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思兼学園異聞  作者: 歌麿
第二部 桜と龍と恋する神殺し~神殺し候補は恋に全力です~
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月の昔話

 夢。

 白い世界。

 何度も見た景色。

 何度も会った少女。

 今度は近い。

 かなり近い。

 少女が微笑む。

 悲しそうに。

 嬉しそうに。

 そして。

 その向こう。

 巨大な門が見えた。

 白銀の門。

 月面に建つ神殿の入口のような。

 圧倒的な存在感。

『ここは』

 シロが歩く。

 一歩。

 二歩。

 三歩。

 門へ近付く。

 その時。

 門の脇で。

 何かが動いた。

 ぴょこ。

『?』

 耳。

 長い耳。

 白い毛。

 赤い瞳。

 小さな身体。

『……うさぎ』

 ぴたり。

 うさぎも止まる。

 目が合った。

 数秒。

 沈黙。

 そして。

 うさぎが叫んだ。

「遅いよーーーっ!!」

 夢の空間に響き渡る声。

 シロが固まる。

「何千年待ったと思ってるの!?」

『どちら様ですか』

「え?」

 今度はうさぎが固まる。

「忘れたの!?」

『初対面です』

「うそでしょ!?」

 白い少女が苦笑した。

 シロだけが状況についていけない。

「本当に忘れてる……」

 うさぎが頭を抱える。

 そして。

 どこか寂しそうに笑った。

「おかえり」

 その言葉を最後に。

 夢は終わった。

 シロが目を覚ます。

 真夜中。

 月が窓の外で静かに輝いていた。

 しかし。

 シロの胸には。

 なぜか。

 懐かしさだけが残っていた。

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