050-おうちにかえろう
数日後。
....って、俺がシーアルーンに着いてから二週間も経ってしまった。
勇者パーティがどうなっているかは、口伝えでしか聞けないが.....どうも、王都へ向かう代表メンバーを選び、残りはここから少し離れた都市に滞在するようだ。
その都市の名は、メイフェザー。
王都とシーアルーンを結ぶ要衝らしい。
それだけに人の流れも多い。
王都にも近く、ハイブで占拠するにはあまりに危険すぎた。
だが。
「都合はいいな」
「はい、ええ。彼等はスローマへ向かうようですから」
勇者パーティの一部が、待機に納得しかねるといった様子で離脱し、メイフェザーからもシーアルーンからも距離の変わらない内地にある街、スローマへと向かったらしい。
何でもそこにも小規模な迷宮があり、それを資金源としているようだから、小遣い稼ぎかもしれないな。
「都市長」
俺は目の前の人物へ話しかける。
場所がどこだか言っていなかったな、ここは都市長の館。
北側の区画に位置する、政務の為の施設らしい。
当然全員ハイブに取り込んだので、俺が紛れ込んでも怪しまれる事は無い。
むしろ、都市長なんて超偉い人物と会話もできる。
「何かね、旅の方」
「スローマへ向かおうと思う、正式な書状を貰いたい」
「構わないが、用件は如何する?」
「どうせ復興のための素材の買い付けに行くのだろ? 俺も同行させてもらいたい」
「おお、そうかね.....一日待って欲しい、折り合いを付けよう」
俺も頷く。
ハイブ生物である都市長が一日かかると言うのなら、それは確実に一日はかかるという事だ。
時間稼ぎや、他に用事があるので一日待って欲しいという類の話ではない。
「白石、スローマにいる勇者チームに知り合いはいるか?」
「えっとね.....多分、あたしの知る限りだと....千尋と彩乃、遥香あたりは呼んだら来てくれると思うかな」
「来てくれるのか?」
「うん、あたしは別に、ボスが生きてたなんて一言も言って無いし」
成程。
俺は頷く。
それなら、スローマに着いた時点で三人は抑えられるな。
「お前を堕落させて良かったよ」
「いひひ」
白石は歯を見せて笑うが、目は笑っていない。
こいつは死体同然だ、ハイブの生物として生きて来た記憶を持っているだけの、別の存在だからだ。
だが罪の意識を感じる事はない。
「本当にこの力は便利だ」
俺は右の掌を顔の前に掲げ、途中で途切れた生命線を見た。
三つの力と、三つのやり方。
本当はもっと増やせるはずだが、イメージを固めるためにも今はこれでいい。
スローマの攻略条件は、こことは逆だ。
防衛戦力と比較して、一人しかいなかった白石はどうでも良かったが、あちらには勇者として召喚され、百人の兵士に匹敵するであろうクラスメイトが複数人いるはずだ。
つまりは、勇者を堕落させることが先決となる。
他の二つはまだ使わない。
自我を残さない、というのが、勢力としては弱い今重要な事だ。
「行こう、白石」
「...うん」
俺は館を出て、ある場所へと向かった。
どこかって?
俺の家だよ。
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