104-一国一城の主
一か月後。
俺はグロス・ザクラスの街を歩いていた。
目的地は魔王城だ。
そこで式典が開かれる。
何しろ、魔王国の全てが堕落し、俺の配下となったのだからな。
祝うべきことだ。
「枢機卿!」
「ああ、後でな」
俺は教団員に声をかけられる。
未だに慣れない肩書きだが、教祖よりは肩の荷は軽い。
これが俺の表の立場、「枢機卿」だ。
魔族たちの国教が深淵教になった事で、俺も枢機卿として国政に携わる者としてのつじつま合わせができるようになったわけだ。
......ここは身内しかいないから、誰かに言い訳する必要も無いが。
「枢機卿が来られたぞ!」
「捧げ剣!」
新設された魔王騎士団に出迎えられて、俺は魔王城に正式に入城する。
各地から集められた人材が、この魔王城で働いている。
天守閣を再建するにあたって、この城自体もグレイラインPMCと深淵教団によって改築が加えられているらしい。
俺は受け取ったマントを羽織り、魔王城の通路を通って奥へと進む。
一般開放されている謁見の間を避けるようなルートだな。
「「「「お帰りなさいませ」」」」
「ああ、ありがとう」
俺は頭を下げる幕僚? 四人に礼を言う。
メタラスを陥落させた時に堕落させて仲間に加え入れた。
ベルメリアもこいつらは使えると言っていたので、優秀なハイブ兵として使い潰してやるつもりだ。
階段を三つ登り、謁見の間の最高壇と同じ階に着く。
もう式典は始まっているだろうが、身内だけなのでそこまで盛大にやる必要がなく静かだ。
「...は、...だ!」
ドアの前に着いた時、ちょうど出番らしいと察した。
俺は扉を開け、謁見の間へと出た。
そこにはハイブ兵、グレイラインPMC兵、深淵教団員の代表者が勢揃いしていた、
代表者という事で、リュドミラや七海たちの顔も見える。
ハイブ兵はともかく、PMC兵と深淵教団員はやる気に左右されるはずだ、俺も楽はできない。
「枢機卿、ハルキ・サトウ様の登壇だ!」
魔王の側近だったハルバが、俺の登場を声を張り上げて知らせる。
俺は魔王の隣へと立った。
彼女は命令通り前だけ向いて座っている。
「皆、よく集まってくれた」
俺は自分に自信が付いてきている事に気が付いた。
根拠のない自信ではあるが、こうして人の前に立つのに羞恥や恐怖を覚える必要がなくなった。
「俺は世界を征服するべく、まずは魔王軍を接収した。魔王も“説得”し、こうして今は協力者だ」
「ああ。我はハルキ様に尽くす所存だ」
表向きは世界征服だ。
だが実際は、あいつらの逃げ場をなくすことが目的となる。
理想はどこに逃げても責められ、酷い目に遭わされる世界だろうな。
俺が味わってきたものを、数百倍にして体験させてやろう。
「我々の新生は、決して他国に知られてはならない。魔王国は魔王国のまま、密かに周囲に侵攻する! 気づいた時には全て手遅れになっているくらいが丁度いい!」
俺は今後の方針を説明する。
当分は王国だけを相手にして、周辺国家はすべて無視する。
まずは「王国対魔王国」という外見を維持したまま、あの勇者たちを騙す。
「せいぜい、いい思いをさせてやった後に、少しずつ手を緩めるのをやめていくんだ。勇者は成功を欲しがる王国の民に押されて、自ら功を焦って破滅の道に進んでいく」
あいつらは生まれて初めて、上手くいかない状況にぶち当たって苦しむ。
俺の気持ちがよく分かる状況にする。
そして、
「奴等の周囲の人間も取り込み、精神的に追い詰めるんだ。決して直接手は出すな、それは俺が望まない」
殺してしまったらそれで終わりなんだ。
あいつらが俺の事を心底理解できるくらい酷い目に遭えばそれでいい。
奴らは愚かだから、それでも理解しないかもしれないが.....同じ境遇に会えば嫌でも学ぶはずだ。
俺の作った正しい世界で、苦しめ。
「では、これで式典を終わりとする! 各員、持ち場に戻れ!」
俺はそう命じる。
パーティー等も特になく、ハイブ、PMC、教団に分かれてそれぞれ首都の各施設へと戻って行く。
俺は魔王の方を見る。
「お前たちの願いも、ここから叶っていくんだ」
「....はい、ベノムドミネーター様」
魔王は笑って、俺を見上げた。
俺はとりあえず今日は休もうと、謁見の間を後にした。
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