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狂想爆炎ピアチェレディ!  作者: ハリエンジュ
第三話『ガール・ミーツ・ガール』 ~アリスパート~
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その8 疾れ走れ、茨道

狂騒(きょうそう)爆炎(ばくえん)ピアチェレディ!

第三話『ガール・ミーツ・ガール』

その8 (はし)(はし)れ、茨道


teller(語り手):アリス=クロスロード




 ――(はや)く、(はや)く。

 ルキちゃんのところへ。


 辿り着く先に居るルキちゃんのことを想い、私はひたすら想像する。

 ルキちゃんのすぐ目の前に辿り着く自分を。


 私の想像力により、心がどんどん活性化していくのがわかる。

 キャロッタ村の戦闘で弱まってしまったはずの【妖精因子(フェアリーファクター)】の力が、心に呼応して溢れていく。


 こんなに力が溢れるのは今だけかもしれない。

 それでも良いから私をどうか連れて行って、クイーン・オブ・ハート!


 想像した理想に応え、クイーン・オブ・ハートは洋館型【レディ】へと一直線に突っ込んだ。

 勢いが、スズベルさんが取り扱う矢のスピードに似ている気がして――私はまた、勝手に愛しい人を思い出すことで溢れた勇気に、救われる。


 そんな移動中、小さな断末魔が響いた。

 見ると魔女リカルカは見事に洋館型【レディ】に倒されていた。

 ルキちゃんすごい。……でも、様子がおかしい。


 決着はもうついているみたいだけど、【レディ】の茨の蔓が急成長している。

 蔓が伸びて、伸びて、洋館を丸ごと覆ってしまいそうなほどに増殖して、広がって。


 それを見ている私の瞼の裏が、痛くなる。

 脳髄を揺さぶる勢いで、頭に響く声がする。

 ――ルキちゃんが泣き叫んでいる声が、聴こえる。


「……っ、クイーン・オブ・ハート! 急ごう!!」


 私の【レディ】に呼びかけると、限界だと思っていたスピードがさらに上がった。

 洋館型【レディ】の蔓が伸びる勢いも、こちらの加速と同時に増していく。


 胸騒ぎがする。

 とても良くないことが起きている気がする。

 私もまだ【妖精因子(フェアリーファクター)】のことには詳しくないけど……ルキちゃんの【妖精因子(フェアリーファクター)】、暴走しちゃってるんじゃないのかな。

 ルキちゃんの不安が爆発したことで色んなものとますます繋がりやすくなって……今のルキちゃん、頭の中いっぱいいっぱいじゃないのかな。


 ……ルキちゃんが苦しむのは、嫌だ。

 あの子を悲しませないって、さっき私は誓ったばかりじゃないか。


「ルキちゃん……っ!! ッ、ァ……!!」


 急成長した茨の蔓が、クイーン・オブ・ハートに伸びてきた。

 洋館型【レディ】の眼の役割を果たしている二つのライトが、赤く赤く光っている。

 蔓は容赦なく勢い良く伸びてきて、クイーン・オブ・ハートの身体を削り抉り突き刺そうとする。

 こちらに牙を剥く茨の蔓を前に、強く思った。


 そんなのだめだ。

 私の大事なレディを傷つけさせない。

 ルキちゃんにこれ以上、何かを拒んで傷つけてしまう、なんてこと……させたくない!


「……クイーン・オブ・ハート! 私が守るから、お願い、進んで! ただ、前へ!」


 キャロッタ村での戦いを思い出す。

 あの時は、反射バリアを駆使して村人たちを助けられたし、反射の勢いでリカルカの存在を跳ね返せた。


 今の相手は、ルキちゃんのレディ。

 そしてそのレディと繋がっている、ルキちゃん。

 今の私が守りたいのは、クイーン・オブ・ハートとルキちゃんの――どっちも、だ。


 クイーン・オブ・ハートを変わらぬスピードで走らせながら、私は想像する。

 守りたいものを、間違わず守れる盾を。


 駆け抜けるクイーン・オブ・ハートの周りを、薄いバリアが覆い始めた。

 機体に伸びてくる蔓はバリアに触れるけど、弾かれはしない。

 反射した時のようなダメージは蔓に伝わらない。


 ――ただ、バリアに触れた瞬間。

 一本の茨の蔓は、ぴたりと動きを止めた。

 時間が止まったみたいに、そのまま後は何もしない。

 バリアを突き破ろうとも、バリアから離れようともせず、ただそこに在るだけ。


 その繰り返しが進んでいく。

 走るクイーン・オブ・ハートを阻もうとする茨の蔓に、バリアは次々に触れた。

 そうして、茨の蔓を無効化していく。攻撃の意思を奪っていく。


 私の、新しい想像で創造だった。

 無効化バリア。

 クイーン・オブ・ハートだけじゃなく、ルキちゃんへの想いから生まれた、新しい盾。


 まだ私の想像力が不完全で、まともに集中できていないから、無効化がいつまでもつかわからない。


 でも今だけ止まって、今だけ守って。

 いま、私とクイーン・オブ・ハートをルキちゃんのところまで連れて行って!


 ルキちゃんに会いたい。

 ただそう願って、進んでいく。


 頭から流れる血のせいで時々朦朧(もうろう)としながらも。

 思考回路を動かして想像を重ねたから、くらくらしても。

 もう少し、だった。


 もう少しで、洋館型【レディ】のハッチまで辿り着ける。

 ルキちゃんに、また会える。


 剥き出しのハッチがもう目の前に迫ったその時、今までで一番の量の茨の蔓がクイーン・オブ・ハートの機体を狙い伸びてくる。


 大丈夫。約束したよね。

 貴方は私が守るよ、クイーン・オブ・ハート。


 ――駆け抜けてから一番の想像を、願った。

 私の愛しい女王陛下を、どうか守り抜いて、と。


 クイーン・オブ・ハートのハッチを開ける。

 クイーン・オブ・ハートと洋館型【レディ】、二つのハッチ間を私が飛び移るその瞬間、襲い来る茨の蔓は強いバリアに阻まれた。

 クイーン・オブ・ハートの機体全てを守るように、無効化バリアが彼女の全身を覆ったからだ。

 私が飛び出したから、守る対象をクイーン・オブ・ハートだけに定めたから、バリアの強度や範囲もかなり強く広くなって――バリアに触れた茨の蔓は、全てその動きを止めた。

 クイーン・オブ・ハートの機体には、傷一つない。


 一瞬振り向く。

 私のレディの無事を確認し、安堵して。



 ……ここまで連れて来てくれてありがとう、クイーン・オブ・ハート。

 ここからは、私が頑張る!



 ――また前を向いて手を伸ばして、私は洋館型【レディ】の中へと思い切り飛び込んだ。



 コックピットの中は蔓にまみれ、まるで森のように緑で深く閉ざされていた。


 私を守るぶんのバリアまではうまく想像できなかったから、飛び込んだ私の身体は蔓に突っ込み、肌が次々に茨のトゲに裂かれたけど、勢いを止めないまま、走って、(つまず)いても転がって、また前へ。

 痛いのなんて覚悟してたから、ずっとだから。

 意識が飛びそうになったら歯を食いしばって、伸ばした手で蔓を掴んで道を拓いて、爪が割れても足がもつれても、また転んで這っても、前へ、前へ。



 そして、やっと。

 ――あなたへと、辿り着く。




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