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クラスごと異世界転移した俺のハズレスキル『堕落』、実は最強の能力だった。すべてを奪われた俺は、ありえた自分となって復讐する  作者: 黴男
序章

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017-差し伸べられた手

キツい。

いや、女子共のネチネチ暴言に耐えかねたわけではない。

単純に荷物が重い。

場所は第五層、複雑に入り組んだ道が特徴で、あいつらはさっさと行ってしまった。

後に残るは死骸の山。

それはいいんだが、進軍が速すぎて追いつこうとしているうちに無駄な体力を使ってしまった。

後続用に目印は置いてあったので、それを頼りに進む。

とはいえ疲れた。

荷物を下ろしたくなったが、もし後ろから魔物が追って来ていたら俺は殺されるしかない。


「はぁ....クソ」


誰もいないのをいいことに悪態を吐くと、溜飲が下がった気がした。

スキルってのは、無償なんだろうか。

こんなにずっと展開していて、無駄に疲弊したりもしないのは何か変だ。

逃避の為にどうでもいい事を考えていた俺だったが、遠くから響いてきた足音に顔を上げる。

この足音は....人間のものか? それとも魔物?

分からない。

俺は警戒するが、近さからもう間に合わない。

最悪、身体に大穴が開いても意識さえ失わなければ堕落スキルで何とか立て直せるかもしれない。

そんな事を考えながら。


「あ、いた」

「......?」


顔を出したのは、人間だった。

名前が思い出せないな、誰だ?


「何の用だよ」

「荷物をちょっと持ってあげようと思ったんだけど?」

「.....ありがとうございます」


どうせ揶揄ってるんだろうと思ったが、それならここまで本隊と離れて移動する理由がない。

俺は軽い荷物を床に置く。

彼女はそれを軽々と持ち上げて、肩に担いだ。

自分の荷物も持っているのに、女子ってのはこんなに力持ちなのか。


「なんだ、普通にお喋りできるんじゃん」

「........」

「あたしは白石。呼び方に困ってるなら、そう呼んで」


俺は自分から話しかけるのが苦手だ。

反対に話しかけられると、話せたことが嬉しくて饒舌になる。

それをネタに揶揄われるのが嫌になって、誰とも話さなくなった。

だから俺は何も話さず、白石が一方的に話す事を聞きながら進んだ。


「最後尾の手前でまた預けるから」

「..........」

「ホントは助けてあげたいんだけど、上野さんや岡本さんに見つかると後が怖いから」

「...........」

「ねえ、教えてよ。喋るのが苦手なの?」

「..........」

「普段全然喋んないから、気になってただけ」

「.....」


本当は嬉しかった。

あんなカス共の中にも、そう言う考えで来てくれた人が居たことが。

久々に好意的に見られたことが。

話し相手がいることが。

だが、恥ずかしい事に、俺のトラウマが、俺に刻み付けられた恐怖が、俺の口を閉ざしたまま開かせなかった。

「このまま開かなければ楽なままでいられる」そんな安易な考えにとらわれて。


「ごめん、この辺で」

「....ありがとうございます」


壊れたロボットのように、最初に言った言葉を同じトーンで繰り返す俺。

俺の口は不快な音を吐き出す装置でしかなく、周囲を不快にさせる。

だから開かない方がよかった。

でもそれを後悔したのは、後にも先にもこれが一回だけだろう。

彼女は騒音の響く方へと去って行った。

俺は荷物を拾って、持ち上げる。

もうすぐ第六層だな。


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