048-VS白石七海
「ソレハ、随分ト虫ノ良イ考エダ」
俺は吐き捨てるように呟き、白石の背後から彼女を狙って砲撃した。
ベノムドミネーターの毒は、接触させるだけが全てではない。
多少の変形は必要だが――――
「(やはり、避けられはするか)」
こうして、左腕を使って遠距離から攻撃する事も出来る。
射出装置のような感じだ。
原理は魔力をああしてこうして....だが、正直俺にもわからない。
先ほどぶっ放したのはベノムドミネーターの七つの毒のうちの一つ、腐蝕毒だ。
「あんたが、首謀者......? 殺して、やる.......!」
「ヤッテ見セロ、出来ル物ナラナ」
こんな彼女の姿、見たことがないな。
いや、そこまで知り合った仲でもないんだが。
俺は再び腕を変形させ、今度は右腕にも射出装置を露出させる。
連続で腐蝕毒を放つ。
とにかく動きを止めさせればこっちの勝ちだからな。
「〈氷結世界〉!」
だが、毒の液体は途中で氷に変わって地面に落ちる。
白石の能力か。
広がっていく氷と、身体に張り付く薄い氷。
ここまで離れていても、効果が及ぶのか。
「厄介ダナ」
片手を元の腕に戻して、クラウチングスタートの構えを取る。
そして、地面を蹴って一気に加速。
白石に真正面から迫る。
「――――今こそその力を示せ、アイスウォール!」
「ナッ!?」
俺は唐突に現れた壁に阻まれ、焦って壁を破壊するために腕を振るってしまう。
次の瞬間。
「〈氷結世界〉!」
「チッ」
視界が氷に包まれる。
.....詠唱待機ってやつか。
二人目の「俺」の知識にあった。
面倒だが、ここは一度下がろう。
俺は全身の氷を粉砕し、後ろへ下がる。
向こうも疲弊しきってるが、流石に死闘を潜り抜けた後って事か。
魔法の詠唱も、スキルの使い方も俺なんかより遥かに上手だ。
「ナラバ、コチラモ――――ヤリ方ハ、選バナイ」
遠距離からの毒の連射。
それに切り替える。
卑怯? 聞こえないな。
「あたしは....諦めない、諦めないっ!」
「何?」
当たらない。
というよりは、回避と氷魔法での防御を交互に行っている。
どうやってかは分からないが、魔力も回復させているのか?
いや、魔力を集めている?
「ヤハリ、興味深イ」
俺は呟く。
傷つけるのは惜しくなってきた。
無傷で堕とす。
「メリュジーヌ」
「シュルルルァ!!」
地面から飛び出してきたメリュジーヌの頭に、俺は乗る。
そしてそのまま地下へと潜った。
「――〈氷結世界〉!」
上から声が聞こえてくるが、土が邪魔してスキルの効果は届かない。
メリュジーヌは正確に彼女の背後を取り、一気に地上へ飛び出した。
「―――〈氷結世界〉!」
「見切った!」
俺は迷わず右腕を突き出した。
地面に突き刺さった凝固毒が、固まって壁を生み出す。
スキルの冷風が、俺の代わりに凝固毒を凍らせた。
「〈侵蝕堕落〉」
壁越しに、「根」を伸ばす。
砕け散った壁の向こうで、根が白石に届く。
「あっ、があ........!?」
崩れ落ちた白石が、苦しそうにしている。
そこで初めて、俺は罪悪感を感じた。
俺は....何をした?
「..............」
「いや、いやぁあああああああ!!」
白石が苦しんでいたのは、たった数秒だった。
どちらにせよ、もう助からない。
「忠義ヲ示セ」
「はい」
目の前で、目から自我の光を失った白石が頷いた。
俺は白石を、殺した。
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