036-再会
そして更に数日後。
馬車は、シーアルーンへと到着した。
「都市というから、もっと行列かと思ったんだが...」
「西門は人気がないですからねえ、ただでさえ魔物の襲撃も多いでしょう」
「敵の侵入を許してるがな」
「ですねえ、ハハハハ」
笑い合いながら、馬車は門へと近づいていく。
交易商の身分証は本物だし、俺は一番近い村の村長に紹介状を認めて貰っている。
都市への進入はあっさりと許可され、馬車は開いた城門の中へと入っていった。
「旅の方は、この後は?」
「餞別も貰ったからな、この後は一人で行動するさ」
村人達から蓄えの一部と、商人から宿への紹介状を貰っている。
当分は泊まれるはずだ。
俺は馬車を飛び降りて、財布を懐のポケットに仕舞った。
馬車は街の中へと消えていく。
「また会おう」
「ええ!」
さて。
これから、どうするか。
宿に泊まるのはそうだが、俺はこの都市で何をすればいいのか。
それを決めてなかったな。
いや、情報収集が先か。
「うーむ...」
それにしても人通りが少ないな。
時間帯は昼頃で、もっと多くの人間がいても良いはずだが。
適当にぶらついてトラブルに巻き込まれるのもアレだ、宿に移動しよう。
生活が立ち行かなくなる程の資金は貰っていないから、安宿に毛が生えた程度の宿だが、それでも馬車の中や野晒しよりはマシだ。
「(外周部には人が居ないだけか)」
俺は少し進んで、人の気配が急に増したことに驚く。
門の周辺に人が居ないだけで、少し進めば普通に人が行き交っていた。
もう夕方も近い。
東門の方を見れば、煮炊きのものらしい煙がいくつも上がっていた。
紹介された宿は中央広場の東側の高台にあるそうなので、そっちを目指して進む。
途中、何度か客引きに遭ったが断ることができた。
風呂なんて上等なものはないが、俺は水浴びも苦手だったので、こんな格好でも引ける客として見られていることに驚きだ。
「(中央広場ってのはここか)」
俺は街の中心部に位置する場所へと出た。
あちこちで色々な人が会話しているが、割と好き勝手に路上に何かを広げていた人間が多い中、この広場だけはそういう人間は一切居なかった。
多分、禁止されているか何かなんだろう。
式典に使う気満々って感じの広場だしな。
さて、宿はどっちか...
「あんた...!?」
その時。
聞き覚えのある声がして、俺は振り返った。
広場の北側の入り口、そこに声の主が立っていた。
「...っ」
「佐藤、何で生きて...!」
その言い方はねえだろ。
そう思ったが、ともかく見つかってしまったらしい。
確か...白石といったか。
クラスメイトを見た事で、抑えた、消費したと思った怒りと憎しみが胸の内から噴き出すようにして意識を塗り潰す。
俺は誤魔化すように口端を持ち上げて、笑みを浮かべた。
「...何とか生きててさ」
「ちょっと」
白石は猛然とこっちに歩いてきて、俺の手を掴んだ。
その目が俺の事を見据える。
「話が聞きたいから、付き合って」
「...はい」
有無を言わさない雰囲気に、俺は渋々とその後を追った。
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