016-第四層へ
翌日。
俺は叩き起こされ、身体の節々が痛む中荷物を背負った。
次は第四層の攻略らしい。
地図は第五層まではあるというから、すごい物だ。
この中を突破して地図を作ったやつらがいるって事だろう。
「嫌らしい奴が増えた!」
「自爆するなんて.......」
伊藤に治療されに来た奴らは、そんな事を言っていた。
下へ下へと降りて行く形式の層で、天井付近にある謎の光源で照らされている。
天井から蝙蝠みたいな奴が襲ってくる上、下は岩に擬態した魔物だらけと来ている。
伊藤も疲労だけは消せないようで、足場の悪い中の長時間戦闘であいつらも疲れているらしかった。
そのせいか、俺に対する風当たりも強くなった。
「チッ!」
「...........」
お前らの荷物を全部持ってやってるのはどこのどいつだ。
そう思いつつ、舌打ちした誰かを無視する。
それを指摘した所で詮無い事だ。
「あいつ立ってるだけじゃん、壁にでもすればいいのに」
「ちょっと、内田クンの邪魔になるだけっしょ」
「言えてる~」
好き勝手言いやがって。
無視だ、無視。
役に立たないんだからこうして後ろに立っている事も貢献だろうに。
何がそんなに気に食わないのか。
流石に苦言を呈したくなるが、昨日から少し荷物が増えていて、俺はそれどころではない。
今後ろから突き飛ばされたら、一番前まで転がって行ってしまうほどにはアンバランスだ。
そうならないように定期的に向きを変えている。
まあ、あいつらは前で戦ってる奴らの方が大切だから、その気を散らす俺を前にやったりはしないだろう。
「(何でもかんでも口に出すようになったのは、かえってイラつくな)」
俺は口の中で呟く。
SNSで授業中に同じような事を身内で話してたのだろう。
どうもそんな臭いがする。
「役に立たないと思ってたが....」
「ううん、大西君ありがとう。あっちの無能より全然役立ってるよ」
大西が女子に褒められている。
あいつのスキルは武器を作り出すものだ、こういう消耗戦では大いに役に立つんだろう。
俺も普通に使ったら役に立たなくても、状況次第で役に立つスキルが欲しかったが。
このスキルは応用性、拡張性といったものが全くなく、ただ姿が変わってちょっと強くなり、傷が治るくらいの性能しか持っていない。
俺が弱い限りは結局何の役にも立たないスキルだ。
そして俺が強くなるのは、現状無理だ。
この世界は剣と魔法の世界だが、俺には魔法の才能が殆どないらしい。
詠唱を覚えられないので当然ではあるが。
森下のように〈無詠唱〉でもあれば別だが、基本的に魔法の詠唱は長くて面倒臭い。
英語の長文を見ているような気分になる。
「(くそ)」
遅々として戦況は進まないが、腰を下ろすと怒られる。
俺は荷物持ちとして立ち続けなければいけないというのが、イォルドの言い分だ。
楽してる分苦労しろという事だろう。
何とも体育会系っぽい考え方だ。
俺が事実何もしていないのはそうだが、じゃあ死ねというのか。
いや、そうなんだろうな。
俺が死んだら士気に関わるとか思ってるだけで、本当はいつでも殺したいに違いない。
邪魔なだけ。
いつも、いつもそうだった。
....おっと。
自分の話は嫌われる。
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