024-『侵蝕』の目覚め
気が付くと俺は、暗い場所に立っていた。
ここは.........?
『実ニ、馬鹿ダ』
その時、声が響く。
俺がそっちを見ると、そこには化け物が立っていた。
概ね人型、だけど化け物だ。
「ば....化け物.....」
『オイオイ、酷イ言イ草ダナ――――オ前自身ニ』
「俺.........?」
俺はそいつの目を見た。
そいつは俺を見つめ返してきた。
どういうことだ?
俺は、この化け物と同じだって言うのか?
『確カニ。オ前ハ、人間ダ。――――オ前ノ世界ニ於イテ、ハ』
「俺の世界?」
困惑する俺に、別の声がまた響き渡る。
『世界とは、同じ世界がいくつにも連なってできている。「こんな世界があったらいいな」というものは、大抵は想像した時点で観測したことになり、実在するようになる。観測する手段がないというだけでな』
そちらを向いた俺は、そこに立つ男を見た。
俺よりも数倍はタッパがあり、全身を武装で包んでいる。
こいつも「俺」だって言うのか?
『その通り。そっちの化け物は、「アボミネーション・ハイブ」を率いる別の世界線のお前だ』
『コッチハ、「グレイラインPMC」ヲ率イル傭兵ノオ前ダ』
どういうことだ?
何で俺が、その「俺」達と会話しているんだ?
「俺たちは、「お前」でしかない故にな。本当に別世界のお前だと思ったか? 違う、俺たちはお前の願望の中にある存在だ」
背後から聞こえた声に、俺は振り向く。
そこに立っていたのは、黒い衣装に身を包む「俺」だった。
比較的わかりやすい。
『俺もまたお前、深淵教団を率い、世界を支配したお前の願望だ』
「何をさせたい.....?」
『知れたことよ。〈堕落〉の真の使い方とは、お前の願望そのものの転写だと、教えに来ただけだ』
『さあ、どうする? この状況でお前に最も合った「お前」は誰だ?』
『オマエノ願望ハ、アノヨウナ弱ッチイ姿ナノカ?』
口々に問いかけられる。
俺は.........そうか。
俺は、自分を全く愛していなかったし、自分に全く期待していなかった。
その結果が、あの姿なのか。
俺が夢想する限り、俺はここにいる「俺たち」になる事が出来たというのに。
「その力、貰うぞ――――「アボミネーション・ハイブ」」
『フフ、良イゾ』
俺は「別の自分」を受け入れる。
そう決めた瞬間、意識は現実へと戻って行く。
既に下半身の感覚がない、食われたか。
「――――〈堕落〉!」
今度は生き永らえるためではない。
生きるために〈堕落〉を使う。
「う、あ、アア、アアアアアア―――』
全身が変わっていく。
そして、同時に知識が流れ込んでくる。
俺が願って、存在した、同じ時間軸の別の世界。
そこは、楽園だった。
俺と、俺の支配した生物達の楽園。
『―――〈侵蝕堕落〉』
吐き出すように言った。
途端、全身から何かが伸びるような感覚があった。
俺に齧りついていた虫共が、一斉に動きを止める。
....違う。
こいつらは単なる端末でしかない、本体がいる。
そしてその本体は――――俺を捕まえているこれだ。
それに向かって俺は侵蝕の「根」を伸ばしていく。
激しく抵抗され、俺は振りほどかれようとするが、もう無駄だ。
一度伸ばした根はもうお前を支配するまで止まらない。
ただ....
ちょっと、疲れた、な――――
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