098-喧騒の下で
四十分ほど後。
俺はドゥームロードへと姿を変えて、地下へと入っていた。
理由は、防衛術式の書き換えだ。
一か所を堕落させれば、深く繋がっている術式を全て支配下に置くことができる。
勿論、それは敵も分かっている事だろう。
だからこそ、
「人間を観測」
「排除を開始します」
「誤りの場合は退避してください」
こうしてゴーレムを配置しているというわけだ。
前回と同じ、美少女タイプが三人。
こいつらを相手取るのは俺一人では厳しい。
────俺一人では、だが。
「影より立ち昇れ、魔の人形よ────〈魔繰人形〉」
俺の影から、人影がゆらりと起き上がる。
教団員の正装に着替えさせられたゴーレムが、俺の前でスコップみたいな槍を構えた。
「同位存在?」
「意思疎通に失敗」
「────控えよ、神の御前であるぞ」
以前破壊して回収したゴーレムは、教団員共に預けて修復させた。
魔族の中でも高度な技師しか作れないものらしいが、教団員たちはそれをやってのけた。
動力も「神」から受けている、出力も持続時間も以前の数倍と来た。
俺は腕組みしてそいつの戦闘を見守るが、正直腕を組むどころか寝てても構わない程だった。
「見た目とスペックが異なる...っ!?」
「その武器は!?」
ちなみにあいつに持たせている武器は、教団員の造ったものだ。
打撃武器にも、高速回転させて槍にもなり、作業の道具にもできる。
そして事実、ゴーレムは俺の前で、既に一体の頭蓋を粉砕していた。
「主様、頭部と胴体が揃えば一体で復元は出来ますが、どうされますか?」
「任せる」
「はい」
その後、もう一体の首が飛び、鮮やかな一撃でコアが破壊されるのが見えた。
首を踏み潰したゴーレムが、最後の奴の頭をもう一度粉砕し、その胸に手を突っ込み、何かを引きずりだすのが見えた。
「主様、首と胴体、コアが揃いました」
「構わん、回収して戻れ」
「はい」
ゴーレムは手に入れたものを持って影に戻る。
無機物なら何でも仕舞えるが、ゴーレムの身体に触れている必要がある。
不便だな。
「〈神焔〉」
俺は合金製のドームを焼き払い、防衛術式を露呈させた。
そして手を伸ばす。
「〈神蝕堕落〉」
術式の抵抗は一瞬で陥落し、術式が一瞬停止して俺の支配下に入る。
「〈神蝕堕落〉!」
更に重ね掛けだ。
防衛術式同士の繋がりを通して、六基の防衛術式を堕落させる。
「....お?」
....勘付いたか?
いや、違うな。
ハッキング防止のような仕組みが実装されているようだな。
既に三基が手に落ちているが、残りの四基が協力して抵抗している。
「〈神蝕堕落〉!!」
だが、無駄だ。
「俺」が生涯かけて作り上げた、支配と上書きの術式をなめるなよ。
三回目の発動により、二基が押し潰された。
五基のパワーで残り一基を掌握。
中央は呆気なく書き換えられた。
「これで仕舞いだ」
俺は顔を上げる。
これで首都は完全に俺の手に落ちた。
高く見積もっていた相手も、大した事は無かったというだけの話か。
いや、違うな。
まだ、魔王が残っている。
「中央の陥落が速かったのが気になるな」
中央の術式が容易く支配できたのが気になる。
向こうにも伝わって居るはずだろうに、奪い返される兆候も無かった。
それはつまり、都市を奪い返すのは魔王一人で十分という事だ。
俺は慎重さを捨てるべきじゃないと思い至って、外へと向かった。
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