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狂想爆炎ピアチェレディ!  作者: ハリエンジュ
第三話『ガール・ミーツ・ガール』 ~アリスパート~
19/29

その6 ふたり

狂騒(きょうそう)爆炎(ばくえん)ピアチェレディ!

第三話『ガール・ミーツ・ガール』

その6 ふたり


teller(語り手):アリス=クロスロード





 留輝(るき)=フローライト。

 私が出会った同い年の女の子・ルキちゃん。

 とても綺麗な名前だ。

 ルキちゃんにぴったりの、素敵なお名前。

 

 変わらず、私とルキちゃんとの物理的な距離は遠い。

 ルキちゃんの心を守る為には、この距離は絶対に必要なんだろう。

 それでも、今なら少しは存在を許された気がして、私は嬉しい。

 今までのやり取りは無駄じゃなかったって思えるのが嬉しい。

 だからルキちゃんの話を聞かせてもらえることは、もっともっと嬉しい。


 そんな気持ちのまま、私はルキちゃんだけの物語にゆっくり耳を傾けた。


「あ、あたし……へん、なんだ」


「……変?」


「よく、わかんないけど……たぶん、これ、ヘン……」


 ルキちゃんは、少し怯えたような顔でそう言った。

 それから彼女は、ぎゅうと強く目を閉じる。

 まるで、何かを念じるように。

 すると――。


「ぁ……」


 場の変化に、つい声が漏れた。

 ルキちゃんを守るように彼女の周りをずっと囲んでいる四体のロボットが、一斉に動き出したからだ。

 四体それぞれが、手を振ったりくるくると回転し始めたり、拍手をしたり、かかとを鳴らしてタップダンスを踊ったり、バラバラな動きをしている。

 さらにはコックピットもぐらぐら揺れ出している。

 私たちを乗せた洋館型の【レディ】も、踊るように身を揺らしているのだろうか。


 すごい。

 彼らの動きはとても楽しげで、見ている私まで弾んだ気持ちが目覚めそうになる。


「……すごい……」


「っ、す、すごく、ない!! こんな、の……キモい、もん……こんな……ロボット、動かす、なんて……」


 ロボットを動かす、とルキちゃんは言ったけど……でも、ルキちゃんが何かを操作した素振りはなかった。

 じゃあこのロボットたちが踊っているのは、どうして。


 浮かんだ疑問への答えはすぐに、ルキちゃんが教えてくれた。


「あ、あたし……この子たちと、"繋がってる"……の……」


「つながる……」


「この子たち、だけじゃない……あたし、ヘン……色々、遠いものとも、つながってる……だからあたし、ひとりなんだ……親とか知らない……っ、きっとあたしが、キモいから、すっ、すて、て……っ」


 そう言ってルキちゃんは自分の耳を塞ぐ。

 やっぱり、ひどく怯えたように。

 だんだんと、おっかなびっくりに両耳から手を離したかと思えば、ルキちゃんは両手で自身の身体を抱き締めた。

 その仕草が、自分自身を必死に守っているように見えた。

 

「いっつも、たくさん声がきこえて、いっつもいっつも、はだの上、ざわざわ、する……知らない、わからないのに……みんな勝手に、あたしの中にながれこんでくる……っ、や、ヤダ……」


 ――つながる。


 その言葉を聞いてから、私の脳裏で記憶と情報が交錯していた。


 遠くのものとも繋がって、多くの声を感知しすぎて……。

 ルキちゃんが話してくれたこと、私にも凄く覚えがある。


 ……ルキちゃん、【妖精因子(フェアリーファクター)】……なんじゃないかな……?

 私と同じで……ううん、きっと私よりずっと強く、【妖精因子(フェアリーファクター)】による精神過剰活性の作用に苦しめられている、と思う。


 だってルキちゃんは、多くのロボットとも同調している。

 ルキちゃんを守る四体のロボットとも、洋館型の大きな【レディ】とも、ルキちゃんは繋がっている。

 コックピットがある【レディ】はともかく……つながって感覚を同調させて交信することで、四体のロボットを遠隔操作できているのかな。


 ……こんなに色んなものと繋がりやすいなら。

 多くの声に、気配に、いつも苦しめられているなら。

 ルキちゃん、絶対苦しいはずだ。

 いつも心に大量の情報が流れ込んできて、その感覚が制御できないんだから、それは苦しい。

 ……私も、そうだったから。


 研ぎ澄まされすぎて過敏で繊細な感覚は、ルキちゃんの心身にも日常生活にも、きっと強く影響している。


 改めて、ルキちゃんの服装を見ると――うさぎの耳のような飾りがある帽子、首元を覆うマフラー。

 上半身の露出がとにかく少ない。もう少しで着膨れしそうなほど。

 寒がりなのかと思っていたけど、あれは……過敏すぎる感覚を遮断する為のものだったんだ。

 ルキちゃん、今、『肌の上がざわざわする』って言ってたから。

 ……つらい、んだろうな。


 自分で自分を抱き締めて怯えきっているルキちゃんに、意を決して私は声をかける。


「……ルキちゃん。その体質、【妖精因子(フェアリーファクター)】……かも……」


「……え、え……? ふぇあ、りー……? なに、それ……?」


「わ、私もまだ、詳しくはわかってないんだけど……人に、教わったの。……私も、ルキちゃんとちょっとだけ体質、似てて……それは、【妖精因子(フェアリーファクター)】って呼ばれてるものなんだって」


 私がそう言うと、ルキちゃんの身体の震えが少しだけ止まったように見えた。

 ゆっくり上げられた顔に浮かんだ表情は、驚きの感情がいっぱいで。


「に、似てる……の……? こ、こんな……つながる、とか、きこえる、とか……」


「……うん。だから、ごめんね。ルキちゃんの泣いてる声が聴こえたのも……私が【妖精因子(フェアリーファクター)】の持ち主だから、なんだと思う……勝手に聴いちゃって……ほんとに、ごめんね」


「……ぇ、あ…………そ、っか。だ、だから……聴いた、んだ……勝手に聴いたん、じゃなくて……オマエ、に……届いちゃったんだ……あたしの、ココロ……」


 ――勝手に聴いたんじゃ、ない。

 ルキちゃんがそう言ってくれたことが、そんな優しい言い方をしてくれたのが、不意打ちのように胸を打つ。


 嬉しい、な。

 そう、解釈してくれるんだ。

 ……優しい、な。


 嬉しかったから、嬉しすぎたからだろうか。

 衝動のように、私はルキちゃんに手を差し伸べていた。

 衝動と呼ぶには、ぎこちない手の伸ばし方になってしまったけど。


「あ、あの……ルキちゃん……私と、一緒に来て欲しいの……私、ルキちゃんと旅がしたい……」


「ぇ、へ……? え、い、いっしょ……? ど、どど、どこに……」


「ルキちゃん、WITTS(ウィッツ)って知ってる……? さっき、この洋館を襲ったような魔女たちと戦って、世界を守ろうとしている組織……」


「魔女を……たお、す……?」


「……うん。私ね、WITTS(ウィッツ)の人に、この【妖精因子(フェアリーファクター)】の力を、教えてもらって……色々助けてもらって……その人、とても素敵な人で、ね……わ、私、その人のことが、す、すき、で……あ、う、ご、ごめん……変な話、した……」


 急に話すには、変な話だとはわかってた。

 だけどこれは今の私を形作る為には大切な話だから、ルキちゃんにも少し話しておきたいと思ったんだ。


「そ、その人を好きになって……私……変わりたい、って思ったの……」


 変わりたい。

 変わって、生きていきたい。

 もう、心を殺した屍体(したい)の振りは、いやなんだ。


「それまでの私、本当になんにもなかった……でも今は……私にも何か力があるなら、それを誰かの役に立てたいと思った……私を助けてくれた、大好きなあの人の役にも立てるような……素敵な人に、なりたいって……思って……だから私、旅、してるの……WITTS(ウィッツ)に、入るために……」


 こんなに長々と、ルキちゃんにとっては興味も湧かないかもしれない話を喋ってしまったけど。

 その間も、私の手はルキちゃんへと真っ直ぐに差し伸べられたまま。


「……私ね。さっきの手紙のこと、ほんとだよ。ルキちゃんのそばにいたいの。泣き止んでからもずっと、ずっと……ルキちゃんと一緒にいたい。仲良くだって、なりたいよ」


 ルキちゃんの瞳が、それはそれは大きく揺れた。

 ただでさえ潤み切っていた瞳が揺れたことで、涙が零れてしまいそうにも見えた。


 だめだな、私。

 ルキちゃんの涙を止めたい一心でここに来たのに、私がルキちゃんを泣かせてどうするの。

 ……だからこそ、これから一緒にいたいよ、ルキちゃん。


「ルキちゃんのこと、もっともっとわかるようになりたい。ルキちゃんと出会えて私、なりたい自分がまた増えたよ。……私は、ルキちゃんを悲しませない私になりたい……」


「ぅ、な……な……なん、で……あたし、なんか、そん、な……!!」


 ルキちゃんが、突然に声を荒げた。

 ルキちゃんが後ずさる。

 ただでさえ遠い私たちの距離が、もっと広がる。


「あ、あたし、一人でも、いい……! た、旅なんてイヤ、あたし、外、こ、こわい……! キライ……!」


 ……うん、そうだよね。

 こわい、よね。

 私もずっと、想像すらできなかった。

 自分が旅をするなんて。

 広い世界への想像に、ずっと蓋をしていたから。


 ……想像。

 ルキちゃんの話を聞いて、思ったことがあった。

 思ったこと、ううん、私がルキちゃんに伝えたいこと、だ。


「……ルキちゃんの想像は、優しいね」


「……っ、は、ぁ……? な、なに、なに……っ、急に……き、きもちわる、い……」


「ごめんね。でも、思っちゃったの。……さっきのルキちゃん、四体のロボットさんと、この洋館と繋がったでしょ……? 繋がって、ロボットたちにやってもらったことが……楽しく陽気に踊らせること、だったから……想像力とか願いとか、そういうものの使い方、すごく……すごく、素敵だと思ったの……」


 素敵なルキちゃん。

 かわいい、優しいルキちゃん。

 だから、私はちゃんと、私の言葉で私の想いを。


「ルキちゃんは優しいよ、かわいいよ、きらきら、してるし、それに……しゃべる雰囲気が強くて、カッコいい……そんなルキちゃんが、このままここでずっと悲しんだり怯え続けるの、私、やだよ……っ」


 だって、ほっとけないよ。

 ねえ、ルキちゃん、一人でいいなら、どうして――あんなこと、言ったの。





 ――『ただ…………お、おこってた、だけ……。あ、あたしの……そばに、いてくれる人、なんて……どうせいない、から……む、ムカついて、いじけてた……」





 そばにいてくれる人、ほんとは欲しいの……?


 私、ルキちゃんの言葉、ちゃんとわかりたい。

 言葉の裏の、言葉の奥の気持ち、少しでもわかるようになりたい。

 ほんとに、あなたのそばにいたいよ。


「……ルキちゃん。怖いなら、私がルキちゃんを守れるよう頑張るよ……ルキちゃんが怖がって嫌いな世界、私は最近やっと、きれいなところもあるって……目で見て自分で歩いて、知ってきたの……」


 旅に出てから、世界に感銘を受ける感覚が好き。

 でもきっとそれは、ひとりぼっちじゃ限界がある。


「私、世界の優しさをもっと見たい、知りたい、感じたい……一人じゃなくて、ルキちゃんと一緒に、ルキちゃんと隣同士で、知っていきたい……」


 手紙もどきを書いた時と、同じ。

 拙いこの言葉が、少しでもルキちゃんの心に届いて、響いてほしい。


「だからルキちゃん、私と――……っ!?」


 突然、だった。

 私の言葉を遮るように、洋館型【レディ】のコックピットがこれまでの比じゃないくらいにぐらぐら揺れた。

 ルキちゃんに視線をやると、ルキちゃんの表情からは恐怖と焦燥がありありと伝わってくる。

 ……じゃあこの揺れは、ルキちゃんが望んだものじゃない。


 コックピットの壊れたハッチから、外を覗くと――居た。

 魔女【リカルカ】だ。

 先ほど洋館を襲っていたものとはかたちが違う。

 新しい魔女が、出現したんだ。


 リカルカの姿を見たルキちゃんが、パニックを起こしたように叫んだ。


「や……っ、またあいつ……! な、なんなの、やだ、さいきんずっと、こっちくる……!」


「こっち来る、って……?」


「お、襲ってくる! よわい、から、すぐ倒せる……けど……もうウザい、こわい……!」


 すぐ倒せる……さっきみたいに、かな。

 だからシルキオの街は、リカルカにはそこまで怯えていなかった?

 でもじゃあ、リカルカはどうしてルキちゃんを執拗に狙って――。


「っ、ルキちゃん!! あぶない……!!」


「う、え……っ!?」


 急激に強まる揺れに反応して、私は今まで私なりに守ってきた、ルキちゃんとの間の不可侵領域を強引に破ってしまった。

 揺れたせいで思いっきり傾き始めたコックピットの中、伸ばした片手でルキちゃんの手を掴み、引き寄せる。


 ルキちゃんが息を呑む音が聴こえた気がしたけど、それにはうまく反応できず、私はただコックピットの奥――ルキちゃんを守ってくれる四体の人型ロボットがいるところまで、ルキちゃんの身体を軽く押した。

 傾いたコックピットの床をルキちゃんの身体は滑り落ち、ロボットたちにその身をキャッチされる。

 今の時点での安全圏にルキちゃんは移動できたから、しばらくは揺れでハッチから落ちることはないと思うけど――。


 私の方は、だめだった。

 がくんと、幾度目かの揺れに私のちっぽけな身体は対応できず、ルキちゃんがいる方向の反対へと私の身体は傾き――ハッチから、私の身は投げ出された。


 言葉になっていない悲鳴を上げたルキちゃんが、四体のロボットたちに抱えられたまま私に手を伸ばしてくれる、けど、ごめん、間に合わない。


 私の身体は、呆気なく、洋館【レディ】から落ちていく。


 ルキちゃんが初めて私へと手を差し伸べてくれたように、私もまた手を伸ばす。上へ、空へ。


 ルキちゃんの手を掴むには、間に合わないけど。

 私が伸ばした手は、洋館の一部となっている茨の蔓を掴んだ。

 せっかく掴んでもトゲの痛みで、反射のように一瞬で手が蔓から離れる。

 でも諦めるものかと、落ちていきながらも半ばがむしゃらに、洋館の蔓に私はしがみつき続ける。


 蔓を掴み切ってこのまま落ちずに済むのは、多分むりだ。

 だけど何度も蔓を掴んで止まってまた落ちて、を繰り返せば、地面に落ちるスピードは緩和されるはずだ。

 低いところまで粘れば、落ちた時の衝撃も少しは弱まるかもしれない。


 すでに、私の両手は茨のトゲのせいでボロボロになっていた。

 手を守る為に用意したはずのグローブは、ルキちゃんのもとへ登って来る時、とっくに破れかけていた。


 それでもいい。

 落ちても倒れても痛くても苦しくても、私はまた立ち上がらなきゃ。

 そして、この洋館を蔓越しでもいいからまた登って、登って――。


 ルキちゃん、待ってて。

 魔女相手に、一人で怖い思いはさせない、


 そう誓った直後、また洋館全体が揺れた。

 リカルカに攻撃を受けたらしい。


 揺れに負けて、私の頼りない手が茨から離れる。

 身体に嫌な浮遊感が、一瞬だけ走り――私はついに、堕ちた。


 だけど、諦めない。

 私は何度だって、ルキちゃんに辿り着く。

 そばにいるって、約束したから。

 手を伸ばしてくれて、ありがとうって、ちゃんと言いたいから。嬉しかった、から。


 ルキちゃん。


 大好きな、綺麗の名前を頭の中で何度も呼びながら、私はただただ地に墜ちていった。

 諦めない、という心を絶やさないままに。




teller(語り手)留輝(るき)=フローライト




 ――手を、引き寄せられた時。

 あたしは、はじめて気付いた。

 あのちいこいオンナの手が、まめだらけで傷だらけだということに。


 なんで。

 あたしのケガの心配より、自分のこともっと考えればいいのに。


 ばか、ばか。

 ほんとにアイツ、自分のケガにはきょうみないじゃん。

 あたしのことはうざいくらい心配してきたのに。

 ばか、ばか、なんでそんなことするの。


 ……変な、オンナだった。

 たったいま一人で、おちていったオンナ。


 あのオンナが、おちた、から。

 ――あたし、またひとり、だ。


 そっと片手を自分のもう片方の手に、かさねる。

 あたしがおちないよう、オンナがとっさに引き寄せた手。

 まだあのオンナのあったかさ、残ってる気が、して――。


 かさねて、ふれて。

 せなかが、ぞわぞわっと怯えて騒いだ。


「ぃ、や……」


 いやだ。


「い、いや……でて、け……出てけ、出てけえ!! あたしの、中からッ!!」


 いや。いやだよ。

 あったかいの、出てけ。


 こんな、こんなあったかいの知ったままなの、やだよ。

 だってあのオンナ、おちてっちゃったんだよ。

 二度とさわれない、あったかいものなんかを求めたまま、恋しいまま、あたし、生きていたくないよ。


 ねえ、なんで来たの。

 あたしの泣き声なんて、ムシしてよ。

 あたしはいつも、ずっと、まわりのうるさいのにそうしてきたのに。


 さわるなって言ったら、手間のかかる道具つくって、あたしに薬、とどけちゃって。


 しゃべるなって言ったら、きゅうに、文字、かいちゃって。


 それでさいごは、あたしを助けて、おちて。


 なんで、そんなことしたの。

 こんなめんどくさいイキモノ、ほっといてよ。

 呆れてよ、見捨ててよ。

 あたしなんかキライになって、いなくなってよ。


 なんで。なんで、あったかいものも、こんな気持ちも、あたしに、なんで、なんで……。

 ……なんで、あたしと出会っちゃったの。



「ぁ、あぁ……イヤ……ぁああぁあぁ!!!!」



 ――あれ。

 なんであたし、叫んでるの。


 アタマが、ぼうっとする。

 そうだ。あのオンナが、なにか言ってた。

 フェアリーファクター、だっけ。

 その、チカラ?


 でも、ヤな感じがする。

 セカイとつながりすぎて、あたしがあたしでなくなりそう。

 ココロが、暴走してるみたい。


 あたしを狙う魔女が、こわがっている気がする。

 いつもいっしょのロボットたちのようす、おかしい。

 なにこれ。やだ。こわい。

 なにも思い通りにならない、とまらない、こわい。わかんない。やだ。


 揺れが激しくなって、茨がどんどん増えて、森が広がって、空が、真っ赤になって。


 なにか、だめなことが起きてる。

 あたしの、せい?



 もういない、あのオンナを思い出す。


 ちがう。あたし、やさしくない。

 そんなんじゃない。

 つよくなんて、ないよ。


「……たすけ、て…………」


 くらくらぐらぐらの世界で、小さく呟く。


 ほら、あたし、つよくない。

 つよくなんかないよ。


 ――だってあたしね、あんたのナマエを呼ぶ勇気も、まだないの。





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