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クラスごと異世界転移した俺のハズレスキル『堕落』、実は最強の能力だった。すべてを奪われた俺は、ありえた自分となって復讐する  作者: 黴男
第一章:シーアルーン陥落編

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042-都市防衛戦

かくして、都市防衛戦が開始された。

蟲の群れの一部が分離され、人間たちの軍の一角に攻撃を仕掛けてきたのである。

恐らくは強酸と思われる遠距離攻撃によって、数人が重傷を負ったことで軍は静観をやめて攻撃に転じることの運びとなった。

だが、攻勢に転じられるほどの打撃力は、人間側にはなかった。

なかったのだ。


「うわあああああ!」

「やめろ、やめ!」


前線はあっという間に崩壊した。

二百人程度の兵士では、素早く展開した重戦術型を抑えられなかった。

重戦術型は確かに動きは遅いが、耐久面と突破力に優れる。

盾を構えた歩兵程度で止めることはできず、魔物の群れに対して長く有効とされてきたファランクスはあっという間に無効化された。


「動ける者は退け! 立てぬ者は槍を構えろ! 生きたければ戦え!」

「はっ!」


前線を纏める指揮官は、その場から少しずつ後退して味方に指示を出し続けていた。

だが、ハイブ生物達が指揮官を狙わないはずがない。

そうしないのには理由がある。

敵を逃げ帰らせてはいけないからだ。

都市はなるべく空に近い状態にしておかなければならず、ここ...だいぶ本陣から離れた地点で兵士を縫い付ける。

人間が仲間を決して見捨てないことを知った上での、悪意たっぷりの動きである。


「くそったれ...! 見てろ、勇者様がお前達を!」


目の前で踏み潰された仲間を偲びながら、槍を捨てた兵士が退いていく。

毛虫に似た蟲は、それを冷徹に見ていた。

その頭の中では、分析した人間の言葉から情報を収集し、ハイブの主人が言う「勇者」と合致する単語を発見したこと。

それらの情報をネットワークに共有するべきだということなど、複数のことを考えていた。


「魔法が来るぞー!」

「伏せろ!」


その時。

聞こえた言葉に、ハイブ蟲は防御姿勢を取る。

そこに降り注いだ氷の雨が、ハイブ蟲たちを襲った。

魔法である。

こんな晴天の日に霰が、しかも殺傷力のある形状と速度で降り注ぐなどということはあり得ない。

蟲達は術者を探す。

そして、発見した。

後続の兵士たちの中に紛れた、黒髪の少女の姿を。


『前衛ニ提案。優先攻撃対象ヲ設定』


強酸による遠距離攻撃に切り替える、そう提案した蟲。

すぐに受け入れられ、その殆どが射出器官を少女へと向けた。

連携と共に放たれた酸の弾は、しかし少女の前で凍結して、自重で少し手前に落ちる。


『警戒、警戒。撤退ヲ提案』

『受諾、全隊ハ後退、軽戦型ハ重戦術型ノ撤退ヲ支援セヨ』


命令通りに逃げ腰になるハイブ達だが、その時別の隊が左右から撤退中の前面を覆った。


『我等、メリジューヌ個体ノ指揮下ニアリ』

『陽動ヲ引キ継グ、撤退ヲ継続セヨ』


それらは、この周辺に集まっていた魔物がベースとなっているハイブ生物であった。

陽動とハルキの指示に矛盾が生じることに気づいたメリジューヌが独断で投下したのだ。

それらは死を恐れる事なく、次々と人間軍へと突撃していく。

統率されていない動きを装い、本隊を逃し、かつ人間の軍をここへ食い止める役割を担う。

その勢いに恐れをなし、人間側も次々と戦力を街側から呼び寄せていた。


『本隊ハ次ノ指示ヲ待テ』


どこかの地下深くから、女性のような声色を帯びた意思が響き渡る。

本隊はそのまま撤収し、メリジューヌ指揮下のハイブ軍は全員で、この場所で数十年繰り広げられた大攻勢を再現するかのように突撃していった。


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