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桜の記憶
美月は何も覚えていない。
高橋という名前も。
消失事件も。
だが。
夢を見るようになった。
桜の夢。
どこまでも続く桜並木。
その奥で誰かが泣いている。
少女だった。
自分に似ている。
だが違う。
もっと大人びていて。
もっと神々しい。
「まだ目覚めてはいけません」
少女が言う。
「あなたはまだ人間でいてください」
そこで夢が終わる。
翌朝。
白狐が静かに呟いた。
「木花咲耶姫因子との接続が始まっています」
美月は当然分からない。
「つまり?」
「先祖返りです」
「え?」
「かなり深刻な」
龍真だけが表情を変えた。
深刻。
白狐がその言葉を使うのは珍しい。




