034-感染拡大
翌日。
俺は揺れる馬車にいた。
もう流石に野外で寝るのにも慣れて、身体に不調をきたす事も無くなった。
寝てていいと言われたが、村に立ち寄る関係上起きていないとまずい。
道中の村も支配下に置く。
これはなぜかと言うと、この辺の村が水源にしている水脈が、シーアルーンのそばを流れる大きな川を源流とするからだ。
そしてそれは迷宮にもつながっている。
なぜ調べる事が出来たかと言えば、前の村に滞在しているときに、小魚を堕落させてハイブ化したからだ。
ハイブ生物と化した小魚は、何時間も流れに逆らい泳ぎ続けられる。
その結果、大きな川へと出たのだ。
村人に聞けばここらに大きな川といえばそこしかないとの事だった。
何が言いたいかと言えば、水脈を伝う形で侵攻の為の「道」を確保できるという事だ。
井戸に水を供給できるくらい太い水源なので、それが可能だとメリュジーヌが教えてくれた。
「旅の方は、なんで旅をするんですかい? うちらに任せておけばいいでしょうに」
「.......まあな」
ただ、勇者チームの実力がわからない。
俺はずっと最下層だったから、前線の戦いなど見ていないし、俺が一番弱かったのだから、俺の視点など基準にならない。
あの時俺の中にいた願望の中の俺たち。
彼等は皆強かったし、俺もその力を振るう事が出来る。
蟲共が負けた時は、俺の出番だ。
「もうすぐ村でさぁ」
「そうか」
今の声は目の前の人物ではなく、御者台から聞こえた。
俺は揺れの中で立ち上がり、馬車の外へと通じる入り口の側へ座った。
「本当になさるんで?」
「ああ」
「雇っとるやつに命じてくだされば、一人も逃しません」
「そうしてくれ」
そうこうしているうちに、馬車は村へと入っていく。
交易商はどこでも歓迎を受ける存在だからか、馬車の周囲には人が集まっている。
「〈堕落〉」
俺はベノムドミネーターへと堕落し、即座に馬車を起点に発動する。
「〈侵蝕堕落〉」
回避は出来ない。
たった一瞬で苦悶の叫びが上がる。
「包囲シマス』
「任セル」
奥から飛び出してきたやつが、斥候型と一緒に飛び出していく。
俺も外に出て、堕落したての奴らに命令を下す。
「マダ仲間ニナッテイナイ人間ヲ捕縛セヨ」
『『『ハイ』』』
即座に散っていく人間達。
俺は広場で待っていると、すぐに人間が運ばれて来る。
「なんだお前! 皆を戻せ!」
「悪イガ、〈侵蝕堕落〉」
「ぎゃああああああ!」
一人一人、堕落させていく。
即戦力を生み出せるのが最大の長所だな。
さっきまで追われる側だった者が、追う側になる。
中には遊ぶ奴も居て、逃れた人間が俺に襲いかかってくる。
「死ね、化け物!」
「死ネレバ良カッタノダガ...〈侵蝕堕落〉」
あの時蟲に喰われていれば、少なくともこの世界とアイツらにとっては...災難では無かっただろうな。
だからこそ、今生きている俺は何も躊躇しないぞ。
俺の体に突き刺さった槍は先端から折れて、逆に伸びた触手が相手を貫き侵蝕する。
「終わりか」
『終了デス』
そして、村は完全に支配下に入った。
今日は昼間の来訪だったのでこうするしか無かったが、やってみて感じたのは浅慮だったなという感想だけだった。
やはり夜襲が一番だ、逃げの手を封じやすい。
「これで手勢は500といったところか」
俺は村の端で呟く。
ただし、人間だけだ。
魔物の方は凄まじい速度で繁殖しているが、まだ遅い。
母体型とされるハイブ生物が、まだ生まれていないからだ。
母体型は本拠地である迷宮跡から動かずに個体を量産する器官だ。
「...いや、そうでもないのか」
侵蝕堕落にも方向性がありそうな事が、何度か使ううちに分かっていた。
軽戦型と重戦術型、斥候型ばかり生産しているのは俺がそれを自覚していなかったからだろう。
母体型は雌雄関係なく作れるらしいから、次に余裕があれば意識してみよう。
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