012-迷宮へ
重てえ...
そう思いながら、俺は歩いていた。
いやまあ、当然の帰結というか。
荷物持ちにされたわけだ。
あいつらが持ってるのは支給された武器とかの類で、俺は着替えや野営に必要なものを全部持たされていた。
迷宮? とやらの入り口までは馬車で荷物を運んでくれたのだが、そこから先は危険だという理由でイォルドと数人の兵士だけしか立ち入りを許されなかった。
その結果、分担して荷物を持つことになったのだが........
女子の荷物を持ちたい奴らの荷物を全部俺が持つことになった。
断れなかった、馬鹿にされるのが嫌だったからだ。
「この迷宮は一層までは既に掃討されているが、二層以降はまだ危険が残っている! 各自、自分の判断で動くように!」
群の後ろにいる俺でも、先頭のイォルドの声がよく聞こえた。
この様子では、前にいる奴らはもっとうるさいだろう。
それにしても荷物が重い。
ここ数日ずっとトレーニングばかりしていたせいか、以前よりは辛く感じないが。
「すご、絵本の中みたい」
「ジメジメしてるから、早く出たいけどね」
「数日はここだって、嫌だなぁ」
一番遅い俺は、最後尾に固まりがちな女子の後ろを歩く。
既に堕落を発動していて、そのお陰で何とか荷物を持ち崩さずに済んでいる。
そして前にも後ろにも左肩にも右肩にも両手にもある荷物のお陰で、俺の恥ずかしい格好を晒さずに済んでいる。
女子に見せつけられたが、堕落を発動中の俺の格好は本当にひどい物だった。
髪が白くなって、目がワインレッドと紫のオッドアイに、肩と腰当たりに黒いオーラが出る。
強そうだが、これで弱いんだから笑い物だろう。
オーラ部分には何ら効果も無いようで、俺は既に諦めてこの姿を受け入れていた。
「間もなく二層だ! これまでは何もなかったが、二層からは本当に気を入れて進め!」
声が聞こえてくる。
それに応じる声も。
だが俺は、実感が湧いていなかった。
当然だよな、あいつらにとっては特別な力を得て、世界を救う旅がようやく始まった感じだ。
でも俺は、非日常が始まったというだけで、何も変わらない。
今まで通り惨めで、大手を振って歩く人たちの背中を見ながら憧れる事しかできないんだ。
憧れてさえいれば、惨めな自分を見なくて済む。
諦めてさえいれば、現状を変えようなんて愚かな事を考えなくて済む。
何をやっても結局は理不尽に終わる。
だったら諦めて従った方がマシというものだ。
それは間違った事か?
「.......ぷはぁ」
考え事をしながら歩き続けていたせいか、それとも荷物のせいで前が見えなかったせいか、おおよそ二時間ほどの旅路はあっという間だった。
支給された水筒から水を飲んだ俺は、溜息交じりに息を吐く。
「二層の入り口は閉所故に、強行突破が可能だ! 任せたぞ、勇者殿!」
「任せてくれ!」
前方では、内田がイォルドの言葉に胸を張って叫んでいた。
あいつは勇者らしいからな、文字通り正面突破できるんだろう。
また最後尾を行こう。
俺はそう決めて、出発を待った。
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