本は高いし、映像技術なんて当然ない。
暇を潰す事は出来ても、楽しむ文化は少ない。
そうなると酒や美食くらいしかなくなり、こうして珍味や酒が重宝されるようになるわけだ。
魔物に狙われやすい食料品や金属などは前の列にあり、後列は魔物はたいしてありがたがらないものが集まっている。
「じゃあ、俺たちはここで」
「ええ、道中は色々とありがとうございました」
俺たちの馬車が街に入って、門を抜けた時に俺は下りる。
身バレ防止の為に、まずはフードを深く被る。
そして、白石と共に街に出た。
「アテはあるの?」
「高い宿はあいつらと遭遇しやすくなるはずだ、勇者が安宿に泊まるわけないしな」
「なるほど?」
「とはいえ馬小屋は嫌だから、そこそこの宿を探すぞ」
迷宮で戦う職業はこの世界でも冒険者と呼ばれるようだし、紹介状を使って冒険者向けの宿に泊まるべきだろうな。
幸い、そういう宿はすぐに見つかった。
「ああん? あんた旅人だろ? 冒険者証を見せろよ」
門前払いされかけたが。
やっぱり、冒険者向けの値段であって余所者をその値段で泊める気はないらしい。
「あたし、勇者の一人なんだけどー....冒険者じゃなくてもよくない?」
「勇者!? まさか、あんたが.....いや、黒髪黒目....そうか」
どうするかなと悩んでいたが、白石が勝手に話を進めてくれた。
そうか、そういえばこいつも勇者だったな。
国にとってはお客様だから、いち宿屋が逆らえる相手ではないだろう。
「飯は元々ついてないから、そっちで飯屋を探してくれ。冒険者相手なんでな」
「助かる」
「部屋を用意するのに一時間貰うから、その間に飯でも食うんだな。これが宿札だ」
「ありがとう」
白石が黙ったので俺が話す事になったが、すっげえぶっきらぼうに接された。
美少女とブ男じゃ違うか、やっぱり。
一泊二人部屋銀貨5枚、高いんだか安いんだかよく分からないな。
「で、結局酒場か」
「ご飯だけのお店は高いしね」
「ああ、まあな....」
そして俺たちは、酒場で晩飯を食う事となった。
分かりやすくうわさ話をするヤツもいなかったので、情報は特に得られなかった。
――――勇者がまだ迷宮に行ってないという事くらいしか。
それでも、これは敢えて言おう。
この酒場には行く価値があったと(すいとんモドキが結構美味かった)。
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