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狂想爆炎ピアチェレディ!  作者: ハリエンジュ
第三話『ガール・ミーツ・ガール』 ~アリスパート~
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その10 開花

狂騒(きょうそう)爆炎(ばくえん)ピアチェレディ!

第三話『ガール・ミーツ・ガール』

その10 開花


teller(語り手)留輝(るき)=フローライト




 会いたかったオンナを抱き締めながら、あたしは考える。


 ……そう、だった。

 コイツに言いたいことが、言わなくちゃいけないことがあるんだ。あたしには。


「あ、の……」


「……? なあに、ルキちゃん……?」


「……ごめ、ん……」


 オンナが目を丸くする。

 あたしからは、コトバがあふれる。


「……キライって言って……、いらないとか言って……きもちわるい、キモいって言って……ひどいコトバ、いっぱい言って、ひどいこと、いっぱいして……怒鳴って、嫌がって……あたしのせい、で、こんな……ケガ、させて……ごめん、ごめ、ん……ごめんなさい……」


 ……サイアク、だ。

 コトバといっしょに、なみだ、あふれてきちゃった。

 こんなの、泣き落としみたいだ。


 世の中はサイアクなものだらけだと思ってるけど、ホントに一番サイアクなのは、あたしだ。

 ひどいことばっかり言って、みんなキライだって(わめ)いて、逃げて閉じこもって、安心した気になって。

 強いフリして、でもそんなの思い込みで、強がりで……サイアク、なんだ。


 あたしにキライなものやこわいものがいっぱいなのは、すぐキモチが傷ついちゃうから、だ。

 何もかもとつながりやすいのがイヤで、ココロに流れ込んでくるぜんぶがこわくて、つらいものとの向き合い方なんて、あたし、知らなかった。

 向き合えなかったから、自分の弱いとこ、ヤなとこ、うまく気づけなくて、認められなかったんだ。


 ――あたし、いつもそうだ。ずっとそうだ。

 弱くてわがままで怖がりで、思い通りにならないもの嫌ってばっか。



 震えながら、ごめんなさいごめんなさいって繰り返すあたしの背中を、オンナは――アリス=クロスロードは、優しく撫でてくる。

 背中にふれる、その優しい手に、ぬくもりに――あたしはホントの意味で、安心する。


 コイツはあたしに、やさしい、かわいい、きらきら、だとか、つよい、カッコいい……だとか、恥ずかしいことばっかり言ってきたけど。


 ……コイツの方がよっぽど、やさしいしつよいし、かわいいよ。


 あれ。

 なんでだろ、なにか、思い出しそう。

 確か、このオンナ、こんなこと言ってて――。





――『WITTS(ウィッツ)の人に、この【妖精(フェアリー)因子(ファクター)】の力を、教えてもらって……色々助けてもらって……その人、とても素敵な人で、ね……わ、私、その人のことが、す、すき、で……』


――『そ、その人を好きになって……私……変わりたい、って思ったの……』


――『それまでの私、本当になんにもなかった……でも今は……私にも何か力があるなら、それを誰かの役に立てたいと思った……私を助けてくれた、大好きなあの人の役にも立てるような……素敵な人に、なりたいって……思って……だから私、旅、してるの……WITTS(ウィッツ)に、入るために……』





 ……あ、コイツ。ほんとに、つよいな。


 すきなひと、とか、よくわかんないけど……多分このオンナには、あたしみたいに、オンジンがいる。

 でもこのオンナは、あたしとはちがうんだ。


 コイツは、自分の大事なヤツを追いかけたんだ。

 おんなじになりたいって願ったんだ。

 大事なヤツの役に立ちたいって、思えたんだ。

 それで、がんばれるんだ。コイツ。


「…………あーあ…………」


「……ルキちゃん……?」


 オンナに抱きついたまま、寄りかかるように情けなく、あたしの体重ってやつをあずけた。


 あーあ。

 いいなあ、こいつ。つよい、なあ。

 あたしも、コイツみたいに強かったら、追いかけられる強さが、あったら。

 ――急にいなくなっちゃったオンジンに、会いに行けたのかな。自分から。

 そしたらオンジンのこと、キライになんないで済んだの、かなあ。

 ……あたしも、やさしく、なれたのかなあ。


 ……あれ。


 

「……っ、ぅ、え……!」


 急にびっくりして、ヘンな声がでた。

 ――とつぜん、安心が崩れたからだ。


 はだが、ざわざわする。

 イヤなものを感じ取ってる、つながってる。

 なんで、なんで?

 あたし、さっきちゃんとやっつけたのに……!


 ぐらぐらと揺れるコックピットの中で、すがるようにオンナを抱き締めてると、ハッチの外に、黒くておっきな影が見えた。


 ――魔女、だ。


 でも、さっき襲ってきたやつとはベツモノだ。

 新しいヤツ、来ちゃったんだ。サイアク。


 なんでか、魔女はさいきんいっぱい現れる。

襲ってくる。

 狙いはあたし? それともこのおっきな、洋館みたいな【レディ】が目立つせい?


「ルキちゃん、さがっ、て……っ! ぅ、く……っ」


 オンナが、ちいこいカラダのくせにあたしを庇おうと前に立とうとした。

 戦おうとしたんだろう。外にはコイツの【レディ】がいるはずだから。

 ――でも、オンナはふらついた。

 あたりまえだ。

 だってドバドバ血、出てるもん。

 あたしなんかに会う為に、あたしなんかのココロを助ける為に、コイツはバカみたいなムチャしちゃったんだもん。


 あたし、なんかのために――。


「……? ルキ、ちゃん……?」


 ――あたしは服の袖で、オンナのほっぺやらなにやらを伝う血を、拭う。

 あたしの白っぽい服が、コイツの血で赤く染まる。

 だからなんだ。

 コイツの血が、コイツが、きたないわけあるか。なめんな。


「……ケガ、ごめん。あとで……手当てのやり方、ちゃんと教えて。あたし、やってみるから、がんばるから……」


 ちょっとだけ未来の約束を、お願いした。

 未来が来るって、信じていたかったから。


「だから……ごめん。もうちょっとだけ、頑張ってて。立ってて、起きてて……おねがい、あたしのこと、見てて……」


 オンナの、手をとる。

 その手を、あたしの目元に運ぶ。

 オンナがちょっぴりびっくりした気がした。

 だって今のあたし、泣いてるもん。

 魔女とか、これからあたしがやろうとしてることとか、いろんなもの、こわくて、カラダふるえて、なみだ止まんなくて。

 ――でも。


「……おねがい。あたしのなみだ、拭ってて……あたしまだ、弱いから、泣き虫だから……こわくて、ふるえちゃうから。あんたいないと、だめなんだ、あたし……」


 目元にむりやり触れさせた、オンナの手に、指に、オンナのココロが宿った気がする。

 あたしのなみだ、拭ってくれた。

 ……やっぱり、あったかくて、やさしくて、いとしい。


 こんな、あったかいのとかさ。

 やさしいのとか、安心とか。

 知っちゃったら、あたしもうだめだよ。

 当たり前だったひとりぼっちを、当たり前にしたくなくなる。

 このあったかいの、なくなるのやだ。


 だからあたしが、守るんだ。


 オンナになみだを拭いてもらいながら、オンナの目を見て、あたしはまだわがままなお願いばかりする。


「……おねがい。あたしが強くやさしくなれるよう、そばにいて、たすけて……!」


「……ルキちゃんは、もうすっごく優しいよ。強いよ。素敵、だよ……?」


「……ちがう。ちがうの……」


 ふるふると、いかにも弱々しく首をヨコに振るあたしを、オンナがふしぎそうに見ている。

 あたしはただ、今のあたしのホントのことを言った。


「……あたし、強くないの。やさしくなんか、ぜんぜんないの。……でも」


 でも。

 ――でも!


「……いまから強く、やさしくなる! そうなれるよう、これからがんばる! ここであんたを守って……あたし、ちゃんとはじまるから!」


 オンナを抱き寄せて、コックピットの……確か、操縦席、に座る。

 少し目を閉じて、オンジンの言葉を思い出す。

 ……確かこれは、勇気の呪文。オンジンは、むかしそう言ってた。


 まだなみだでぐしゃぐしゃな目を、開ける。

 呪文をコトバにする準備のつもりで、頭の中で呪文を繰り返す。

 そのあいだも、守りたい、がんばりたいって、何度も願って――。


 そう願った時。

 いつもあたしと一緒にいた四体のロボットが、操縦席に居るあたしとオンナを囲みはじめて――ガチャンガチャンと、つながり合って姿かたちを変えていく。

 それを見ながら、あたしは、えっと……そう、操縦桿(そうじゅうかん)を、両手で握った。


 ……オンジン、そうだ、言ってた。

 このおっきな洋館は、あたしを守るためのハリボテなんだって。

 ほんとのすがたは、あたしをずっと守ってくれてる四体のロボが、あたしに応えて作ってくれるって。


 あたしの、ほんとうの、【レディ】は――。



「…………『フェ・デ・フルール』、テイルスタートッ!! 

Hey,kid(クソガキ!) ! Hey,damn(クソッタレ!!)!! Hey,mister(クソ野郎!?)!? No(ちがう!!)!! She(彼女) is() "Mr.Fairchild(とても可憐な花!!)"!!」



 ――呪文だと思うコトバを、叫んだ時。

 あたしたちを、コックピットを囲んでいた四体が、完全に繋がり合った。ひとつに、なった。

 ひとつの、ロボットになった。


 パステルカラーとかいうのであれこれ塗られた、やたらカラフルで、でもフシギとそんなに色が騒がしくない機体。

 装甲がところどころ、咲いた花みたいな形になってて――腰とか、そう。花のスカートみたいになってる。ロボットだから硬いくせに。


 フェ・デ・フルール。あたしの【レディ】。

 たしか、『花の妖精』って意味だって……オンジンは言ってた気がする。

 呪文にあった、ミスターフェアチャイルドは……バラ、とかの名前だった気がする。


 花。花の、妖精。

 ……いいんじゃないの。

 あたし、そうなんでしょ。フェアリーファクター、ってやつなんでしょ。

 となりでずっと、なみだを拭いてくれてる――花みたいに可愛いこのコと、おそろい。


 やろう。魔女、やっつけるよ。フェ・デ・フルール。

 あたし、ここで勝たなきゃだめなんだ。

 まず勝ってから、がんばるんだ。

 強く、やさしくなりたいんだ。

 暴走とかしたくない、もうこのコを傷つけたくない。

 このコと一緒にいたいんだ。守りたいんだ。


 このコ、あたしを助けに来てくれた。

 だから。


「――今度はあたしがちゃんと、助ける! 行くよ……っ、フェ・デ・フルール!!」



 ――花の妖精を、あたしは叩き起こした。

 あたしだって、今から目覚める。

 ここから、きれいに咲いてやる。

 だって、言ったもん。



 今からあたし、ちゃんとはじまる!




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