011-遠征
あの日から、色んな事があった。
まず、テレンが居なくなって、代わりにメチャクチャ厳しい騎士団長? みたいなのがやって来た。
俺たちは今までのように自由時間を多く取る生活は出来なくなり、兵士と同じ訓練を受けさせられた。
初めは文句も多かったが、イォルドと名乗った男が「死にたくないならやれ」と一喝した事で嫌々ながらもやる人は増えていった。
裏では不満が絶えていなかったが、俺は溜飲が下がった。
だが、それも最初だけだった。
何をするにも柔軟で優秀なアイツらはすぐにイォルドのお気に入りになり、俺は何をやってもダメで、毎回居残りをさせられていた。
「貴殿は文官なのか? その道もあるが、紹介してやろうか」
と言われたこともある。
だが、本職にまだ何も知らない俺が出来る事など何一つない。
ただ愚直に、訓練を繰り返した。
そして生活の方だが、これは少し良くなった。
イォルドが来た事で、追加の糧食が届いたという話を兵士がしていた。
野菜の類は少し減ったけれど、パンがもう少し沢山食べれるようになった。
「うわぁあああ!」
「はははは!」
また押し付けられた掃除をしながら、俺は柏木が別の男子に俺にやったのと同じことをやっているのを見ていた。
あいつらは仲がいい、それこそ同性愛レベルかもしれない。
だから、嫌じゃないんだろう。
あいつらの「ノリ」の中にしかない、羞恥や共感性の欠如だ。
「今日も感心だな」
「...あ、はい」
掃除も終わりかけの時、俺は急に話しかけられた。
最初に取っ組み合いをして負けた兵士、セドリックだ。
あれから地味に仲良くなったが、精神的には向こうが上になってしまった。
「教官殿がお呼びだ、掃除は一回おいて、宿舎に来い」
「わかりました」
俺はブラシを放置して、宿舎棟へ向かう。
入り口でセドリックに背を押されて中へ。
「全員揃ったな!!」
肺が震えるほどの大声が響き渡る。
つい咳き込む俺だが、宿舎のエントランス、その場に全員が集っているのがわかった。
訓練の類にしては時間が遅すぎる。
何だ?
「今日、王命が下った! 貴殿らにとっては最初の栄誉ある戦いである!」
騒めく皆。
そりゃそうだ、ここでの生活も終わりってことだ。
どうもこの周辺にいる化け物は、兵士基準では「弱い」らしい。
「どういう事ですか?」
小林がクラスを代表して、イォルドに尋ねる。
聞きづらい雰囲気なので、こちらとしては助かる。
「バーズ大迷宮、ここを抑え、魔王が生まれた地とされるこの迷宮の真奥にあるという謎を解き明かせば、それらが貴殿らの最初の栄誉となる!」
「それは...可能なのでしょうか?」
「我らより優れたスキルを持つ貴殿らであれば、容易であろう。無論、私も同行する。指揮官がいなくては、戦えまい」
口には出さなかったが、不満は大きいらしい。
テレンの元で英雄として扱われて来た皆は、アレコレ指図されるのがうざったいようだ。
俺も嫌だけど、そうしないと生き残れないんだからしょうがない。
ともかく、俺の目標は生き延びる事だ。
そのためなら、いくら指図されたって構わないし、いくら嘲笑されてもいい。
生きていればいいんだ。
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