022-栄光の帰還
数分後。
勇者チームは勝利に湧いていた。
もっとも、初の死者を出したことで、士気は確かに低かったが.....
「はあ~やっと死んでくれた」
「キモかったし....ユイっちに手ェ出そうとした罰だよ」
ユイっちとは、藤原結衣の事である。
ともかく、勝手にたまっていったヘイトの解消により、人を一人見殺しにしたという結果は軽視されていた。
そして、集団心理。
赤信号みんなで渡れば怖くない。
殺人も連帯責任で一人一人の罪は軽微。
何なら、「もっと早くこうすればよかった」と思う人間までいた。
「何故橋を落としたのだ?」
「勝ったからいいじゃないですか、それに青木がいれば、俺たちは全員向こう側に渡れる」
「........」
内田の言葉に、剣呑な様子だったイォルドは黙り込む。
正規の手段で始末せず、後で秘密裏に消そうと思っていたために手間は省けたが、王への説明責任がある。
それに、
「何故説明もなくそうした? アオキ殿はサトウを何故助けなかった?」
「そんな暇がなかったからです」
「間に合わなかったので」
内田と青木は口々にそう言った。
この場合、罪を認める事よりもクラス内で「ヤバイ奴」だと思われることを避けたのである。
全ては偶然起きたこと、意思疎通の問題が起きただけ。
そういう事にした。
「では、これより移動を開始する。アオキ殿、頼む」
「任せてくださいよ」
数分後。
全員が荷物と共に対岸へ移動し、第七層へと続く道の前へと移動した。
まるで荷物持ちなどいなかったように皆が荷物を分担して持ち、そして失った人間などいなかったのように意気揚々と準備を整えた。
小林や森下のような人間は、損失を出したことに責任を感じてはいたものの、それを表に出す事はしなかった。
コミュニティの和を乱さぬため。
そんなくだらない秩序主義を貫き通したのである。
「これが終わったらいよいよ冒険の始まりか」
「楽しみだな」
ボスらしき魔物は斃れた。
であれば、この先にはもう困難は無い。
それが分かった途端、士気は一気に向上した。
誰も、ついさっき落ちて行った誰かの事など気にしなくなった。
イォルドも、騎士たちも、そしてクラスメイトの誰一人として。
クラスの輪の中に居なかった大西でさえ、
「(またあとで考えればいい)」
そう判断した。
当然の事だ、彼はこの場にいる誰とも関わろうとせず、関わろうとした者たちの差し伸べた手を突っぱねた。
そこにどんな理由があろうと、馬鹿が一人で死んだ。
客観的には、そう見えるのだ。
「慎重にだぞ、慎重に」
「ああ、俺が先に降りる」
階段は崩れてしまったので、勇者チームは協力して縦穴を降りて行く。
元はと言えば勝手に先行した組のせいなのだが、それを咎めるものは誰一人いない。
それどころか、戦いの際に形成された「佐藤責」とでも呼べるような精神安定剤が作用しているために、誰もそのことについて突っ込めていなかった。
「(うむ、概ね悪くないチームワークだ)」
イォルドも結果に満足していた。
不穏分子は消えたが、それによって崩壊することなく突き進む彼ら。
口裏を合わせれば、そんな者は最初から居なかったことに出来る。
であれば、死んだ者よりこれからの者たちを指導していくのが自分の役目であると、彼は判断していた。
彼等は第七層へと降り、第六層には不気味なほどの静寂が戻った。
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