100-魔王との戦い
俺は魔王がいるらしい部屋を奥まで歩いて行った。
途中分かれ道があったが、無視した。
そして一番奥に辿り着いた俺は、そこで一人の女を見た。
魔族の女だと一目で分かった。
角が最初に見えて、その後に金髪、見たことないくらいでかい胸。
だが、そんな事はどうでもいい。
すごい威圧感を感じ、俺は足を止めた。
「オ前ガ、魔王カ」
「.........」
「ドウシタ? 死ンデイルノカ?」
だったら都合がいい。
俺は根を伸ばそうとして、その瞬間に女が動いた。
「下衆が、私に触れるな」
「フフハハ...」
全く、酷い言われようだな、事実だから仕方ないんだが。
俺は適当に笑って誤魔化し、そして気付く。
会話をどうやって続ければいいかわからない。
このまま襲いかかるのも...どうなんだ。
「...勇者などまやかしに過ぎず、その裏にはお前がいたという訳か。王国がどんな禁忌に手を染めたか知らぬが、余が貴様を許しはしない」
「フフフ...ハハハハ...フハハハハハーッ!」
俺は戯けて笑い飛ばす。
許さない、許さないだと?
お前に何が出来るんだ、ここで勝っても、後に残るのは瓦礫の魔王国だけだ!
「許サナイ、ダト? 笑ワセル。ソンナ台詞ハ、俺ニ勝ッテカラ言ウ事ダ!」
「では、そうさせてもらう!」
魔王が立ち上がる。
その小柄な身体でどうするのかと思ったが、魔法で剣を召喚したようだ。
身体よりでかい両刃の大剣か。
彼女はそれを軽々と俺へ向けた。
「名を名乗れ、下郎。それが最低限の掟だ」
「ヨカロウ。我が名は...ベノムドミネーター」
「...我が名はヴァサーゴ・ノレ・ロー・スジルス」
「随分ト、可愛ラシイ名ダナ」
「そうか? ありがとう、心置きなく────────」
直後、魔王が跳んだ。
普通ならば、言葉を切った瞬間に消えたように見えるだろうが、俺には見えている。
降ってきた剣を、俺は手で受け止める。
勢いを地面に流し、結果として床が陥没する。
「────なっ...成程、単身でここまで来るだけはあるということか」
「挨拶ヲ邪魔シテ、申シ訳ナイ」
俺はあくまで余裕を保ち、謝罪する。
もし俺が本当に強かったなら、きっと挨拶を待ってやれたんだが。
俺は腕に力を込め、無数の触手を露出させる。
触手全てを使い、これからこいつが何をしようと全て迎撃する。
「...貴様、野心も欲望も感じ取れないな。何故ここへ来たのだ」
「ソウカ? 俺ハコノ国ノ全テガ欲シイ。ダカラ来タノダ」
「本当にか?」
「ソウダトモ」
俺はあいつらに復讐がしたい。
徹底的に貶めて、持てない者、成功できない者の気持ちをたっぷりと、しかと味わわせてやりたい。
だからそのために、この国が必要なんだ。
「であれば、私がお前に言い残そう。お前は空っぽだ、と」
「フン」
それらしい事を言いやがって。
俺は鼻を鳴らして、魔王へと今度は逆に仕掛けた。
背後へと回り込み、拳を握り込む。
向こうも見えているのか、なら、腐蝕毒をぶつけてやる。
「守れ!」
「結界カ!」
毒が弾かれた。
だが次の手がある。
俺は背後へ退いて、毒を数発打ち込む。
魔王は毒をかわしながらこっちへ突っ込んでくる。
ま、まずい、格下ばかり相手にしていて、格上相手の戦いがわからない!
再び振るわれた剣を、俺は触手で払い除けた。
続けて飛んできた拳を、掌で受け止め、
「吹き飛ばせ!」
「ナッ...!?」
風の魔法らしきもので吹き飛ばされた。
強い...こいつは、他のどの魔族とも違う。
それどころかまだ本気ではないように思えた。
「もう一度言う、貴様は自分の力に追いつけていない。それに足る野心も、犠牲を積み重ねる覚悟もない。空っぽだ、空っぽの相手と戦うほど虚しい事はないぞ、ベノムドミネーター」
先程と同じ姿で俺に剣を向ける魔王が、俺にそう言った。
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