103-魔王国陥落
こうして、グロス・ザクラスは完全に陥落した。
魔王を確保した以上、もうイレギュラーは存在しない。
ハイブ兵による生き残りの徹底排除と、一番大きな避難所をわざと残し、俺が堕落でまとめてハイブ兵に仕立て上げるのが終われば、都市は最早魔族のものではなく俺のものとなった。
同時に、中央と国境を押さえた以上、もう隠れて行動する必要もない。
アルバトロス王国側に魔王国での動乱が伝わらないからだ。
国境を押さえているハイブ魔族と深淵教団が、脱走するであろう魔族を決して逃さない。
「ようやく正しい世界が実現しつつあるな」
「ええ。あなた様のおかげです」
魔王城のバルコニーで、俺は首都を見下ろしていた。
ベルメリアが隣にいて、俺の言葉に賛同の意思を示す。
見下ろした首都には、堕落させた都市から集めたハイブ市民、小林の巣の中での労働階級のハイブ兵、深淵教団の奴隷たちが蠢いている。
これから三つの勢力の拠点となるグロス・ザクラスを復興させている。
何しろ復興など全く考えずに壊し回ったからな。
そこは反省している。
「それにしても、聖堂だけは本当に建つのが早いな」
俺は呟く。
都市の中心部、もともと広場があった場所に聖堂が建っている。
教団員500人程度がグロス・ザクラスに到着してからまだ三日も経っていないが、余った人手だけで作ったんだろうな。
どこにでも聖堂を建てたがる性質がある。
「ねえ、あたしは無視?」
「虫ではあるな?」
「....そうだね」
俺は背後に目を向ける。
ふくれっ面の七海が立っていた。
教団員が用意したのか、厚手のコートを着ている。
俺も厚着だ。
格好つけて上に登ったが、魔王国は結構冷える。
これから秋らしいしな。
「地下基地の視察に来たんだろう、どうだ」
「違うけど?」
「そうなのか」
「そろそろ子供が欲しいから来ただけだもーん...」
「そうか」
変異した七海の言う「子供」は要するにハイブ兵になる訳だが...
それでもいいのか?
俺は悩むが、そもそも七海の人生を冒涜したのは俺だ。
魔王の言葉が脳裏にチラつく。
「お前は空っぽだ」
あの言葉。
確かに、腑に落ちた。
俺には何もなかった。
「俺」がだんだんと、俺自身に染み込み始めたのかもしれない。
そういう事は起きると、ドゥームロードから忠告されていた。
俺は七海の手を取った。
「え?」
「やるんだろ、行くぞ」
「ええ~....?」
俺は七海を連れて城内へと入る。
魔族の技術は素晴らしく、城内は暖かい。
とはいえ吹っ飛んだ天守閣は未だにそのままだ。
隙間風が吹き込んでくるだろう。
「人払いはしてある。中へ行こう」
「いつになく積極的~...ホレちゃうかもー?」
「何を今更」
俺は七海を連れて、適当な寝室を探した。
結局見つからなかった。
「使用人の部屋でいいか」
「ムードないなー」
俺は七海の手を取って、使用人室へと入った。
......その後、乱入して来たハイブ兵全員に交尾を迫られることになり、急いで逃げることになったのだが.....まあ、それはいいだろう。
あまり語りたくない。
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