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思兼学園異聞  作者: 歌麿
第一部 桜の檻編
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桜の記憶

 美月は何も覚えていない。

 高橋という名前も。

 消失事件も。

 だが。

 夢を見るようになった。

 桜の夢。

 どこまでも続く桜並木。

 その奥で誰かが泣いている。

 少女だった。

 自分に似ている。

 だが違う。

 もっと大人びていて。

 もっと神々しい。

「まだ目覚めてはいけません」

 少女が言う。

「あなたはまだ人間でいてください」

 そこで夢が終わる。

 翌朝。

 白狐が静かに呟いた。

「木花咲耶姫因子との接続が始まっています」

 美月は当然分からない。

「つまり?」

「先祖返りです」

「え?」

「かなり深刻な」

 龍真だけが表情を変えた。

 深刻。

 白狐がその言葉を使うのは珍しい。

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