018-第六層
第六層はこれまでの層とは打って変わった様子だった。
降りて行った先は、周囲を断崖絶壁に囲まれた岩場があり、俺たちはそこで一度点呼を取らされた。
「ここ、第六層は未知の領域である! しかし、第七層にはこの迷宮の支配者か、それに類する存在がいるという! 目的地は近い! 心して進め!」
何の指標にもならないイォルドの言葉が、不安がっている皆を元気づけたらしい。
とはいえ、嫌な場所だ。
底の見えない暗闇が下に広がっていて、移動手段は恐らく木製の吊り橋だけだ。
「おらおら~!」
「揺らすな!」
前で遊んでいるバカども。
だが、仮に落ちても、青木がスキルで助けてくれるつもりなんだろう。
命が惜しい組はとっくに渡り切っているからな。
俺もバカどもが飽きて先に行くのを待ってから、荷物を抱えて渡る。
ついにあいつらも飽きたらしい、ここ最近は何も言われなくなった。
俺の存在は空気と化した。
虚しい?
いいや、嬉しい限りだ。
重い荷物を抱えてこんな場所でイジられるより、誰も俺の事を気にしてくれない方がよっぽどマシというものだ。
「くそ! こいつ!」
前ではまた、あいつらが戦っている。
橋を渡るのを狙ったかのように、蝙蝠の魔物が襲って来たらしい。
蝙蝠、軽そうに見えて普通に重いから襲われたら助からないだろうな。
一人でも死なねえかなと思いつつ、片付くのを待つ。
待っているうちに、死んだら悲しいふりをしないと殴られるからやっぱり生きて欲しいと思い始める。
「――――氷結!」
その時。
鋭い音と共に、蝙蝠どもが凍り付いて落ちていく。
誰がやったんだ?
そう思ったが、聞いたことのある声ですぐに分かった。
あの白石とかいう娘だ。
あいつも強い組だったのか。
そりゃ、そうだよな。
自分の身を守るのに全力の女子組の中で、あんなに余裕があるのは身を守る力があるからだ。
俺なんかに手を差し伸べる余裕があるのには、きちんと理由があったようだ。
「雷帝!」
「光よ!」
〈雷帝〉と〈元素魔導〉による魔法攻撃で、残りもまとめて撃ち落とされる。
向かうところ敵なしだな。
安心して渡れるらしいので、それはよかった。
イォルド達はとっとと先に行ってしまっているので、俺は安心して腰掛けて休むことが出来ていた。
全員が渡り終わるのを待ってから、荷物を抱えて渡る。
流石に両手が塞がったままなのは危ないと感じて、片方ずつ荷物を置いて渡る。
何でこんな事をしてるんだろうな。
何でこんな苦労を俺がしなきゃいけないんだろうな。
全ては捨てられないためだ。
それも全部、俺のスキルが無能だから。
いや、違う。
努力しなかった俺が悪いんだ。
色んな思いを抱えて、俺はいくつかの吊り橋を渡った。
そして、
「あれが七層の入り口か?」
「でけえ吊り橋だな」
「やっと帰れる.....」
いよいよ、第七層への入り口の前へとたどり着いた。
特に大きな岩場があり、その奥に岩棚へと続く大きな吊り橋があった。
あれは簡単には落ちそうにないな。
俺はこの後の身の振り方を考えないといけないので、それどころではなかったのだが、
「諸君。この先にいる敵の強さが分からない。疲弊している以上は、ここで野営を行う!」
イォルドがそう言ったため、考える時間は少しだけ増えた。
不満は当然多かったが、それを森下と小林が抑えたため、野営はそのまま行われた。
イォルドの判断は正しいと俺は思う。
どのくらいの強さの敵なのか分からない以上、全滅されると俺が困る。
万全の状態で挑むべきだ。
そんな事を思いつつ、俺は天幕を張った。
↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。




