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思兼学園異聞  作者: 歌麿
第一部 桜の檻編
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結界のひずみ

 同じ朝が続いていた。

 それはもはや“繰り返し”ではなかった。

 九頭竜龍真は、静かにその事実を受け入れつつあった。

(時間ではない)

(これは再生だ)

 教室。

 廊下。

 桜の木。

 すべてが昨日と同じ位置にある。

 だが、完全一致ではない。

 わずかに“ズレている”。

「おはよー、龍真」

 神楽坂美月の声。

 同じタイミング。

 同じ笑顔。

 だが、龍真は気づく。

(昨日より一拍早い)

「ねぇ、また同じ日?」

 美月が何気なく言う。

 龍真は一瞬止まる。

「気づいているのか」

「うん」

 当然のように頷く。

「ずっと同じっていうか……リセットされてる感じ?」

 その言葉に、龍真は息を止めた。

(認識できている……?)

 その時だった。

 机の上に“白い影”が現れる。

 白狐。

 昨日と同じ場所ではない。

 空間の“歪み”から滲むように現れている。

「同期誤差が拡大しています」

 美月は普通に頷く。

「またそれ?」

 龍真だけが理解する。

(“また”だと?)

(いつから知っている)

 白狐は続ける。

「この空間は時間ではありません」

「情報の再読領域です」

 龍真:

「情報……?」

「はい」

「この学園は“思兼神学園という概念の固定領域”です」

 空気が重くなる。

「誰がやっている」

 白狐は一瞬沈黙し――

「原初神系統の管理プロトコルです」

 その瞬間、桜の音が止まった。

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