003-ゴミスキル
検査が始まった。
まず、最初の三人。
青木悠真、浅倉美月、天野颯。
三人が得たのは、
〈重力支配〉、〈聖域展開〉、〈瞬間加速〉。
重力を自由に操作、結界で敵を退けつつ味方を強化、一瞬だけ超加速(重ね掛け可能)といったチート揃いだった。
何だよそれ、空に浮くとか反則だろ。
「〈万能治癒〉....すごい、私、誰でも何でも治せるんだって!」
「やったね」
その後も、チートスキルの羅列が続く。
〈未来視〉に〈鋼身化〉、そして〈万能治癒〉だ。
数秒の先を読む能力に、自分の体が金属になるスキル、欠損だろうが精神の病気だろうが治せる?
もう何でもいいじゃないか。
俺が何の能力を獲得したとして、注目を浴びるのは無理だ。
「オイ、俺〈勇者〉だってよ!」
「おお、勇者様が勇者のスキルを....何と素晴らしい....」
そして、内田湊....俺をイジメていた一人が、勇者のスキルを得ていたのを見た。
くそっ、この世は全然平等じゃない。
それでも、唯一仲がマシな大西が〈武器創造〉なるスキルを得ていたので嬉しくはあった。
俺もああいう、ちょっと便利なくらいのスキルがあれば.....
「君、前へ」
「あ、ハイ」
俺の番になった。
それまで今か今かと待ち望んでいた皆が、一斉に視線を逸らすのが見ていなくても分かった。
誰も俺に興味がないので、俺が何を得ようと関係ないんだろう。
「手をかざしてください、そう、ゆっくりと」
俺は水晶に手をかざす。
すると、手から何かが出て、それが水晶に吸い込まれた。
「――――ッ」
「取り乱さないでください、すぐに分かります」
水晶から何かが噴き出して、それが俺を僅かに覆う。
その瞬間、俺は自分の得たスキルを理解した。
〈堕落〉
自身を闇の力で堕落させ、暫くの間少しだけ強くなる。
「.....は?」
それだけ?
頭が真っ白になる。
困惑を表に出してはいけない、またイジられる。
「.....すみません、何でもありませんでした」
「そうですか....まあ、そういう事もあります」
毒にも薬にもならない言葉を背に受けて、俺は神殿の暗がりに身を隠す。
何度確認しても、結果は変わらない。
俺のスキルは、単なる自己強化...
「少しだけ」って何だよ?
それでも、〈武器創造〉なんかと組み合わせれば全然死なないスキルではあった。
それでも.....
それでも............
「俺様は〈雷帝〉だ!」
「かっこ悪」
「何だと!」
「あたしの方がかっこいいけど? 〈絶対防壁〉? だって」
あいつらが。
俺がいじめられていても知りもせず、のうのうと勢力圏を作り上げて人生を謳歌するあいつらだけが、
どうして。
「私のスキル、〈天使降臨〉みたい、イケメンかな?」
「使ってみればいいんじゃね?」
「あっ、イケメンだ!」
どうして、俺のスキルはあんな風に。
分かりやすく強くないんだ?
クラス全員の検査が終わって、分かった。
俺のスキルは、この中で一番地味だ。
きっと、イジられなかっただけ幸運なんだろうな。
恥晒しもいい所だから。
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