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月の昔話
◇
夢。
白い世界。
何度も見た景色。
何度も会った少女。
今度は近い。
かなり近い。
少女が微笑む。
悲しそうに。
嬉しそうに。
そして。
その向こう。
巨大な門が見えた。
白銀の門。
月面に建つ神殿の入口のような。
圧倒的な存在感。
『ここは』
シロが歩く。
一歩。
二歩。
三歩。
門へ近付く。
その時。
門の脇で。
何かが動いた。
ぴょこ。
『?』
耳。
長い耳。
白い毛。
赤い瞳。
小さな身体。
『……うさぎ』
ぴたり。
うさぎも止まる。
目が合った。
数秒。
沈黙。
そして。
うさぎが叫んだ。
「遅いよーーーっ!!」
夢の空間に響き渡る声。
シロが固まる。
「何千年待ったと思ってるの!?」
『どちら様ですか』
「え?」
今度はうさぎが固まる。
「忘れたの!?」
『初対面です』
「うそでしょ!?」
白い少女が苦笑した。
シロだけが状況についていけない。
「本当に忘れてる……」
うさぎが頭を抱える。
そして。
どこか寂しそうに笑った。
「おかえり」
その言葉を最後に。
夢は終わった。
シロが目を覚ます。
真夜中。
月が窓の外で静かに輝いていた。
しかし。
シロの胸には。
なぜか。
懐かしさだけが残っていた。




